投稿者アーカイブ:岡本全勝

中途入社社員を生かす

2026年9月24日   岡本全勝

9月8日の日経新聞夕刊「「よそ者」視点が企業変える 中途社員が改革けん引、経営側期待高く」から。
・・・転職経験者の増加に伴い、企業の中で中途入社した社員の存在感が高まっている。社外を知るからこそ見える課題や違和感を業務改善に生かす動きが広がりつつある。企業側も中途社員ならではの視点に耳を傾け、業務や組織改革につなげようと動き始めた。
「振り返りを業務フローに組み込むのは重要ですよね。前職では振り返りだけの定例会議もありました」――。他社でプロジェクトマネジャーの経験を積んできた渡部良さん(40)は、2023年5月に中途入社した人材大手、エンで毎週自主的にオンラインの輪読会を開催している。
参加しているのは同じチームメンバーの2人で、転職経験はないプロパーのプロジェクトマネジャーだ。業務に関連する書籍を基に、書かれた事例や状況を現在の仕事に当てはめながらマネジメントの方法について議論している。
渡部さんは「ストレートに『これは変だ』と言っても伝わらない」と考え、自分の経験をメンバーに伝える手段として24年から輪読会を始めた。「書籍を通じ考えを述べ合うことで、互いに新しい視点を得られる」と狙いを話す。

転職でキャリアを磨く人は増えている。マイナビの「転職動向調査2026年版」では正社員の転職率は25年で7.6%と、比較可能な16年に比べて2倍に。経験豊富な世代を即戦力として中途で迎える企業の動きも活発で、転職率は30代男性で10.7%、30代女性は6.1%だった。
「応募者の少ない公募型研修は整理した方がよさそうです」。26年3月、研修関連会社から第一ライフグループ(第一生命の親会社とのこと)に転職した多田大祐さん(35)は、人事部門で同社の社内研修に関する違和感を上司に伝えた。必要がなくなっても慣例的に続いた研修もあり、誰も手を付けられずにいた。
第一ライフグループでは近年、中途採用を強化している。新規入社者に占める中途割合は20年度は3割弱だったが、24年度には新卒入社数を上回り、25年度は69%になった。多田さんが職場で意見を言いやすい背景には、同社が積極的に中途社員の声を聞き取るように社内研修を強化してきたことがある。中途入社研修では25年度から年4回、入社3カ月程度の社員を集め、グループワーク形式で会社の改善点を聞き取る時間を設ける。これまで「社内では口頭説明が多く、資料が残っていない」「案件の数が想定より多い」など様々な角度から声が上がった・・・

『現代官僚制の解剖Ⅱ』

2026年9月23日   岡本全勝

「内閣人事局幹部の公務員論」の続きにもなります。青木先生と北村先生は、『現代官僚制の解剖Ⅱ』(2026年、有斐閣)を、この春に出版しておられます。このホームページで紹介しなければと思いつつ、先送りして半年が経ちました。すみません。

有斐閣の広報誌「書斎の窓」9月号に、渡邉有希乃・青木栄一・北村亘・柳至さんによる座談会「誰が官僚を目指すようになったのか―『現代官僚制の解剖Ⅱ』から考える」が載ったので、そちらを紹介します。インターネットで読むことができます。もちろん本を読んでいただきたいのですが、このような座談会は本のある面を鋭く切り取る場合があります。著者たちが(あとがきに書かれていない)意図や苦労を語り、評者が異なった角度からツッコミを入れるからです。この座談会がそうです。

渡邉さんの指摘で特に興味深かったのは、次のようなものです。
官僚を考える際に二つの「断絶」を考えるべき(官僚と普通の社会人との「断絶」、昭和の官僚と平成の官僚の「断絶」)、昭和のころの(エリートで社会と会社に尽くした)銀行員との比較、パブリック・サービス・モチベーション(PSM)と組織との一体化の違い、中途退職した人との比較はできないか。

『解剖Ⅰ』については、「官僚意識調査「現代官僚制の解剖」」「執筆者たちが語る『現代官僚制の解剖』」。

中部電力、原発データ不正

2026年9月23日   岡本全勝

9月14日に、中部電力が、浜岡原子力発電所について地震動のデータ不正問題の調査報告書を公表しました。各紙が詳しく伝えています。例えば15日の朝日新聞「浜岡再稼働、申請取り下げ 中部電、社長・会長辞任へ データ不正」。
・・・中部電はこの日、外部の弁護士でつくる調査委員会の調査報告書を公表。報告書によると、原発の耐震設計のもととなる最大の地震の揺れ「基準地震動」が、審査申請時の1200ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)を大幅に超えないよう、恣意的にデータを選ぶなどしていた。
不正は遅くとも2012年に始まり、地震動を算定した225件のうち少なくとも208件で不正があった。「再稼働のスケジュールに影響が出ることを避ける」狙いがあったと認定した。
また、審査への対応の遅れに対する経営陣からの叱責が現場への「圧力」になったと指摘。不適切行為を容認する「独自の正当化理論」が社内に広がっていたとし、中部電のほかの不祥事でも「同じような考え方が根底にあるように見受けられる」とも指摘した。
社内では不正を問題視する声も複数回出たが、不正を監視・牽制する仕組みが「実効的に機能しなかった」と認定した・・・

