8月2日の日経新聞オピニオン欄、半沢二喜・論説委員の「キャリア自律というけれど」から。
・・・「今まで企業に任せてきたが何も変わらなかった。同じ会社に雇用されるのをよしとする慣習を変えるために、これからは本人が自由に学んで職を選べるよう個人を起点にした支援に変えるということだ」。政府が打ち出した三位一体の労働市場改革について、ある国会議員は解説する。
三位一体の改革とはリスキリング(学び直し)支援とジョブ型人事制度の普及、成長分野への労働移動だ。このうちリスキリング支援については、企業経由が75%だったのを個人への直接給付が過半になるよう方針転換する。在職者の受講を増やし、転職市場の活性化につなげる狙いだ。
改革の指針では、キャリアは会社に与えられるものから個人が自らの意思で築くものへ変えていく必要がある、とうたっている。大手企業が社員に促している「キャリア自律」を、政府も声高に呼びかけ始めたわけだ。
世界では働き手が自分の将来を主体的に考え行動するのが当たり前であり、日本もならうべきだ。問題は終身雇用の下で人事部主導の異動と研修に慣れてきた個人の意識が変われるかだろう。
リクルートが今年1〜2月に実施した1万人の調査によると、自分のキャリアに満足していない人が36.1%いた。一方でキャリア自律ができていると思う人は18.3%にとどまり、できていない人は41.8%に上る。課題としては「何をしたらいいか分からない」「自分の強みや市場価値が分からない」「行動に移せない」という回答がそれぞれ約3割で上位に並んだ。
「政府・企業と個人の温度差は大きい。いきなり自転車の補助輪を外してこいでいけと言われるようなものだ」。同社の藤井薫HR統括編集長は支援の必要性を指摘する・・・