『中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』の続きです。
紹介文には、「中国の歴史は、統一王朝時代と分裂時代の繰り返しである」とも書かれています。分裂した諸王国の中を勝ち抜いて、英雄が統一王朝を打ち立てます。ところが多くの王朝で、その安定は長くは続かず、また分裂が始まります。そこから次のようなことを考えました。それぞれ当たり前のことで、言い古されたことですが。
一つは、英雄が一人で安定した権力を作るわけではないことです。
大きな権力のためには、それを支える人、組織、そしてそれを養う資源が必要です。確かに英雄(王や皇帝)がいないとまとまりませんが、彼を支えるたくさんの人がいて、その人たちも権力(部下と組織と資源)を持っています。
別の見方をすると、それら有力部下たちに支えられているのが、王です。王にそれだけの能力とやる気がないと、部下が政治権力を握ります。さらに部下たちがその気になれば、王を廃止して取って代わります。
歴史書はしばしば英雄や王たちの歴史として書かれますが、実質はそのような権力関係から成り立っています。王や皇帝、将軍の系図が載っていますが、初代と中興の祖以外は、どのような功績があったか知らないことが多いです。権力が安定していたら、判断することもなかったのでしょう。
もう一つは、政権獲得、天下統一という目標があるうちは関係者は団結しますが、その目標を達成すると、分裂が始まることです。
権力を獲得する際の要素は、かつては多くの場合に武力です。ところが、政権を取ると、部下たちが武力に訴えては困るので、それを禁止し、秩序を守らせるために例えば儒教を奨励します。政権獲得期と政権維持期では、必要な力と思想が異なるのです。
しかし、政権獲得に参加した有力者や政権維持に参加している有力者は、「俺だって、王のようになれるはずだ」と考えます。隙あらば、自分の権力を大きくすることを考え実行します。ここに、分裂が始まります。