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危機の際の指導者論

19日の日経新聞経済教室は、ジョセフ・ナイ教授の「指導者のリーダーシップ発揮、状況を察する知力が重要」でした。危機への対処で指導者は鍛えられる、良くある危機とまったく新しい危機を見分けよ、何を自分が決定し、何を委ねるか分別を、と主張しておられます。
リーダーが存在を発揮できるのは、危機の時です。平常時なら、官僚組織が処理してくれます。また、改革をする時に存在を発揮できます。官僚機構は改革を嫌いますから。上に立つ者は、何を自分が判断するか、何を部下に委ねるか、その判断が最も大切だと、私は考えています。これは危機の時だけでなく、平常時においてもです。

その7 目標による管理

民間ベストプラクティスで、官庁組織でも、目標による管理を試みることになりました。先日、県庁の方とお話ししていたら、二つの県でうまくやっておられることを聞きました。
部長が各課長と、年度初めだけでなく、年に何度か、仕事の目標と達成具合を確認しているのだそうです。両部長曰く「やってみると、部下との間でいかに認識が違うか、よくわかりました。部下は何でもないことを悩み、私の意向を測りかねていたんですね」とのこと。ポイントは、定期的に部下との間で、目標と達成度を確認をしあうことのようです。
私も、県の総務部長の時、各課長に年度の主要事業計画表を作ってもらい、お互いに確認しあっていました。「明るい係長講座」中級編p12。
それを、制度化したということですね。簡単なことですが、重要なことです。あまり難しい仕組みは導入しても、定着しませんよね。簡単・イズ・ベストです。
次に課題になるのは、そこに挙げた項目が適切かどうかです。さらに、この結果を、評価に結びつけることです。それには、列記した項目に、ウエイト付けをする必要があります。
さらに進んだ方法で、かつ、うまくやっておられる県や市町村もあると思います。具体的にお教えいただければ、幸いです。

実物のガラパゴスゾウガメ

今日は、上野の科学博物館へ、「ダーウィン展」を見にいってきました。ガラパゴスゾウガメに会いにです。先日書いた文章に使わせてもらったので、お目にかかるべきだと思って。
もっともこの亀は、上野動物園から出張してきた亀さんです。大きいですね。75歳だそうです。まぶたを動かすほかは、じっとしていました。大物の風格です。向こうは、私のことを「このおっさん、何しに来たんだろう」と見てたんでしょうかね。
イグアナもいましたが、グリーンイグアナでした。ウミ(海)イグアナは写真と剥製でした。陸上での競争に敗れ、海に活路を見いだしたウミイグアナを、私は尊敬しています。人類も猿との競争に負けて、食物豊富で安全な森を追われたのでしょうね。でも、それが今日の繁栄になったのです。保守本流も環境が変わると、生きていけなくなります。その時に生き残るのは、片隅で生きていていた革新派でしょう。もっとも、隅で生きていたものがすべて、次の時代に繁栄するわけではないのですが。
たくさんのちびっ子たちと一緒に、見てきました。私も子供が小さかった頃は、科学博物館に良く行ったのですが、今日は久しぶりでした。記念に、ガラパゴスゾウガメの絵はがきを、買って帰りました。模型もあったのですが、飾るところがないし。後輩にプレゼントすると、しかられますしね。
博物館は実物の大きさが実感できますが、勉強となるとNHKの科学番組、例えば「ダーウィンが来た」には、かないませんね。

前川リポート

17日の朝日新聞・変転経済は、「前川リポート」でした。アメリカとの貿易不均衡は、「貿易摩擦」と呼ばれ、激しい対日批判がおきました。1980年代は、アメリカが経済的に自信をなくし、日本がJapan as No1と浮かれた時代でした。アメリカからの批判に答えるため、日本の経済構造をどう変えるかが議論されました。さらにこの後、日米構造改革協議が行われました。
このリポートは、その後、日本経済がバブル経済に飲み込まれ、目標を達成しなかったと評価されています。詳しくは記事を読んでもらうとして、私はこのリポートは大きな意味があったと思います。
それまで日本は、せっせと輸出してお金を稼ぐ、という発想に囚われていました。もちろんそれが成功して、世界第2位の経済大国になったのです。しかし、そこまで大きくなったときに、国際社会で一人勝ちしては、許されないでしょう。日本は、もはや発展途上国ではなく、トップを走る先進国になったのです。しかし、国民の意識は、まだ切り替わっていなかったのです。このリポートは、輸出志向から内需拡大へと、方向転換を打ち出しました。
「日本人は貧しさの中で生き方は知っているが、豊かさの中での生き方は知らないのじゃないか」。これは、大平首相の言葉です。「新地方自治入門」p181で、紹介しました。
1986年のことですから、もう22年もたつのですね。私は、鹿児島県で課長をしていました。プラザ合意(1985年)による円高不況に、苦労していました。今の大学生には、わからないことですね。

その6 企画への民の参入

行政サービスについて、官と民との垣根が低くなったことを述べました。さらに、実施部門だけでなく、企画についても垣根は低くなっています。企画部門も、官が独占しません。民間のアイデアが良ければ、それを採用すればよいのです。
これまでは、官僚が事実上、政策立案を独占していました。もちろん、審議会などで、民間の知見も吸い上げました。研究者、マスコミ、議員、圧力団体からも、アイデアは提供されました。しかしその場合でも、官僚が取捨選択しました。アイデアを法律や予算にする作業を官僚が担っているので、官僚に都合の悪いアイデアは、法律や予算にならないのです。また、各省協議があるので、一つでも反対する省があると、成案にならないのです。
これからは、官僚による政策の独占が、崩れると思います。その例が、経済財政諮問会議です。民間のアイデアが官僚の頭越しに議論され、実行に移されています。すなわち、民間議員ペーパーが、各省協議なしに提出されます。そして、総理の前で議論されます。もちろん、法案にするためには閣議決定が必要ですが、総理がいったん決めたことを、各大臣が反対することは困難です。