富山県魚津市の小さなレコード制作会社が、クラシック音楽の賞を取りました。会社といっても、若林さんというご夫婦が、「若林工房」という名前で、クラシックのCDを販売されているのです。音楽之友社の「2009レコード・アカデミー賞」の音楽史部門を、受賞されました。大手のレコード会社と競争してです。
本業は、電気工事会社の社長さんです。奥さんが主にやっておられると、にらんでいるのですが。私は、「趣味ですか」と笑っています(失礼)。
ご夫婦とは、私が新川文化ホールでフルートを吹いたことから、知り合いになりました。といっても、向こうは筋金入りの音楽ファン、こちらは下手の横好き。公演を終えた打ち上げの席で、佐藤しのぶさんの前でフルートを吹いたという、恥ずかしい思い出もあります。
地方の小さな会社が賞を取るって、すごいですよね。でも、良い音源があれば、東京でなくても作ることができるのですよね。そして販売も、インターネット販売でできるのですから。「地方の会社が・・」という私の発想が、東京中心思考なのですね。この記事の標題には、快挙を際だたせるために、あえて「田舎の」と書きました。
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2種類の事実報道・予告と実績と
新聞などマスコミの報道を見ていて、考えました。
記事の多くは、事実を伝えるものです。ところが、「××という改革が達成された」というのも事実の報道ですし、「○○大臣が、△△の改革を行うと発言した」というのも事実の報道です。ただし、前者は、改革が実行されたことの報道ですが、後者は、まだどのように動くか、さらに実現するかは未定です。前者は実績の報道であり、後者は予告ないし決意の報道です。
後者のような記事が大きく取り上げられると、ついついそうなるのかと思ってしまいます。しばらく時間をおいて、どのように進んでいるのか、検証した記事を書いて欲しいですね。
学生を引きつける授業
消防大学校の授業に、校歌練習があります。私も最初は、その必要性と効果を疑問に思っていました。ところが、学生たちの評価は高いのです。「発声の基本がわかった」とか「ぐいぐいと学生を引きつける教授法がすごいです」といった評価が、書かれます。今日、私も授業に参加し、なるほどと納得しました。「校歌練習」は導入部であって、発声の基本、挨拶の基本を、厳しく指導してくださいます。
社会人である以上、人前で話す、それも相手にわかりやすく話すことは必須です。さらに消防の場合は、現場での指示・指揮・報告・確認と、はっきりと手短に伝えることは基本です。もちろん、大学校に入校するのは各消防本部の幹部と幹部予定者ですから、声は大きくはっきりしています。しかし、音楽の先生の前に出ると、まだまだなのです。
全員で、あるいはグループで、さらには個別にみんなの前で、歌を歌ったり、名前を名乗ったり、挨拶をさせられます。そして、どのような点が悪いか、良いかを指摘してくださいます。学生は、声を出すことで参加し、指名されることで緊張し、しかられることで緊張感が高まり、褒められることでほっとします。人を動かす際の基本ですね。先生はもっといろいろな工夫をしておられますが、「企業秘密」でしょうから、これ以上は書きません。
人を動かす3つの方法
他人や他国を動かす、当方の都合のよい方向に動かすには、大きく分けて次の3つがあります。個人の場合は「人を動かす」であり、国家の場合は「ハード・パワーやソフト・パワー」の議論になります。
1 力ずくでやらせる。腕力や武力に訴える。
2 お金や、ほうびを上げる。
3 信じさせる。あこがれや、そうすることがルールだとか良いことだと、信じ込ませるのです。
1はコストがかかり、こちらも痛い目に遭うことがあります。また、恨みを買う場合があります。2は1に比べ粗野ではありませんが、やはりコストがかかります。そして、しばしば、金の切れ目が縁の切れ目になります。
3は言葉で動かすので、もっともコストがかかりません。相手が自発的に行動してくれるので、恨みを買うこともありません。文化的あこがれ、国際標準、恋愛、宗教・・・。
ジャパン・アズ・ナンバーツー
引用しましたが、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を書かれた、エズラ・ボーゲル教授は、次のように発言しておられます。
「僕がナンバーワンと言ったのは、経済が一番大きいという意味ではなかった。日本は義務教育の水準、会社への忠誠心、長寿であることなど多くの点で世界一で、その日本から米国は学ぶべきところがあるという意味だった・・」
日本がGDPで世界第2位は、1968年から約40年間続きました。でもその間に、日本は「ジャパン・アズ・ナンバーツー」だったでしょうか。経済力が世界第2位であることと、国際社会で「第2位」の地位を占めることとは、別物です(もし、そのような順位がつくとすればですが)。
この記事の、GDPが世界第3位になると、「No.3」であるとも読める標題の付け方は、依然として、経済力で自分の姿を測る考え方でしょう。
敗戦から立ち直った日本が、23年で、世界第2位の経済力を持ったことは、素直に喜んで良いでしょう。またそれを40年間も続けたことは、評価して良いでしょう。
しかし、国際社会で中心的な地位を占める、あるいは尊敬されるためには、軍事力や経済力が強いだけではだめです。世界の秩序(政治・経済・文化)をつくる際の影響力の大きさが、一つの基準でしょう。それには、他国からあこがれをもたれる存在であること、また国際社会での発言権と責任が必要です。日本は、世界に対し、どれだけのことを貢献し、発信したのでしょうか。
また、この記事に関連してですが、「G2」という言葉を、聞くようになりました。中国が力をつけてきたので、世界がアメリカと中国の2つの超大国を中心に動くという考え方のようです。しかし、これも、経済力が大きければ、国際社会の中心になるという発想だとすれば、短絡的ですね。