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働き方改革、生産性重視に一定の成果

2026年1月7日   岡本全勝

2025年12月1日の日経新聞経済教室、小野浩・一橋大学教授の「点検・働き方改革」「生産性重視に一定の成果」から。

・・・働き方改革は、2016年に発足した政府の「働き方改革実現会議」の議論を契機に動き始めた。19年には残業時間の上限などを定めた働き方改革関連法が施行され、本格始動した。改革の成否を数値で評価するのは時期尚早かもしれないが、働き方に対する人々の意識を変えるきっかけをつくったことは確かである。
働き方は量から質へと確実にシフトしており、そのモメンタム(勢い)が醸成されてきた。ここでは働き方改革で日本人の働き方がどう変わったのか点検したい。働き方改革は長時間労働の是正、柔軟で働きやすい環境の整備、非正規雇用の処遇改善という3本柱から構成されるが、主に最初の2点について論じる・・・

・・・日本で長い間主流であった「昭和型の働き方」は労働人口が増え続け、労働力を常に確保できることを前提とし、成果が出ない場合は労働時間で賄うインプット重視の働き方であった。実際に昭和期には労働者1人あたり年間の総実労働時間が常に2千時間を上回ったが、長時間労働はあまり問題視されなかった。
また安定や組織への忠誠が重視され、個人の幸福度は軽視された。男性中心の働き方でワークライフバランスは考慮されず、長時間労働は忠誠心の証しであり、美徳とされた。
しかし平成に入り、生産年齢人口(15〜64歳)が1990年代後半にピークを迎える一方、長時間労働がもたらす生活の質や幸福度の低下、過労死、少子化への影響が問題視されるようになった。
このため政府は働き方改革関連法を通して、それまでは行政指導であった残業時間の上限を法律で明確に規定し、罰則も科すようになった。働き方改革は生産性と幸福度を重視する働き方、つまり量から質へと働き方の軌道修正を図るものだったが、その意図はどこまで実現しただろうか。

図に示すように、日本の総実労働時間は1990年代から減少の一途をたどっている。ただし背景には非正規労働者の拡大もある。労働時間が短い非正規労働者の比率が正規労働者に対して拡大すると、労働者全体の平均値をとった総実労働時間は減少する。
一方、非正規を含まない一般労働者のみの労働時間の推移を見ると(図参照)、2010年代後半までほぼ横ばいであることが分かる。働き方改革関連法が施行された時期に注目すると、18年には年間2010時間だった労働時間が翌19年には1978時間まで急減した。20年前後には新型コロナウイルス禍の影響もあったが、以降は法施行前よりも減少している。

働き方改革の2つ目の側面である「柔軟で働きやすい環境整備」の一環として有給休暇取得が後押しされ、関連法で有給休暇の年5日取得が義務化された。それまで休暇取得は労働者任せとされていたが、職場の空気を気にして取得できない人もいた。義務化後は企業(雇用)側が取得を促す仕組みが整備された。
図に示すように、長いこと横ばいだった有給休暇取得率が19年以降には急伸している。また長い間10%未満であった男性の育児休暇取得率も近年は急上昇し、24年度には40.5%を記録した。ただし国際比較で見ると、有給休暇日数・有給休暇取得率はいずれも常に下位で、いまだに取りたくても取れない人が多いことを示唆している・・・
・・・とはいえ働き方を巡るデータの大きな変化を目にすれば、働き方改革が長時間労働の是正と柔軟で働きやすい環境の整備に一定の貢献を果たしたと言えるだろう。改革は量から質へ、インプットから生産性重視へ軌道修正するきっかけを作り、よりよい働き方へのモメンタムを生み出した。また、今までは働き方の議論から抜けていた、幸福度の重要性への認識を広めたことも大きく評価できる。

今後の働き方改革では、行政(または企業)が、働く側をどこまで管理すべきかが本質的な論点になっている・・・
・・・働き方の理想の姿とは、労働者が自主的に自分のペースをコントロールして働くことだ。幸福度の高い人は生産性も高い。「フロー体験」といわれるように仕事に没頭し、時間を忘れるほど深く集中し、大きな成果を生み出す人もいる。
例えば残業時間規制やインターバル制度の導入は、労働者の立場を守る一面、もっと働きたい人の意欲をそぐようなことであってはならない。「つながらない権利」が導入されても、職種によっては不都合が発生することも考えられる。勤務時間外に対応するか否かは本人の意思で判断できることが望ましい。
働き方が管理されすぎると、個人の自由が侵害されると思う人も少なくないだろう。重要なのは自発的な働き方を促し、非自発的な働き方を減らすことだ・・・

