行政減量会議での議論が、進んでいます。9日の日経新聞が、要領よく整理していました。重点削減分野(業務)を選ぶ作業で、すでに決めた8分野(農林統計など)に加え、7業務(官庁営繕など)を追加し、さらに4業務(国税・特許など)を検討対象としました。
これまでの定員削減が、全省庁一律に、人を減らすことに重点が置かれていたのに対し、今回の方法は重点業務を絞って行うことが特徴です。「全省庁一律」に対し「重点分野」、「人減らし」に対し「業務減らし」です。業務を減らさない限り、人は減らすことができないのです。
官僚が行う査定(予算・業務・人員)には、限界があります。財務省主計局も総務省行政管理局も、各省の反対を押し切って厳しい削減を押しつけるだけの権限と権威は持っていません。
各省の官僚は、予算・人員・権限を増やすことが目標の一つ(評価の基準)でした。減らすなんてことは、もってのほか。「わが省のこの業務は不要だから廃止しよう」と思っていても、そんなことは言えません。各省の官房が飲めるのは、「うちだけが削減されたのではない、横並びだから」という案です。
官僚に任せず大臣が査定をしても、同様です。各省大臣は対等であり、閣議で拒否権を持っています。内閣制にあっては、総理のリーダーシップがない限り、大胆な削減は難しいのです。
また、与党の政治主導も働きにくいです。各省・各業務分野に族議員がいるので、個別分野削減には抵抗します。党内での合意形成は難しいです。
いつも言うように、官僚主導・族議員政治ができたのは、右肩上がりだったからです。一律削減・シーリング方式は、その象徴です。よって、今回は、民間有識者による会議を使っています。問題は、これが実行の段階になったときです。当然、対象となった省庁、族議員は強く抵抗するでしょう。権限はそのままで補助金だけをなくすという三位一体改革ですら、ああだったのですから。有識者会議には、削減を実行するだけの権限と権威はありません。もちろん民主主義社会で、審議会がそこまで力を持つのは問題です。ここでも、「改革派」対「官僚・族議員・業界」の戦い、総理のリーダーシップ、各閣僚のセンスが見えるでしょう。
さて、日経新聞も指摘していましたが、業務を廃止縮小しても民間委託・独立行政法人化をしては、人件費が委託費に変わるだけで効果は少ないです。完全に廃止することが無理な業務も多いでしょう。直営から切り出したときに効率になるかどうかは、競争があるかどうかによります(拙著「新地方自治入門p245)。