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再チャレンジ支援室縮小

29日の朝日新聞に、「再チャレンジ室解散へ。安倍政権の看板政策、撤収」という記事が載りました。おおむね、記事の通りです。室の廃止ではなく縮小です。各省が進めている関連施策は、各省で実行します。もともと、再チャレンジ支援策は、各省の関連施策の束ねでした。新年度は約240項目に上ります。その進捗は、再チャレンジ室で確認する予定です。私は、引き続き室長職を兼務します。

政治主導の現場・官僚の報告

御厨貴編『「政治主導」の教訓-政権交代は何をもたらしたか』(2012年、勁草書房)を贈ってもらいました。著者に、東大に教えに行っていた頃の塾頭たちが、名前を連ねています。また、中堅官僚たちも、現場での体験を踏まえて書いています。皆さん、御厨先生の門下生だとのことです。
帯には、「民主党政権の中間決算」と唱われています。
第2部では、政権交代後に、民主党が掲げた政治主導がどのように達成され、達成されていないかを、分析しています。そこでは、官僚との関係、与党との関係、官邸と各省との関係の3つの観点があります。
政権交代から2年半。まだ変化しつつあるところですが、省庁内部での経験を基に、分析しています。この間の記録にもなっています。現役官僚が、政と官の関係を論じることは、多くないと思います。政と官の関係に関心をお持ちの方は、ご一読をお勧めします。
なお、細かいことですが、p162の図とp179に、国家戦略室長は「室席」とあるのは「空席」の誤植でしょう。

若者支援のネットワーク

再チャレンジ施策として、「地域における若者支援」に力を入れています。主に、ニートの自立支援です。今後の方向のをHPに載せました。実は、関係する機関や団体は、たくさんあるのです(中間とりまとめ、資料別添3)。しかし、それらの連携が取れていないこと、困っている人(本人と家族です)がどこに行けばいいかわからないことが問題です。そこで、市町村に、その連携拠点と相談窓口になってもらえないかと、考えています(別添4)。もっとも、サポートステーションは、まだ全国に50か所しかありません。
地域の若者を育てることは、市町村の重要な仕事です。学校をつくることだけでなく、学校から漏れ落ちた若者への援助も、重要な仕事です。市町村も、相談があっても、どうして良いか困っておられると思います。この中間とりまとめを、ご一読ください。

逃げ切れなくなったシルバー世代

日経新聞「やさしい経済学ー21世紀と文明」、田中直毅さんの連載「多元化する世界と日本」。18日は、「自己統治と日本」でした。
・・以前は、将来世代への負担転嫁は可能との命題が、それなりの妥当性を持っていた。投票に熱心なシルバー世代は、年金や医療の給付水準にこだわりを示す。このシルバーポリティクスの下では結局、数が少ない若年の投票者、ないし投票資格のない次世代以降の人々の負担が高まるという現象が起きる。ところが、10年前から状況は一転した。財政の巨額赤字は、退職後も20年程度は社会保障給付に依存できると考えていたシルバー世代に、厳しい自己認識を促すだけの迫真性をもった。自らの世代内で決着をつける以外にはなくなったのだ・・
国債増発で公共事業拡大を、という内閣に対しては、市場は円売り・外貨買いで応じる以外にない、という見極めが広がったのだ・・自己統治の第一歩は、日本社会の持続性確保のため、政治のバランスシートを圧縮することだ・・この自己統治のための制度設計が本格化すれば、市場は日本買いに転じる一方、族議員型の古い政治機構や政党組織は見限られて一挙に瓦解しよう。それは、日本文明に画期をもたらすはずである・・(2008年1月19日)

大山耕輔先生の編著による『日本の民主主義 -変わる政治、変わる政治学』(慶應義塾大学出版会、2008年)が出版されました。曽根泰教先生のお弟子さんたち、先生と親交のある欧米の研究者による論文集です。詳しくは、リンク先の紹介をご覧ください。

ねじれ国会が見せる国会の機能

12日の朝日新聞opinionで、飯尾潤教授が「給油法案、再議決。国会の課題、ねじれで露呈」書いておられました。
・・参議院で否決された補給支援特措法案が衆議院で再議決されたことを、「ねじれ国会」という特殊な状況における異常事態であるかのように考える人もいるが、日本国憲法を前提にすれば十分にあり得ることだ・・
また、混乱を制度的問題のせいにばかりもできない。「ねじれ」に至る前も、国会が本来の機能、つまり与野党が国会審議の中で、よりよい法案を作り上げるという当たり前のことが、長年にわたって軽視されてきた・・
では、なぜ日本の国会に徹底審議の文化が育たなかったか。それは、与党が国会上程の前に官僚に頼って法案をほぼ完成させてしまい、後は与野党とも安易に党議拘束をかけ、修正を嫌う慣行が関係している。長年、内閣提出法案に関しては、自民党の事前審査を通じて、議会外で事実上の立法作業を完成させてしまい、完了した立法作業が議会で蒸し返されるのは好ましくないと考える本末転倒した状況があった・・