福井ひとし氏の公文書徘徊9

2026年1月6日   岡本全勝

『アジア時報』1月号に、福井ひとし氏の連載「一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」第9回「謹賀新年ー公文書の中のお正月」が載りました。

「明治元年にお正月はあったのか?」(孝明天皇が亡くなられたことによる明治改元は9月8日です。正月はまだ慶応4年だったはず)から始まります。
新政府ができて、官庁や官吏はどのようにして新年を迎えるのか。悩ましかったようです。
その後の、年賀状の扱い、新年一般参賀などの歴史が語られています。いつものとこながら、よく調べてありますね。宮内庁の資料まで。絵はわかりやすいです。
「へえ」と思うことがたくさん載っています。ご一読をお勧めします。無料でインターネットで読めることは、うれしいですね。

誤りだった「文明の衝突」

2026年1月6日   岡本全勝

2025年12月26日の日経新聞オピニオン欄、ジャナン・ガネシュ氏の「誤りだった「文明の衝突」 紛争は仲間内から生じる」から。この後の分析は、記事をお読みください。

・・・「文明の衝突」を著した米ハーバード大の政治学者サミュエル・ハンチントン氏が、2008年に亡くなる前に「ほら、私の言う通りだった」と述べたとしても、さほど反論は受けなかっただろう。
米国は当時、すでにイラクとアフガニスタンでの作戦に何年もどっぷりはまっていた。西側諸国とイスラム世界との間で生じたこうした暴力は、かつて世界を複数の文明に分類し、それらの衝突を予見したハンチントン氏の正当性を証明したかに見えた。
我々の新たな千年紀が多くの混乱とともに幕を開けたので、彼には「先見の明がある」という言葉がついて回った。
「良いタイミングで亡くなった」などと言うのは失礼だ。だがハンチントン氏が存命だったら、世界を完全に読み違えたとして、あの米政治学者フランシス・フクヤマ氏と同様に厳しい批判を受けていただろう。

現在、重大な対立は文明と文明の間ではなく、文明内部で起きている。文明という言葉がかくも多用されつつ(米政府が先日発表した「国家安全保障戦略」も欧州の「文明消滅」について語っている)、これほど役に立たない時代も珍しい。
今の紛争が起きている場所を見てほしい。ウクライナ戦争は少なくともハンチントン氏の分類に従えば「東方正教会文明」の内部で起きている。中国本土と台湾の対立も同じ文化圏内の争いだ。ハンチントン氏はこの文化圏を中華文明と呼んだ。
世界で今、最も死者を出している紛争と思われるアフリカのスーダンの内戦も、まとまりのある宗教的、あるいは文化的な集団同士の戦いではない。それどころか同内戦の当事者を支援する外国勢力の一方にはアラブ首長国連邦(UAE)が、他方にはエジプトが含まれており、異なる文明圏というより大半が同じイスラム圏の勢力だ。
イスラエルとパレスチナとの問題は文明間の衝突に近いかにみえるが、今の世界紛争の典型例とは言えない。この局地的な紛争にかくも部外者が注目するのは、文明間の対立として理解(もしくは誤解)しやすいからで、誰もが想定できる紛争と言える。

今日の様々な対立の境界線はそれほど明確ではない。ハンチントン氏の主張で最も批判を招いているのは、イスラム教には「血なまぐさい境界線」があるというものだ。ほかの文明と接触した時、および場所から争いが始まるというのだ。
だが過去10年が示す証拠は、イスラム諸国にとっての標的はほかのイスラム諸国かに見える。イランとサウジアラビアの代理戦争、エジプトと湾岸3カ国(サウジ、UAE、バーレーン)による17〜21年のカタールとの断交、そして12月上旬にイエメンで続く内戦でUAEが支援する反政府組織が、サウジが支援する政府軍に対し大きく前進したことを考えてみてほしい。
これに11年に始まったシリア内戦と、そのきっかけとなった10年末に始まった中東の民主化運動「アラブの春」もそうで、「血なまぐさい」衝突は文明間ではなく同じ文明内で起きている・・・

