11月19日の朝日新聞「膨張予算」は、「「官民折半」最初だけ ファンド肥大化、進める官」でした。政治主導と官僚の「共犯」の構図が見えます。
・・・民間主導で運営されるはずの官民ファンドの多くが、国の「丸抱え」になっていた――。その背景には、民間企業が新たな出資を引き受けないなか、いたずらにファンドの規模拡大を進める官の肥大化体質があった。
2022年10月に設立された「脱炭素化支援機構」は、企業の脱炭素ビジネスを支援するため、資本金204億円を国と82の企業が半分ずつ出し合った。だが、「官民折半」は最初だけだった。
23年度に85億円の増資をした際、国が78・5億円を引き受けたのに対し、企業からは6・5億円しか集めなかった。その結果、24年3月末には、早くも国の出資比率が62・5%に上昇した。
設立時だけ「官民」を偽装するかのようにし、直後に国の出資比率を急上昇させる構図は、相次いでいる。
農林水産省が所管する「農林漁業成長産業化支援機構」は、官民の折半出資で13年1月に設立されたが、3月末には国の比率が94・3%になった。関係者によると、「設立時に企業から出資を集めるのに苦労した」という。その経緯から、「追加出資を依頼することはとてもできなかった」と内情を明かす。
朝日新聞の調べでは、財政投融資で運営する全8ファンドの国の出資比率の平均は、昨年度末時点で8割を超す。「官民」が名ばかりになっている現状からは、企業の意向を置き去りにしたまま国策を進める、いびつな構図が浮かび上がる。
財投を所管する財務省理財局は、赤字ファンドの経営再建を求めている。一方、やり玉にあげられた担当省庁の幹部は、「もともとファンドは、財務省から持ちかけられて設置したものだ」と愚痴をこぼす。
この幹部によると、理財局に資金を要求すると、「もっと大きな金額を出せますよ」と要求を増額するよう促されたこともあったという。
財政規律を守るのが仕事の財務省が、なぜファンドの肥大化を推し進め、「国の丸抱え」を追認してきたのか。背景には、財務省を取り巻く政治と経済の環境がある。
ファンドの多くは、積極財政が持論だった安倍晋三政権下の13~15年に設立された。財務省で予算を担当する主計局は、予算の膨張で、財政が悪化することを恐れていた。
そこで目を付けたのが財投だった。各省庁や議員から求められた企業支援を、財投を原資にしたファンドで行えば、その分予算の膨張を抑えることができるからだ。理財局も、小泉純一郎政権下の財投改革や超低金利政策で、財投の存在意義が失われつつあることに危機感を抱いていた。
ある財務省幹部は、「財務省と各省庁は、規律無きファンドの拡大の共犯だ」と話す・・・