小西砂千夫先生が『統治と自治の政治経済学』(2014年、関西学院大学出版会)を出版されました。
・・筆者はこれまで、地方財政や地方自治の研究を行うなかで、制度を設計し、運営する側の立場にたって目の前の事実を補足しようと心掛けてきた。毎年度、地方財政に関する予算折衝が、旧自治省と旧大蔵省との間で展開されるが、それは戦争にも例えることができる・・そこにみえてくるのは、予算折衝におけるパワーバランスである。旧大蔵省と旧自治省だけがプレーヤーではない。官邸、閣僚、与党、野党、地方6団体などの様々なプレーヤーが登場する・・
・・財政学研究は官房学を起源とする伝統的な財政学に、近代経済学のめざましい発展の要素を取り入れることによって、学問的なコンテンツを充実させてきた。それ自体は、けっして悪いことではない。しかし、財政学が対象とする政策課題がそれですべて解けるわけではない。ましてや、財政学は応用経済学の一分野などではない。公共経済学の発展は喜ぶべきことだが、それが財政学に代わって。財政問題をアプローチする学問となることはできない・・(序章)
地方財政制度や毎年度の地方財政対策は、経済的機能とともに、政策意図や政治によって決まるという要素を持っています。
私はかつて『地方交付税・仕組と機能』(1995年、大蔵省印刷局)を書いた時に、仕組みの解説とともにそれが果たしてきた機能についても解説しました。その後、さらに視野を広げて、「財政調整制度の機能と思想」を書こうと考えていました。「今後書こうと思っている論文」に「地方交付税制度がどのような思想に支えられて、50年機能したか。また変化してきたかを、大きな観点から考えてみたいと思っています」と書いたのですが。
しかし、その後、交付税の仕事から離れたことと私の関心が他に移ったので、とうとう書くことができませんでした(それどころか、『地方交付税』の改訂もしないまま、もう20年も経ちました。すみません。後輩に期待します)。私の意図とは必ずしも一致しませんが、小西先生の著作は重なるところが多いです。
制度にあっては、制度設計者の意図と、それが果たしてきた機能が重要です。『新地方自治入門』では、地方交付税制度が戦後の日本の発展(地域のナショナルミニマム整備)に大きな貢献をし、日本社会を安定させたことを書きました。
官僚が、制度や法律の解説を書くことがあります。私は、それに携わった官僚の務めだと思っています。その際に、仕組みの解説だけでなく、どのような意図で作ったか、また一定期間後には、どのような成果を上げたかどのような機能を果たしたかも、書くべきだと思っています。そうでないと、価値がないですよね。