積極的に休む

2026年1月6日   岡本全勝

2025年11月15日の日経新聞「カラダづくり」は「積極的に休む」でした。

・・・日本人の約8割が日常的に疲労しているとの調査結果がある。疲れを癒やし、心身の健康を保つには、積極的かつ主体的に休むことが欠かせない。活力と生産性の向上を目指し、休む技術を身につけよう。

ワークライフバランスが提唱されて久しい。ところが、多くのビジネスパーソンは今なお上手に休めていない。
パソコンやスマートフォンが普及した現代は、いつでもどこでも仕事ができるため、オンとオフの切り替えが難しい。日本リカバリー協会(神奈川県厚木市)代表理事の片野秀樹さんは「長時間労働は美徳、休むと周りに迷惑をかける、といった日本人特有の意識も休みづらさを助長している」と指摘する。
休養不足は疲労を招き、生産性を下げる。その結果、仕事が終わらず残業になり、さらなる休養不足に陥る。この悪循環は個人の問題にとどまらない。出勤した従業員が心身の不調により本来の生産性を発揮できない状態を指す「プレゼンティーイズム」による企業の経済損失は、近年大きな課題となっている。

精神科医・産業医でVISION PARTNER メンタルクリニック四谷(東京・新宿)院長の尾林誉史さんは「仕事量の多さや人間関係のストレスが、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンといった脳内神経伝達物質の分泌を低下させることがわかっている。これらの不足は脳疲労やメンタル不調を引き起こす」と警告する。
自律神経も疲労によって乱れる。交感神経が常に優位な過緊張状態になり、肩凝りや便秘、不眠といった不調が表れやすい。疲労が蓄積するとホルモンバランスが乱れ、高血圧や糖尿病のリスクが高まるとも言われる。疲労は痛みや発熱と比べ軽視されがちだが、実は病気の前段階であり放置は禁物だ。
疲労の原因となる休養不足をどう解消すべきか。多くの人は休養といえば睡眠ととらえがちだが、片野さんは「より積極的かつ主体的な攻めの休養が必要だ」と訴える。

「疲労の対義語は活力だ。休養の目的を疲労で低下した活力の回復・向上と捉えると、寝るだけの守りの休養では物足りない」。軽い運動や人との交流など、適度な負荷や刺激のあるリフレッシュ法が活力の基になると強調する。
片野さんが定義する休養モデルには休息、運動、栄養、親交、娯楽、造形・想像、転換の7タイプがある。複数を組み合わせることで、休養効果が飛躍的に高まるという・・・

市町村アカデミー機関誌2026年冬号

2026年1月5日   岡本全勝

市町村アカデミー機関誌「アカデミア」2026年冬号が発行されました。拙稿、学長連載「これからの時代に求められる自治体職員像」第3回「職場を支えているという自覚-中堅職員の役割」が載っています。前学長なのですが「学長連載」となっています。

今回は、「中堅職員の役割」についてです。
職員としての経験を積み、中堅と呼ばれる立場になりました。あなた自身は、まだ一職員の気持ちでいるかもしれませんが、同僚や後輩だけでなく、上司や他の部署からも頼られています。そして、管理職を目指す位置にいます。毎日、忙しく仕事を処理していることでしょう。しかしそれだけでは、もう一段上の能力は身につきません。立ち止まって、あなた自身を見直してみましょう。

あなたに期待されていることの一つ目は、職場の中心になることです。あなたは、職場の中心となっています。自分の仕事を手早く処理することとともに、同僚や部下たちの仕事ぶりに気を配ることも必要です。期待されていることの二つ目は、上司を支えることです。
今の職位で満足せず、さらに上を目指しましょう。今のあなたに、管理職になるには欠けている要素は何でしょうか。長所を伸ばすためにも、欠点を修正するためにも、あなたが自分自身を見直すことは重要です。一人で満足したり悩んだりせず、他人の意見を聞きましょう。

第2回「管理職の役割-はまるな四つの落とし穴
第1回「これからの自治体職員像ーあなたに求められていること