会社の調査報告書、反省と決意に次のように書かれています。
・調査委員会からの報告書では、社会や地域からの視点よりも当社内の論理を優先した「独自の正当化理論」が通底する要因として存在し、一部の社員が確信的に不適切行為をおこなったことが指摘されています。それをもたらしたのは、経営(注)が法令やルールよりも当社内の論理を優先する考え方を是正できず、コンプライアンスを最優先とする組織風土を確立できなかったことが大きな要因であり、経営の責任として、極めて重く受け止めています。
(注)経営の監督を担う取締役会および経営の執行を担う執行側経営陣
・経営が、実務者に寄り添い、不適切な情報も含め正しい情報を共有し多様な観点から議論を尽くすことができませんでした。その結果、組織が一体となって課題を解決する機能を十分に発揮できず、この組織の機能不全こそが、本事案を発生させた本質的な問題であると考えています。

遅れに対して、経営陣が現場を「叱責」したとのこと。
職場での不正には、害虫型とカビ型の2種類があります。中部電力の場合は典型的なカビ型、しかも職員の習慣で上司が知らなかったのではなく、幹部主導のよるカビ型です。部下にできもしない業績達成を強要した、東芝、ニデックを思い出します。
私のホームページでは「明るい課長講座」に分類しているのですが、「暗い職場講座」ですよね。

なぜエスカレータの片側を空けるのか

2026年9月22日   岡本全勝

なぜエスカレータの片側を空けるのか。それは日本人が、規則や合理性でなく、世間の目を気にして行動するからです。

日本人は助け合いの精神や、街をきれいに保つという公共心が強いです。国に強制されなくても、新型コロナではマスクを着用し、外出を控えました。関係資本や文化資本が強い、「この国のかたち」です。ところが、それらの行動が規則に従っているか、合理的かと言えば、そうでもないのです。

エスカレーターの片側を空けるのは、急いでいる人を通すために導入され、多くの人が守るようになりました。しかし、エスカレーターを駆け上るのは危険なことと、片側を空けるのは効率的でない(2人並んで乗ることに比べて輸送量が減る)ことから、2列で立ち止まって乗ることを鉄道会社は呼びかけています。
ところが多くの地域で、片側(東京では左側)に並び、他方(右側)を空けています(名古屋市では条例もあり、歩かないことが定着しているようです)。すいている時は片側に並ぶのはよいとして、右側が空いているのに左側に列を作って並ぶことは非合理です。そのような場合、私は右に立ちます。
ある新聞に、読者に聞いた結果が載っていました。「みんなが並んでいるのに、一人だけ違うことをするのは嫌だ」という意見がありました。そうなのです。規則に反しても、合理的でなくても、「他人と違うことはしない」「みんなと同じ行動を取る」のです。出る杭は打たれるので、なるべく目立たないことが処世術でした。

避難所運営に企業

2026年9月22日   岡本全勝

9月9日の読売新聞夕刊に「熊本地震 避難所運営 企業の知恵 資材・人材手配など 進む委託 自治体 「生活再建」に集中」が載っていました。

・・・熊本地震で開設された避難所の民間委託が進んでいる。読売新聞の取材では8日時点で、11市町にある37か所のうち9割弱に上る。民間委託は、自治体職員に罹災証明書の発行など生活再建業務に集中してもらうためで、ノウハウを持つ企業や団体が運営を担い、避難者に快適に過ごしてもらう狙いもある。

1日午前、熊本県宇城市の不知火(しらぬい)防災拠点センターで、避難所の運営業務を受託する旅行大手・阪急交通社の社員らが、運び込まれた寝具のマットレスを見て、顔をほころばせた。最大震度7を観測した同市は今月から、避難所全8か所の運営を同社に委託。同社の災害時緊急対策支援チーム「DHAT(ディーハット)」のメンバー約50人が対応する。
熊本県によると、8日時点で、宇城市では計486人が避難している。DHATは、避難者やボランティアの受け付け、マットレスのような必要な資材の発注、看護師ら医療スタッフの手配などを担う。宇城市の担当者は「避難所を任せられる。今後は被災者の生活再建に向けて力を入れたい」と強調した・・・

・・・熊本県によると、8日時点で熊本、宇土、宇城、八代、氷川といった11市町37か所の避難所などに1855人が避難している。うち御船(みふね)、益城(ましき)、芦北など8市町33か所は民間が運営している。避難所となった施設の指定管理者がそのまま、業務追加で運営するケースもあった。県の担当者は「罹災証明書の発行などに職員を充てられ、被災者の一日も早い生活再建につながることが期待できる」としている。
内閣府によると、自治体は災害が発生した際、避難所を開設して食料などを提供し、被災者の生活環境の整備に努めることが、災害対策基本法で定められている。一方、人員や経験などが不足し、避難所の運営が難しい自治体もある。近年は避難所の運営を民間に委託する事例が増えている。
20年7月の九州豪雨や、24年1月の能登半島地震でも民間委託が行われた。大規模災害に備え、災害時の連携や協力に関する協定を自治体と民間企業が結ぶ動きも広がっているという・・・