敵は後ろに

韓国のユン・ソンニョル大統領が、日刊の懸案事項だった元徴用工問題について、韓国国内に反対論も強い中、英断を持って解決策を提示しました。そして、国内の反発に対して、「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べたとのことです。3月22日付け日経新聞「「日本すでに数十回謝罪」韓国大統領 反日の政治利用けん制」。

・・・韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は21日の閣議で、元徴用工問題などの歴史問題に対する自らの立場を表明した。「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べ、反日を政治利用しないよう呼びかけた。
16日の日韓首脳会談で日本から謝罪表明がなかったと国内で反発がある点を意識し「韓国社会には排他的民族主義と反日を叫びながら政治的利益を取ろうとする勢力が厳然と存在する」と言及した。
日本の謝罪表明の具体例として、1998年の日韓共同宣言と、日韓併合から100年にあわせ日本が表明した2010年の菅直人首相(当時)の談話に触れた。16日の会談で岸田政権が1998年の宣言を継承する立場を明確にしたと説明した・・・

組織間の交渉は、しばしば相手方ではなく、味方に敵がいます。ようやく妥協できる案にたどり着いたのに、「そんな甘い案では認められない」と、自分の方の代表を揺すぶるのです。そして長期的・全体的な視野でなく、勇ましい強硬論が民衆に受けます。組織の利益を考えるでなく、時には代表者を引きずり下ろして自分が代表者に取って代わろうとしていることもあるのです。

すると、交渉相手方も、その代表の立場を考える必要があります。強硬策を主張して相手の背後の「敵」を勢いづかせて交渉を破談にするのか、できる範囲でその代表を支援するのか。
3月29日の朝日新聞夕刊に、鈴木拓也記者が「関係改善へ 韓国大統領の決断、どう応える」を書いています。
・・・「解決策」を出せば解決ではない。韓国では日本の関わり方が不十分との声が強く、世論の理解を得たい尹政権は、寄付に日本企業が加わることを期待する。
だが、日本企業が寄付をする気配はない。岸田氏が首脳会談後の記者会見で、直接的に植民地支配への「反省」や「謝罪」に言及しなかったこともあわせ、韓国では日本側の呼応が不十分と見る向きが強い・・・
・・・次は岸田氏の訪韓の番だ。日本の「VIP」はどんな決断とメッセージを携えて来るか。尹政権内で期待と不安が交錯している・・・