全国知事会と市長会が、「新たなセーフティネットの提案」をとりまとめました。これは、三位一体改革の過程で、厚生労働省が生活保護の国庫負担率引き下げを提案し、それに対し地方団体が制度のあり方を議論しようと逆提案したことから始まりました。厚労省は協議を一方的に打ち切ったのですが、知事会等は学識経験者や実務者とで検討を続けてきました。これがその成果です。
私は、単に生活保護費を地方がいくら負担するかではなく、制度のあり方を、地方団体が企画・提案すべきだと主張してきました。地方団体が内政の主役になるためには、それが必要なのです。国より、実情を知っている地方団体が、実行だけでなく、制度設計にも責任を持つべきです。
今回の提案の内容は、本文を読んでいただくとして、次の3つからなっています。
1 稼働世代には、就労自立を目指し、自立ための期限付きの保護制度とする。
2 高齢者は就労自立は無理なので、救貧的な保護制度とする。
3 ボーダーライン層は、被保護世帯にならないよう就労支援をする。
うーん、これは、再チャレンジ施策にもつながりますね。副題にも「保護する制度から再チャレンジする人に手を差し伸べる制度へ」とあります。(10月27、29日)
政府は27日に、地方分権改革推進法案を閣議決定し、国会に提出しました。28日の読売新聞は、「地方分権、遠いゴール」「官僚猛反発必死、自治体にも温度差」を大きく解説していました。「問題は政治主導で改革する仕組みが明確に示されていないことだ」。
各紙の社説も、これを取り上げていました。28日の日経新聞は「分権改革は首相の指導力で」、毎日新聞は「道州制を目指した具体論を」、30日の朝日新聞は「強い政治力を」、読売新聞は「第2次改革への険しい道のり」、東京新聞は「効率より住民の視点で」です。
政府は、三位一体改革はひとまずおいて、別の分権推進の道を選んだようです。これまで、この表紙で「三位一体改革」を項目だてしてきましが、そろそろこれも店じまいですかね。(10月30日)
(税源移譲で田舎の税収が激減?)
31日の読売新聞なるほど経済では、「安倍政権、地方財政論議スタート」「新型交付税、配分に焦点。自治体側、減額を警戒」を取り上げていました。詳しくは原文を読んでいただくとして、一か所間違いを指摘しておきます。「尾身財務相は諮問会議で、三位一体改革での税源移譲の結果『人口の多い東京の税収はものすごく増えて、少ない田舎は激減した』と強調・・」とある部分です。
大臣発言の、まず後段についてですが、国から地方へ税源移譲をして、「田舎が激減する」ことはあり得ません。3兆円もの金額を、地方に渡したのですから。これは、誰が考えても分かることです。
ただし、市町村の中には、減収となった団体もあります。なぜかというと、税率を累進課税から一定税率にしたからです。すなわち、市町村にあっては、これまで3、8、10%の3段階であったものを、6%としました。多くの人は3%に属していたので、また8や10%を納める人もそれは限界税率で低い所得は3%で納めているので、それが6%になると、ほとんどの市町村は増収になります。所得の低い人ばかりの村があると、税収は倍になります(実際には1.6倍程度が最高だそうです)。しかし、金持ちが住んでいる町は、3%から6%への増収分より、8または10%から6%への減収分が大きく、合計で減収になる町もあります。例えば、東京都港区、芦屋市、鎌倉市などです。もっとも、全国で20数団体でしかありませんし、田舎には滅多にありません。
次に、大臣発言の前段です。東京都の税収はものすごく増えていません。今説明した、一定税率化が利いているのです。都の税収(都分+市区町村分)の全国シェアは、これまでの17%から11%へ減っています。それで、沖縄県との差は、3.2倍から2.7倍に縮小したのです。(2006年10月31日、11月1日))
三位一体改革も、第1期はひとまず終了したようです。このHPでの、実況中継も終わりです。
関連リンク
地方団体の主張などは三位一体改革推進ネット