オルテガ『大衆の反逆』

NHKEテレ「100分 de 名著」2月は、オルテガ「大衆の反逆」です。

政治学や法律学では、土地や親族や組織に縛られた中世や封建時代から、近代革命によって、「自由な個人」が生まれることを学びました。これは良いことなのですが、他方でそれが孤立を生むことを、社会学は指摘します。そして、社会主義革命による共産党独裁、ヒットラーによる独裁もありました。
本を読むことで、理解はしたのですが。それを乗り越えたことによって、民主主義は次の段階に進んだと、思っていました。
東西対立の冷戦もありましたが、西欧諸国の安定と経済発展、そして日本の安定と驚異的な経済発展の光の前に、独裁国家や孤独の問題はかすんでいました。

近年になって、ヨーロッパや南米諸国、さらにはアメリカでのポピュリズムや排外主義が強くなることで、「自由主義、民主主義社会での孤独、大衆の暴走」が改めて問題になっています。
「大衆の反逆」は1930年に出版されています。大恐慌が起き、ヒットラーが政権を取る直前です。現在に、当時と似た状況を思わざるを得ません。今回、NHKがこの本を取り上げているのも、そのような理由でしょう。
また、原著を読むこと以上に、このような解説がわかりやすいです。

「民主主義が持続するためには経済成長が必要だ」という説があります。国民は夢を求め、他方で安心と安定を求め、また豊かな生活と生きがいを求めます。そのよう生活ができる社会を望み、その役割を国家に期待します。それが達成されないときに、国民は不満を持ちます。
社会において一つの安定装置は、中間団体です。親族、地縁社会、会社、様々な団体(結社)、政党など、「安心を提供してくれる団体への参加」です。大衆社会は、この中間集団がなくなったときに暴走します。

大衆社会論は、大学時代にいくつかかじりました。『孤独な群衆』『自由からの逃走』、西部邁先生の本も。久しぶりに思い出しました。
引き続き、中間集団の役割を考えています。「結社が支える市民社会」「ポピュリズムの背景、制度不信や中間団体の衰退」「NPO、公共を担う思想の広がり