11月24日の朝日新聞「ベア検討、4社のみ」から。全国の主要100社への調査結果です。
企業の利益が増えています。その利益を、どこに振り分けようとしているのか、の回答です。設備投資が53社、従業員への還元が52社です。今年1~3月の政府の「法人企業景気予測調査」では、内部留保が6割で、従業員への還元は回答の6番目だったそうです。企業の意識が、はっきりと変わってきています。
新聞の見出しでは、企業が消極的な態度かと思わせますが、記事の内容は逆です(見出しの付け方に、難がありますね)。
この変化は、「景気は気から」と「合成の誤謬」で、説明できます。これまでの日本では、新興国の追い上げ、海外への生産の移転、デフレの下で、企業はコストカットの1つとして、国内での職員と給与の削減を続けました。他方、景気が良くならないと見通して、設備投資に消極的でした。そして、利益が出ても、内部留保にとどめたのです。各企業としては、正しい選択です。しかし、多くの企業がこの方針を続けると、
給与削減→消費者が使うお金が減る→消費が冷える→売れないと見越して企業が設備投資を控える→景気が悪くなる→給与を削減する→(繰り返す)となります。
企業が儲からなくて、内部留保がないなら、企業は倒産し、もっと深刻な事態になります。ところが、企業の業績は上がっているのです。すると、先ほどの悪循環・負のスパイラルを、好循環・成長のスパイラルに変えれば、良いのです。
みんなで、「これから景気は良くなるぞ」と思い、給料を増やします。すると、消費が拡大し、設備投資を増やす判断ができます。それがまた、景気を良くします。儲かったお金を貯め込んでいては、会社も発展しないし、経済も大きくなりません。お金は、使ってこそ、生きるのです。
もちろん、この解説は、ごく単純化したものです。例えば、売れない商品に設備投資しても、その企業にとって良い結果にはなりません。