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2007.02.23

今週も、何とか終わりました。金曜の夜は、ほっとしますねえ。今週は本業のほか、民間の方を対象にした勉強会で再チャレンジ支援を話し、地方議員の勉強会で地方行政の課題を話すという仕事もしました。人前でしゃべることは、勉強になります。質疑応答を受けると、観客の関心が分かるとともに、私と観客とのズレもよく分かります。講演録の速記を起こしてもらうと、「うーん、こんな風に理解されているのか」と、がっかりしたり反省することしきりです。
毎日追われている仕事を、この機会に整理することができます。再チャレンジ支援は、室ができてまだ4か月です。でも、いろんなことがありました。新しい仕事新しい組織なので、前例もスケジュールもありません。するべきこと、目標、スケジュールを、一から考える必要があるのです。走りながら考えているので、随時に中締めをしないと仕事の管理ができません。まあ、それが管理職の仕事なのでしょう。

行政改革だけでなく、日本の構造改革へ

先日、近年の行政構造改革の分類を載せました。何人かの人と話をしていて、次のような意見をもらいました。
「NPO法などは、社会の変化という観点から位置づけたらいいのではないですか」
「すると、男女雇用機会均等法や共同参画なども、大きな変化です」
「週休2日も、平成になってからです。事の起こりは、前川レポートだったのではないですか」
「PKO参加や有事法制なども、国際化への取り組みです」
そうですね。行政改革にとどまらず、日本の構造改革まで視野を広げると、これらの改革も含めて整理する必要があります。大学院の授業では、読売新聞政治部著「法律はこうして生まれた-ドキュメント立法国家」(中公新書ラクレ、2003年)を使ったことがあります。これらも、整理したいと思っています。もう少し時間をください。

新しい仕事35

今日は衆議院内閣委員会で、大臣所信に対する質疑が行われました。私たちの再チャレンジも、結構質問がありました。内閣委員会には、再チャレンジ担当大臣の他、官房長官、国家公安委員長、経済財政担当大臣、沖縄北方担当大臣、分権改革推進担当大臣、規制改革担当大臣と多くの方が出席します。
担当室では、職員が手分けして、ブロック会議に行っています。そこでは、当方から施策の説明をする他、各自治体やNPOから取り組み事例を発表してもらっています。それぞれ、熱心に取り組んでおられます。教えていただいた事例は何らかの形でまとめて、広く他の方々にも紹介したいと考えています。

