リーダーは指導者ではなく始動者

8月25日の読売新聞、朝比奈一郎・青山社中筆頭代表の「日本再生へ「始動者」育成」から。

日本の国力低下が顕著となって久しい。少子高齢化の急激な進行や経済の低迷、地方の衰退などで日本の市場は縮小し、国際経営開発研究所(スイス)が公表する世界競争力ランキングでは、1990年代初頭の首位から、2024年には過去最低の38位に低下した。
「失われた30年」の間に、日本社会の内向き志向は強まった。安定を重視する傾向が広がり、変化への対応の遅さや変革を求める機運の薄さが停滞から抜け出せない要因とも指摘されている。
リーダー人材の育成や、官公庁や自治体などへの政策提言を行うシンクタンク「青山社中」筆頭代表の朝比奈一郎氏は、再び「日本を世界で戦える国」にするために必要なのは、「始動者」の存在だと説く。

・・・日本が停滞から抜け出せない今、多くの分野でリーダーの育成が重要なことは論をまちません。ただ、現在必要なのは、「リーダー=指導者」ではありません。
このことに気づかされたのは、経済産業省の官僚時代に米ハーバード大ケネディ行政大学院に留学した時です。パブリックセクター(部門)について学ぶ大学院として人気が高く、「リーダーシップ論」と「マネジメント論」の講義が非常に盛んでした。
日米の意識差を痛感したのは、日本では、部下に慕われて仕事を円滑に進められる人を良き「リーダー=指導者」と呼ぶのに対し、米国ではむしろ、この役割は管理職が担うマネジメント業務と認識されていた点です。米国でリーダーとは、時に部下に嫌われたり、命を落としたりしても、「リスクを取って新たな取り組みを始め、自ら動いていく人」を指していました。「始動者」と訳すのが正しく、リーダーとマネジャーは異なるのです・・・