一人暮らしに住まいと人的つながりへ支援を

10月22日の朝日新聞オピニオン欄「おひとりさま化する日本」、山崎史郎・内閣官房参与の発言「住まいと人的つながりへ支援を」から。

――単独世帯が抱える問題は何だと考えますか。
「やはり安心して暮らせる住居を確保できるかどうか、が大きな問題です。高齢期のセーフティーネットでは年金が最初に浮かびますが、年金制度だけでは住まいの保障は難しい。家賃や地価は大きな地域差があるのに、基礎年金は月約6万円と全国一律です」

――住まいのない単独世帯をどう支えればいいでしょうか。
「今の仕組みでは生活保護しかありません。これは最後のセーフティーネットであり、その前の段階から住まいを保障していかなければならない。そのため、一般の民間賃貸住宅も高齢者に貸しやすいように、亡くなった後の問題なども含めて支援する社会システムが必要ということで、住宅セーフティーネット法が今年、改正されました」

――住居だけで問題が解決しますか?
「次の課題として、私はエンパワーメント・ネットワークと呼んでいるのですが、生きる力をつける地域づくりが重要だと考えています。誰でも病気やトラブルで元気を失うことがありますが、励まして力を与えてくれるパートナーや家族がいないと立ち直りにくい。病院は身体的な治療をしてくれますが、寄り添って力を与える人が必要なんです。自分自身、年を重ねて分かってきたことでもあります」

――お金や住まいだけの問題ではない、と。
「お金を給付するだけでは、実際の自立に結びつかないことが多いのです。地域コミュニティーなどとの人的なつながりを同時に考える発想が必要です。そういう考えは、これまではあまりなかった。これからは、地域住民も巻き込んだ持続可能なコミュニティーづくりが大切で、それに成功している地域は安心して暮らせるし、人が集まって新しいサービスや仕事も生まれます」