胃がんは臓器別で第4位に

12月11日の日経新聞夕刊連載、中川恵一・東京大学特任教授の「がん社会を診る」は「膵臓がん死亡、胃がん抜く」でした。
体の病気は、社会の変化によって変化するのですね。

・・・これまで日本のがんの代表は胃がんでした。私が生まれた1960年当時、男性のがん死亡の実に6割以上が胃がんによるものでした。しかし今、胃がんは減少の一途をたどっています。
胃がんの原因のほとんどがヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)の感染です。ピロリ菌は免疫力が完成する前の5歳くらいまでに感染し、その後生涯にわたり胃のなかに住み続けます・・・

・・・欧米では日本に先立ち冷蔵庫や上水道が普及したことで、ピロリ菌の感染率が低下、胃がんは「希少がん」になっています。かつて日本人のピロリ菌感染率は8割以上でしたが、20〜30代で1割、10代では5%程度まで下がっています。欧米には遅れましたが、わが国でも胃がんは「絶滅危惧種」になっています。
臓器別の死亡数でも、かつて首位だった胃がんは第4位にまで順位を下げています。最新の「人口動態統計」によると、2023年のがん死亡のトップは肺がん(約7万6千人)、2位は大腸がん(約5万3千人、罹患数は約14万8千人で最多)、第3位が膵臓がん(4万人強)です。
膵臓がんと胃がんの順位が入れ替わったのは印象的です。がんは時代や社会とともに姿を変える病気です・・・