国際化

23日の読売新聞夕刊は、「ルポ、過密刑務所」で、受刑者にいろんな国の人が増えている実情を、報告していました。府中刑務所では、3,200人を収容していますが、内550人が外国人です。驚くのは、その多様性です。46か国、35言語の人を収容しています。セネガルのウォロフ語、ウガンダのルガンダ語は、私も初めて聞きました。通訳の確保が大変です。また食事や文化への配慮も必要です。豚肉を食べない、断食月があるイスラム教徒や、菜食主義者などです。国際化は、いろんなところに表れています。(1月24日)
25日の朝日新聞は、愛国心に関する世論調査を載せていました。日本に生まれてよかったが94%、すべての年代で9割を超えています。よくなかったは、わずか3%です。愛国心があるは78%、ないは20%です。外国の軍隊が攻めてきたら、戦うが33%、逃げるが32%、降参するが22%でした。(1月27日)
12日の日経新聞「インタビュー領空侵犯」に、森雅彦森精機製作所社長が「景観規制、経済にプラス」を書いておられました。
「奈良公園、橿原神宮、明日香村などを結ぶ幹線道路の風景は、ガソリンスタンドののぼり旗、消費者金融、パチンコ、ラブホテルなどの派手な広告が野放しでぐちゃぐちゃです」。私もかねがね思っていました。この道路は国道24号線で、子どものころ父親の自動車に乗せてもらい、良く通った道です。それは、日本各地にある、郊外の国道沿いの風景です。
違う点といえば、そこが記紀万葉のふるさとである、いろんな遺跡や景観(大和三山、三輪山、青垣山など)がある場所だということです(すみません、それぞれの地にそれぞれの歴史があるのですが、自分の生まれ育ったところに思い入れがあるので)。私の子どものころに比べ、近年はそのけばけばしさが激しくなっています。日本の経済成長と景観の美しさは、反比例したようです。衣食足って礼節知る、ではなかったです。
次のようにも、言っておられます。「たとえば米国人が、工作機械の買い付けで1千万円の予算でドイツを訪れたとしましょう。フランクフルト空港からシュツットガルトへ、2時間くらい車で移動する。回りの風景がとても美しく、心もなごみます。価格交渉で『上乗せしてもやむを得ないか』という気持ちにもなります。日本ではどうでしょう。『何だこの道路の風景は。本社の前にラブホテルまである。こんな企業からなら800万円くらいで買えるかもしれない』と考えても不思議ではありません」。そうですね。このような経済効果だけでなく、日本人というものを尊敬してもらえないですよね。(2月12日)
9日の朝日新聞三者三論は、移民国家ニッポン?でした。宮島喬さんの発言から。
「日本を労働鎖国と呼ぶ人がいるが、この認識は正しくない。不法滞在を除いても、すでに60万人ほどの外国人が働いており、数の上では開国状態と言える。問題はその実態である。日本政府は治安や文化的摩擦などへの警戒心から、単純労働者は受け入れないことを基本姿勢にしてきた。一方、製造業などの人手不足を補うために90年代、南米出身の日系人を就労制限なしで受け入れたり、技能実習と呼ぶ制度を設けたりして、単純労働に就くことを実質的に認める迂回ルートを作ってきた。・・・迂回ルートで来日した日系人は、子どもを産み育て、滞在が長期化する傾向にある。こうした現実を知りながら日本政府は、定住を認めるような移民国になることへの国民的合意がないことを理由に、社会的に受け入れる制度作りに背を向けてきた。その影響は深刻になっている。もっとも問題なのは教育だ」
「日本でもまもなく、日系人の子どもたちが大人になる時期を迎える。彼らを孤立させないための社会の変化は不可欠である。その一つとして、日本人の多様化は避けて通れない。米国ではイタリア系米国人、中国系米国人といった呼称が当たり前になっているが、日本にはこれに対応する言い方はない」
この問題は、各省の谷間に落ちてしまっています。私は、早く、定住外国人担当官庁をつくる必要があると考えています。(2月14日)
16日の朝日新聞三者三論は、「膨らむ生活保護」でした。
湯浅誠さんの発言から。
15~64歳の稼働年齢層といわれる人の申請が、すんなり通ることはまずない。財政上の制約に加え、社会保障の現場にまで自己責任論が入り込んでいるからだ。こうした運用が許されてきたのは、国に代わり、最低限の生活を保障する存在(家族、地域、企業)があったからだ。これらの機能が小さくなり、期待できるのは公的扶助だけなのに、国は制度を充実するどころか、生活保護費の引き下げを目指している。アメリカでは最低生活に必要な所得を公的な「貧困線」と定めて周知し、自分が貧困かどうかが分かる。イギリスやドイツは、生活困窮世帯が何世帯あり、うち何世帯が生活保護を受けているかという「補足率」を公表している。日本ではこれらをしていない。知らせると対策を迫られるので、貧困を意図的に隠しているとしか思えない。
野田誠大阪市担当部長は、現場の実情を踏まえ、市長会の提案している生活保護制度改革のポイントを紹介しています。
受給世帯の半分を占める高齢世帯は、経済的自立が無理なので、別制度に移行させる。生活保護水準が、非正規雇用者の収入や最低賃金に比べ高いので、自立しようとしない、自立が難しい。これらの釣り合いを取るべき。ニートやワーキングプアは元気なうちは良いが、将来の生活保護予備軍である。保護になる前に、脱出させる仕組みが必要。自立できる可能性のある人に先行投資をすることは、長い目で見ると費用対効果で優れ、国の活力なる。(2月17日)
17日の朝日新聞夕刊は、社会的企業を取り上げていました。福祉、教育、貧困、地域再生など、社会性の高い課題に取り組む団体です。利益を上げないと事業は継続しませんが、利益を目的にしていません。形は、株式会社やNPO法人などです。記事では、病児保育を支援するNPO法人、老人ホーム紹介をビジネスにする会社、ニートにインターネットラジオで情報を提供するNPOなどが紹介されています。(2月17日)
19日の朝日新聞「時流自流」は、本田由紀さんの「企業の家族依存を正せ」でした。
新規学卒採用の活発化が報道されているが、今後の若年雇用に楽観的な見通しを抱くことはできない。その理由は、年長フリーターの存在だけではない。第一に、今後も不安定就業や無学のまま離学する層が、一定規模で生み出されると予想されること、第二に、離学後に正社員の雇用を得ながらも、その後に非正社員や無業へと離脱する層が増加していること、第三に、非正社員の処遇に改善の兆しが薄いこと、を指摘しておられます。
そして、低収入の若年非正社員が3人に1人に達するほどの規模になっていることについて、なぜそのような事態が社会全体で成立可能なのかを問うておられます。若者に対して批判的な論者は、若者が親に依存し寄生してあくせく働かないからだと説明してきた、しかし、現実はそのような個人単位の説明を超えた規模になっている。社会的に見ると、個々の若者が親に依存しているのではなく、経済システムが家族システムの含み資産(親の収入や住居)に依存しているのだ、という説を紹介しておられます。これほどの大量の低賃金労働者が暴動にも走りもせず社会内に存在しえているのは、彼らを支える家族という社会領域の存在に企業が寄りかかることにより、彼ら生活保障に関する責任を放棄した処遇を与え続けることができているからなのだ。
この事態を一体どうするのか。「再チャレンジ」政策や「成長力底上げ戦略」は、機会の実質的な拡充を伴わないままに、問題を個人の努力というミクロ次元にすり替える結果に終わることが危惧される。マクロな次元の社会設計として、企業が労働者に対し果たすべき責任を完遂させる強力な枠組みが不可欠である。また企業と家族以外に個人にとって安全網となる制度を公的に手厚く整備する必要がある・・・詳しくは原文をお読みください。

