「私は大丈夫」だから、あなたもだまされる

4月22日の朝日新聞夕刊、西田公昭・立正大学教授の「「私は大丈夫」――だから、あなたもだまされる 自信捨て、違和感大事に」から。

オレオレ詐欺が登場してから20年以上になる。被害に遭う人は絶えず、警察庁によると、昨年は約4千件の被害が確認され、被害総額は130億円を超えた。記者(28)の祖母(81)も昨夏、100万円の被害に遭った。だまされてしまう人の心理を、立正大学心理学部の西田公昭教授(社会心理学)に解説してもらった。

――高齢者が被害に遭いやすいと言われます。
完全な勘違いです。家族の危機を察知し、時には銀行の制止を振り切ってまでお金を渡す。これは認知機能がしっかりしていないとできない。実際、働き盛りや若者、いろいろな世代が巻き込まれています。

――実際にオレオレ詐欺の被害に遭った人の8割近くが、「自分は被害に遭わないと思っていた」と答えたという調査結果もあります。
警戒できていないわけだから、だまされやすいのは当然ですよね。自分の弱さを知らない「脆弱性の無知」と言うんですけどね。自分が弱い、もろい、だまされやすいと分かっていないから、誰かが被害に遭ったと報道されても「ひとごと」としか思っていない。だから、無警戒なんです。

――だまされないためにはどう行動すればよいのでしょうか。
違和感を大事にできるかどうかが、一番大きなところだろうと思います。電話がかかってきた時点、話の内容、指示される行動におかしいと思えるか。
一度立ち止まって考えられるかどうかは、もともと、自分がだまされるかもしれないと思っているか、思っていないか。その差なんですね。
自分自身がだまされるかもしれないと思っている人の方が慎重に行動できるはずです。「自分は大丈夫」という自信を捨てること。私自身もだまされると思っています。
立ち止まるポイントは、お金の話が出たらすべて詐欺だと疑うことです。そのうえで、電話の相手が本人かどうか確かめる。自分の知る番号にかけて確かめれば良い。それが一番最初にできることです。