岡本全勝 のすべての投稿

東京は大雨

今日5日、東京は、夜明けと朝方は、大雨でした。高円寺では、起きたときは小降りだったのですが、出勤するころには豪雨でした。傘を差しても、ズボンがグショグショになりそうで。20分ほど自宅待機をして、小降りになったのを見て出撃。ほとんど濡れずにすみました。

責任者は何と戦うか、その5。議会と世論

民主主義国家にあっては、大きな外交交渉や戦争は、議会の賛成が必要です。
シリアでの化学兵器使用に対し、イギリスのキャメロン首相は、議会の同意を取り付けることに失敗しました。アメリカのオバマ大統領は、大統領権限で武力行使をできるのに、議会の承認を得るという手続きを取っています。これはこれで、大統領と議会との駆け引きですが。
古いところでは、第1次大戦後、ウイルソン大統領が、国際連盟創設を唱えながら議会の賛成を得られず、アメリカが参加しなかった例があります。これに懲りて、ルーズベルト大統領は、第2次大戦後、国際連合を創設するに当たり、国会の賛同を得るべく議員にさまざまな働きかけをしました。アーネスト・メイ著『歴史の教訓―アメリカ外交はどう作られたか』(原著は1973年。邦訳は岩波現代文庫、2004年)p13~をご覧ください。なおこの本は、アメリカの指導者が、外交での判断の際に、どれだけ過去(前例)を参考にしたか、また間違って参考にしたかが、書かれています。勉強になります。
対外交渉(国際政治)をしつつ、国内対策(国内政治)もしなければなりません。国際政治学では、これを「2レベルゲーム」と呼びます(ロバート・パットナム。例えば、藤原帰一著『国際政治』(2007年、放送大学教育振興会)p85)。
民主主義国家でなくても、日露戦争のポーツマス講和条約について、条件に不満を持った民衆が、暴動を起こしました(日比谷焼き打ち事件)。世論はしばしば冷静でなく、時にはマスコミがそれをあおります。
世論におもねらず、我が身の危険も顧みず、日本の国益は何かを考え決断する。小村寿太郎の苦労、サンフランシスコ講和条約に踏み切った吉田茂の決意には、悲壮なものがあります。そして、ご家族の苦労も。
TPPなど、これからさまざまな国際交渉が続くでしょう。近年の国際交渉について、わが国の「国内対策」を整理分析した書物はありませんかね。

責任者は何と戦うか、その4。身内

内なる敵の第2は、身内です。
戦争にしろ交渉にしろ、責任者は外の敵(相手)と戦っていると、皆さんはお考えでしょう。でも、責任者は、前の敵より、身内(後ろ)と戦っているのです。
最近の例で、説明しましょう。TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に、日本が参加しました。交渉相手は、諸外国です。では、責任者の「敵」は、外国でしょうか。
象徴的な図が、8月24日の朝日新聞に載っていました。TPPに関する日本の体制です。トップに対策本部長として甘利明担当大臣の写真が、載っています。図ではその下に、交渉チーム約80人・鶴岡公二首席交渉官が左に、その右に、国内チーム約30人・佐々木豊成国内調整総括官がそれぞれ写真入りで載っています。記事には、次のように解説されています。
・・交渉が進めば、政府は関税をなくす農産物の絞り込みを迫られる。反発が強い与党や業界団体への調整や根回しを進めるのが、国内チームの最大の任務だ。
これまでの通商交渉では、各省庁の官僚がそのまま交渉に臨み、各省の利害が優先されがちだった。相手国から「日本は省庁や担当者によって言うことが違う」との苦情もあった・・
そうです。国際交渉にあっては、説得すべきは国内なのです(なお、引用した記事の後段は、先日の「仕組みと戦う」の例です)。
国内での交渉でも、次のような会話が交わされます。
「いや~おっしゃるとおり。あなたの提案に、私は同意するのだけど。その内容では、省内(関係者)を説得できないのですよ・・」
これは、多くの場合、半分は事実、残り半分は相手に譲歩を迫る「手口」です。「部下が収まらない」「関係者を抑えきれない」・・。
完璧に当方の主張が通る、というような交渉はないでしょう。取るものは取り、譲らなければならないものは譲る。応援団に配慮して交渉を決裂させることは、簡単です。しかしそれでは、前に進みません。あるいは、何も得られないまま、一人取り残されます。
しばしば、代表者は、テーブルの向こう側と手を結びつつ、後ろの応援団をどう説得するか、それに悩むのです。それは、相手の責任者も同じです。それぞれが「勝った」という理屈を見つける必要があります。
この延長で言うと、「軍縮交渉ができるのは、ハト派ではなくタカ派である」という通説も、理解できます。ハト派が交渉をまとめた場合、国内世論は、「ハト派は軟弱で、国益を損なって交渉をまとめてきた」と決めつけます。タカ派がまとめてきたのなら、「強硬派の彼らがまとめたのだから、仕方ないのだろう」と納得します。
この項、まだまだ続く。

部下の指導は笑顔で

8月27日日経新聞キャリア・アップ面は、「部下の指導、笑顔と対話で」でした。
「仕事の鬼と呼ばれるほど職務に打ち込むのはいいが、自らが部下を萎縮させる怖い存在になっていませんか」という書き出しで始まり、「マネジャーなど指導的な役割になってから、そんな問題に気づいて組織全体の力を引き出すように自分を変えた人が目立つ」と、実名で実例を紹介しています。
・・営業担当だった20代には、後輩に「どうせ怒られるから、角田さんが退社するまで事務所には戻れない」と恐れられた・・
・・「営業件数は他人に絶対負けない」という自信から、部下にも自分と同じ水準を求めた。営業がうまくいかない部下をみると、「自分にできることをなぜできない」と理由を聞かず、一方的に怒鳴っていた・・

一般論や抽象的な職員研修より、数倍わかりやすい記事です。思い当たる節がある方は、ぜひお読みください。
もっとも、このような部下に厳しい職員(係長や補佐)は、自分の欠点には気づかず、「俺は部下に優しい」という人の方が多いです。我が身を省みて、反省。
そのような職員を上手に指導すること、すなわち自ら気づくように仕向けることが、その上司に求められています。これって、難しいですよ。できる部下(本人もそう思っている)を指導するのですから。
私の経験は、『明るい係長講座』をご覧ください。

情報の爆発を生かす

8月30日日経新聞経済教室は、坂田一郎・東大教授の「IT戦略を問う。高度な人材育成の強化を」でした。
ビッグデータへの期待が高まっています。しかし、期待とは異なり、情報の量と種類の増加に比べて、経済社会で活用されているのは、ごく一部にとどまっています。その背景にある、3つの壁を指摘しておられます。
1つは、技術と人材の不足です。2つめは、情報を有効に生かすビジネスモデルの企画構想力の不足。3つめは、情報の利活用を進めるための社会システムの不足です。
膨大な情報を活用できるかどうか。分析をする側に、それを使ってどのようなビジネスに生かすか、どのような社会問題を解決するかを的確に認識していないと、価値はありません。
「情報科学者の関心は技術に偏りがちであり、市場や課題を深く知る人材との間に溝がある」と、先生は指摘しています。
詳しくは、原文をお読みください。