行政の分類

Ⅱ 行政の分類(政府機能の目的別分類)
これまでの行革議論は、行政の手法についての議論、行政の役割についての議論などが、混在しているようです。すると、行革の分類のためには、行政の役割の分類までさかのぼる必要がありました。また、役割の分類、手法の分類、過程の分類も必要になりました。いろんな方が、行政の分類を試みておられます。私は、それらの分類が、今一つしっくり来ませんでした。今回、行革を分類する過程で、一つの結果にたどり着きました。それも合わせて、載せておきます。(2007年2月19日)

連載「行政構造改革」を書く過程で、政府の役割の分類を、整理し直しました。それが下の表です。
ここでは行政サービスに限らず、国会や裁判所が果たしている機能も含めて考えます。私の分類では、個人の自由を出発点とします。そして、国民が豊かな生活を送ることができるようにすることを、国家の第一の役割と考えます。国家は、国民が必要のためにつくった装置です。そのための機能を、安全の維持、活動ルールの設定、生活の保障、生活の向上と、4つに分類します。
もう一つの視点は、国家の存続です。国際社会で国家が存続していくために、諸外国から自国を守るとともに、国内の統一を維持しなければなりません。
この役割の順に、機能とそこに含まれる行政活動を見ていきます。表中、行政分野の項目に粗密があるのは、ご容赦ください。(2008年6月29日)ホームページの移行の際にうまく移植できませんでした。再度貼り付けました(20019年6月26日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考
1 政治の役割については「新地方自治入門」p295
2 橋本内閣の行政改革会議「最終報告」(1997年12月)では、国家機能論について、橋本総理による国家機能の四分類(国家の存続、国富の確保・拡大 、国民生活の保障・向上、教育や国民文化の継承・醸成)を示しています。

Ⅲ 行政による実現過程の分類
次に、行政が政策を実現する過程での、手法や過程を分類しておきます。
1 手法の分類
(1)ルールの設定
(2)誘導
(3)助成
(4)提供
(5)規制
参考 「新地方自治入門」p237。その記述に、ルールの設定を加えました。

2 過程の分類
(1)企画
(2)実施
(3)評価
参考 行政改革会議「最終報告」では、新たな中央省庁の在り方の基本的な考え方として、「政策の企画立案機能と実施機能の分離」を挙げています。

3 サービス提供の3つの主体
行政改革の際に、民営化や民間委託などが議論になります。その前に、公共サービスは誰が提供するのかについて、昔から疑問を持ちつつ考えていました。
基本的サービスである教育でも、私学が重要な役割を担っています。保育園もです。命にかかわる医療については、健康保険は官がやっていますが(民間保険の上乗せもあります)、病院は国立・公立だけでなく、民間病院も多いです。羽田空港は国、成田空港は特殊会社、関西空港は第3セクターです。国鉄がJRになり、電電公社がNTTになると、サービスの性格が変わるのか。そんなことはありません。自動車損害賠償責任保険は、自動車を持つと入らなければなりませんが、民間損保会社の商品です。
慶応大学の授業で、地方自治体の直営、公営企業、公社、地方独立行政法人、地方自治体出資の第3セクターなどの説明をするのに際し、サービスと提供主体を表にしました。これを見ると、同じサービスやよく似たサービスを、官、民、共が提供していることがわかります。「公共サービス」という概念が、提供主体では区別できないことがわかります。
なおこの表では、民間委託は書き込んでありません。(2010年12月12日)
加筆して載せました。(2019年6月26日)