ギリシャの財政危機に端を発した、ヨーロッパの共通通貨ユーロの暴落が、ユーロ制度に対する不安をもたらしています。20日の日経新聞は、1面で「通貨混沌-ユーロ不安と世界」の連載、読書面では「ユーロ体制、危機に直面」の特集でした。他方、経済面では、太田泰彦編集委員が「災い転じてユーロ進化論」を、書いておられました。
・・単一通貨制度が近く崩壊するという予言や、地域統合を目指す壮大な実験が失敗に終わったと断じる論評もある。本当にそうだろうか。
たとえば老舗のプライベートバンク・・独メツラー銀行の共同経営者、ヴィースホイ氏は「ユーロの仕組みに対する一般の認識が深まり、制度改善の土台ができた」と語る。80歳になるコール独元首相も、珍しく口を開いた。「欧州統合は戦争か平和かの問題であり、ユーロが平和を保証している」・・
ユーロは、主権国家はそのままに、通貨発行権を上部機関に委ねるという壮大な実験です。神ならぬ人間がつくった制度、しかもいろんな妥協を重ねた「実験」です。最初から、完璧なものはできません。まさに、試行錯誤。いろんな問題を解決しながら、進んでいくのでしょう。
問題をあげつらうだけでは、あるいは問題があるからといって踏み出さないなら、進歩はありません。2008年の世界金融危機に発する世界同時不況を、大恐慌に陥ることなく、ほぼ克服しました。これは1929年の痛い経験があったからです。そして再発を防ぐため、金融監督制度は、改善が検討されています。
制度が問題なく運営されている時は、制度が非常に良くできていて、問題を発生させない場合や問題が起きても吸収できている場合のほかに、たまたま問題が顕在化しなかった場合があります。それらの場合は、制度を改善・改革しようという動きは出てきません。改善・改革は、問題が顕在化した時に進むのです。