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小レポートの採点

毎晩こつこつと、学生さんのレポートを読んでいます。新聞を読んでもらうために、出した課題です。各人は2~3枚の小レポートなのですが、85人にもなると、読むのも大変です。(5月15日)
ようやく、85人分の小レポートを読み終えました。レポートの内容から始まって、文体、誤字脱字など、指導したいことがたくさんあります。岡本講師の要求水準は高いのです。学生さんたちが、社会に出た時に困らないように。私が悩んで身につけたことは、同じ苦労をさせず、教えたいのです。講評は、明日の授業で行います。(5月16日)
今日は、先週提出してもらった、小レポートの講評から始めました。
まずは、体裁の注意。新聞切り抜きを台紙に貼っていなかったり、大きな記事を織り込んだりしているのがあります。それでは、後の管理が困ります。日付と新聞社名の明記のないものも。また、右上を綴じるのは、ルール違反です。ワープロを使っているからでしょうか、改行がなく長く続けて書いてあるレポートが、いくつもありました。
内容については、みんな様々な記事を選んで、それぞれに自分の考えを書いていたので、これは期待以上でした。誤字脱字は、相変わらずですね。遮断法人(社団法人)、国交賞(国交省)、核負傷(各府省)など。提出する前に、読み返しましょう。

その5 官の独占の終わり

ガバナンスや地域の経営まで視野を広げると、政府(行政組織)は、公共サービス提供の一主体でしかありません。その他にも、公的サービスを提供している、提供できる組織や人はたくさんいます。NPO、ボランティアに限りません。生命を扱う病院や、教育を担う学校なども、私立は多いのです。官が公共サービスを独占しません。
すると、住民が公共目的を達成するために、どのような手法をとることが効果的かまで広げて議論するようになります。ある政策を実行する場合に、企業で担えるか、NPOでできるか、それとも官が担うかを、選択するのです。こうなると、「行政学」という表現は狭く、「公共工学」と言った方が適切かも知れません。
ここには、近代ドイツ国家学からアメリカ社会学への、国家観の転換があります。ドイツ国家学では、社会は弱肉強食なので、中立公正な国家が秩序をつくります。民(社会)と官(国家)は、峻別されます。一方、アメリカ社会学では、人が集まって会社を作り、人が集まって自治体を作ります。そして政府もつくります。行政機構も会社と同じく、住民の目的のためにつくったものです。官と民との間には、垣根はありません(このことは、「不思議な公務員の世界-ガラパゴスゾウガメは生き残れるか」に書きました)。

非正規雇用

14日の日経新聞経済教室は、阿部正浩教授の「非正規雇用、スキル向上へ費用議論を」でした。
非正規雇用者や無業者が増えることで、老後に生活保護を受給しなければならなくなる人が77万人にもなり、追加的予算が20兆円にもなるとの試算があるのだそうです。日本の雇用政策は、企業の雇用慣行を補完する形で作られていて、非正規雇用は学生や主婦のパートと考えていました。主たる生計者と考えていなかったのです。だから、社会保険や労働保険の適用除外になっている人も多いのです。職業訓練も受けられず、就業機会に恵まれません。この課題の先進国であるイギリスでは、より進んだ対応をしています。

その4 行政管理と行政経営、地域経営

民間でのマネージメントは、行政では行政管理になります。その改革が、行政改革です。これまでは、行政改革は組織のスリム化・効率化に主眼がおかれていました。それは重要なのですが、マネージメントや市役所の経営という観点からは、スリム化だけでは狭いのです。「効率化」の他に、「有効性の向上」が必要なのです。それは、住民が欲しているサービスを提供しているかです。市役所の生産物である行政サービスが、顧客である住民の要求に応えているかが、問題なのです。今あるサービスをよりやすいコストで行うだけでなく、どのようなサービスを提供するかを問わなければなりません。
すると、行政管理という言葉は不適切になります。これは、決められたことを間違いなく実行することです。せいぜい効率化までしか、担当しません。顧客重視、成果重視になると、行政管理にとどまらず、行政経営という視点が必要になります。
さらに、市役所の経営だけでなく、地域の経営が課題になります。住民が求めるサービスは、行政サービスだけではありません。商店・文化・交通・娯楽、その他のサービス業などなど。民間のサービスをどう確保するかも、重要な問題です。そして、それらより先に、雇用の場をどう確保するかが重要です。これらは、市役所のスリム化や市役所組織の経営を考えているだけでは、でてきません。しかし、働く場がなくなって住民がいなくなったら、自治体は成り立たないのです。

ダム建設、有識者意見と国の結論

12日の日経新聞は、「淀川4ダム整備、不透明に。有識者会議がノー」を解説していました。国土交通省が計画する淀川水系の4つのダムについて、国交省の外部有識者会議が、見直しを求める意見書を出したのです。記事にもあるように、国がつくる有識者会議は通常、国の方針を追認することが多いのですが、これは極めて珍しいケースです。
実は2003年にも、この4ダムを含む5つのダムについて、委員会は建設抑制を提言しました。しかし、国は2007年夏に、建設案をつくったのです。元委員長は、「形式的な手続を踏むために、委員会を開いただけ」と批判しています。詳しくは、原文をお読みください。