しばらく放ってあった「日本はどこへ行くのか」の続きです。今回は、要因の3「リーダー」です。
私は、社会を発展させるのは国民の活動であって、リーダーではない、と書きました。例えば、キャッチアップ型発展を選んだ後、高度成長の成功は、リーダーの判断によるというよりは、国民の働きによるところが大きいでしょう。
しかし、いま、第3の転換点を迎え、リーダーの役割が重要になっています。なぜ、矛盾したようなことを言うのか。それは、国民が進むべき道を悩んでいる、これまでの道では解決しないからです。そこで、リーダーの出番が出てきました。
リーダーの判断には、二つの次元のものがあると思います。日々の判断と、大きな変革期のものと。いま問われているのは、後者のものであり「進むべき道を示すこと」です。
近代日本の3つの転換点とは、よく言われるように、明治維新と戦後改革と、今回です。3つの成功の後に来た、停滞と危機です。最初は、徳川幕府による平和と安定の後に来た、列強からの遅れと植民地化の危機。これを、開国と明治維新で、転換に成功しました。次は、明治国家の成功の後の来た敗戦です。これを、民主化と開発型成長に転換しました。そして、いま、高度経済成長の成功の後に来た停滞に悩み、次の転換を模索しています。
国民に対し、進むべき道を指し示すのがリーダーだとすれば、現時点でのリーダーには、次のようなことが期待されます。一つは目標を示すことです。裏から言えば、戦うべき敵を示すことです。もう一つは、その目標を達成するための道筋です。そしてそれを国民に納得させることでしょう。
国民は、エネルギーを持っています。それを引き出し、ある方向に導く。明治維新の時も、戦後改革の時も、国民は自信を失いどう進んだらよいか、大いに悩みました。議論は別れ、路線対立も激しかったです。それを統一する過程が、リーダーの力量なのでしょう。大久保利通と吉田茂を、代表にしておきます。
明治国家の成功を、司馬遼太郎さんは「坂の上の雲」という小説にしました。そこでは、雲が一つでした。そして上る坂道も。もし国民が、一人ずつ違った雲を目指して、別々の山を登ったら、国家としては、これほどまでに成功しなかったでしょう。
目標を示し、道筋を示す。そして、国民のエネルギーを導くこと。過度に自信を失っている国民に、自信を取り戻させること。これが、転換期のリーダーの仕事です。