6月9日の朝日新聞オピニオン欄、中川郷子・臨床心理士の「外国籍の子に学びを」から。
・・・日本の公立小学校で、発達障害などと診断され特別支援学級に入る外国人の子どもが目立つ。なぜそんなに多いのか。ブラジル人が多く暮らす地域を毎年訪れ、「デカセギ」の子どもの教育問題を調べてきたブラジル在住の臨床心理士中川郷子さん(63)が、この問題のからくりと、日本の将来にもたらす影響について語った・・・
・・・調べてみると、日本人の子どものうち特別支援学級に在籍する生徒の割合は全体の2~3%なのに、外国人の子どもでは5~6%にのぼることがわかりました。
実態を調べるために、特別支援学級にいた日系人の子どもたちに、日本語とポルトガル語がわかる私が知能検査などを行いました。すると、発達障害の疑いがない子が半数ほどいたのです。
文の構造が理解できるなど、学習言語が身についていないと思考力が育たないことや、ポルトガル語で覚えたことはポルトガル語でしか答えられないなどの事例があります。
日本語の指導が必要な子と発達障害を一緒に扱い、必要なケアを受けさせていません。私がみた子どもの中には、ただ、ひたすら花に水やりをしている子もいました。これは外国人の子の『隔離』であり、人権侵害といえるケースもあります。日本語の指導教員が日本語を教え、授業がわかるよう支援すべきなのに、通常学級でほかの子の邪魔にならないように、特別支援学級に入れている面もあります・・・
・・・一般的には、移民の第2世代は親より良い仕事に就くことが多いのに、日本にデカセギに来たブラジル人の子どもは、工場労働者のままです。さらに次の世代の子どもたちは、発達に障害があるとされ、世代を経るにつれ社会階層も学歴も落ちています。このままでは、深刻な社会問題を引き起こします。社会に貢献できる人材を育てることは、高齢化で労働者が不足する日本社会にとって重要なのに、です。
両親が一日中工場で働き、ブラジル人用の認可外保育施設などに預けられている子どもが多くいます。おもちゃもなく、必要な年齢に必要な刺激を受けておらず、十分な食事もとれていないので発育が遅れています。親たちも望ましい教育を受けておらず、子どもの扱いも分かっていません・・・
・・・保育園や幼稚園、小学校などをいくつも見てきましたが、『外国人の子どもを受け入れよう』という制度もマインドもありません。教室に座っていれば自然に日本語を覚え、日本社会に溶け込めるわけではありません。第2外国語として日本語を教えられる先生を置くなど、外国人の子どもを受け入れるインフラ整備が必要なのに、外国人は義務教育の対象にさえなっていません。
将来的に生活保護を受ける外国人が増え、日本社会の負担となっていくでしょう。社会の隅に追いやられ、非行に走り、犯罪も増えるかもしれません。いちど生活保護になったら、そこから抜け出すのは容易ではありません。魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えるべきです。『外国人のためにやってあげる』と考えるのではなく、日本社会のために受け入れが必要なのです・・・