日経新聞夕刊連載「人間発見」、1月30日からは、認定NPO法人キッズドア理事長 渡辺由美子さんの「学ぶ機会の平等を」でした。東日本大震災では、無料で学習指導をしてくださいました。
2月1日は、2001年から1年間英国で暮らした経験です。
「お金をかけず社会で子どもを育てることの大切さを学んだ」
長男は日本では保育園の年長でしたが、英国では小学1年生。何か準備するものはあるかと問い合わせたら、何もないと言われました。筆記用具も教科書も学校側が用意してくれます。英語ができない息子のために半年間、同級生の保護者を補助員として雇ってもくれました。
学校で必要な教材や備品はバザーや寄付でそろいます。子育てにお金がかからないと感じました。そのバザーも経済的に厳しい家は出さなくても構わない。全ての家庭に等しく負担を求める日本とは異なります。
通った小学校は授業中に落ち着かないとペナルティーがたまる仕組みでした。週3回廊下に立たされると翌週は昼休みなどが没収され、先生と反省部屋にいきます。ある日、お迎えに行くと長男のクラスメートのベンが駆け寄ってきました。
彼いわく、長男は「すでに今週2回立たされていて、次に注意されたら大変だ。明日は木曜日だからあと2日頑張れと本人に言っているのだが彼は英語がわからないから伝わらない。ぜひ、お母さんから伝えてほしい」――。友達を守ろうと小さな男の子が勇気を出して伝えてくれたのです。周りに温かく見守っていただき、なんとか1年を過ごすことができました。
帰国して買ったランドセルは5万円。やれ鍵盤ハーモニカだなんだとお金がかかる。夫婦の両親から服やゲームもどんどん与えられますし、周りが通っていると聞けば水泳教室にも通わせてあげたい。「子どもがマーケットにされている」と感じました。
息子たちは都内の公立小学校に入学しました。クラスでちょっとしたいじめがあり、どうすればいいのか親しいママ友に相談すると「絶対巻き込まれないよう、子どもに伝えた」というのです。クラス全体より自分の子を大事にするのが日本のスタンダードなんだと、英国との違いに気づきました。