月別アーカイブ:2026年1月

『2050年のメディア』

2026年1月11日   岡本全勝

下山進著『2050年のメディア』(2023年、文春文庫)を読みました。宣伝には「読売、日経、ヤフー、波乱のメディア三国志!」とあります。
大きく、次のようなことが書かれています。
・インターネットと新聞の戦い。ヤフーに押されて、新聞の発行部数が激減します。
・迎え撃つ新聞社の戦い方は、社によって異なります。無料だったインターネットでの記事を、有料にします。

報道でもこれらのことは書かれていますが、本書ではこれまでのいきさつが、よく整理されています。お勧めです。また、10年後に、その後を書いてほしいです。
新聞を読む人が減っています。これから、新聞がどのように生き残るのか。社会に必要な「公器」ですが、営業とどのように両立させるのか。気になります。インターネットで見ることでニュースを見たと思っている人、それで十分だと考える人が多いということです。

また、この本筋とは別に、読売新聞社内の内情が語られます。巨人軍監督の反社会勢力との付き合い、「清武の乱」とか。
なかなか、内容の濃いものです。

小さな体験で充実感を高める

2026年1月11日   岡本全勝

時間がどんどん過ぎていく」、一川誠・千葉大教授の「小さな変化で特別な日に」の続きです。

・・・毎日同じような生活だとしても、小さな変化をつけることで特別な体験にできます。季節や街の変化に目を向け、写真に残して後で見返すことでもいい。経験を反芻することで、自分は特別な体験ができたという感覚が強まり、自己評価を高めやすくなります。
トラウマになるようなつらい出来事を思い出す必要はありませんが、人間は過去の失敗などネガティブな経験も認知バイアスによって美化する傾向があり、「あの経験で鍛えられた」と自分を前向きに評価する材料にすることができると言われています。

時間の使い方は生き方とイコールです。人生における充実感や幸福感を高めるには、自分にとって本当に大事なことを選び取ることが重要です。時間に余裕があって大局的判断ができる年末年始に、自分がやるべきなのか、いつやるべきなのか、タスクを整理できるとよいですね。
1日15分、30分でもよいので自分の裁量で時間の使い方を決められると、うまくいかなくても記憶に残りやすく、自分を前向きに評価できるものです。やりたいことの10割は難しくても、3割ができていれば合格。私はそう思って生きています・・・

失敗を美化して、前向きに評価できることは、うれしいですね。私が、しでかした失敗やお詫びの経験を半ば自慢話のように話しているのも、それに該当するのでしょう(ちょっと違うかな)。
「時間の使い方は生き方とイコールです」は、納得します。私たちは毎日、その選択を迫られているのですよね。しかし、それをあまり深刻に考えると、しんどくなります。

胃の内視鏡体験記

2026年1月10日   岡本全勝

先日、胃の内視鏡検査を受けました。世間では珍しくないのですが、私にとっては珍しいことなので、書いておきます。

20年以上前に、口からの胃カメラを飲んだことがあります。その時の苦しかった思いが残っているので、毎年の定期検診でも、胃の内視鏡は避けて、バリウム検査にとどめていました。去年、検査機関を変えたら、「要精密検査」との脅しを受けました。かかりつけ医に相談したら、「大丈夫でしょう」とのことで、やり過ごしました。ピロリ菌は、だいぶ前に除去しましたし。

年末にたくさん食べたら、胃のあたりに違和感を感じました。それで意を決して、胃の内視鏡検査を受けてみることにしました。何もなければ安心できます。将来、「あのときに受けていたら、初期で見つかっていたのに」と後悔しなくてすみます。
その先生は、内視鏡の専門家でもあるのです。「鼻から通すと、苦しくないですよ」とおっしゃいます。知人たちも、「バリウム検査ではよくわからないから、内視鏡を飲んでいる。苦しくない」と言っていました。

で、受けてみました。最初に(内視鏡を入れる前に道をつけるために)管を通すときと、内視鏡が喉を通るときに、少し痛みと吐き気に近いものを感じました。でも、それだけでした。
診療台で横になり内視鏡を鼻から入れたまま、画像を見ながら、先生の説明を受けました。便利なものですね。自分の胃の中がどうなっているのか、実況中継で見えるのです。カメラをぐるぐると回して、胃の中をいろんな角度から見せてくださいます。素人ですが、きれいなものでした。十二指腸も、食道も、喉も、まったく異常なし。これで安心できます。

検査が終わってから、内視鏡を見せてもらいました。先生が操作する手元の機械はごつくて複雑でしたが、飲み込む部分は細い管でした。こんな管が柔らかく曲がりながら、喉を通っていったのですね。インターネットで見つけた「内視鏡の仕組み」、わかりやすいです。進歩しています。

時間がどんどん過ぎていく

2026年1月10日   岡本全勝

2025年12月27日の朝日新聞オピニオン欄「時間がどんどん過ぎていく」一川誠・千葉大教授の「小さな変化で特別な日に」から。

・・・友人との楽しい時間はあっという間なのに、退屈な会議はなかなか終わらないと思ったことはありませんか。同じ1時間でも、短く感じたり、長く感じたりすることがあります。これまでの研究で、感じる時間の長さに影響を与える要因は複数分かっています。
例えば、その一つが「身体の代謝」です。代謝が激しいと時間がゆっくり進むように感じ、反対に代謝が落ちると時間が速く進むような感覚になります。
また、同じ時間の長さでも、体験するイベントの数や、時間経過に注意を向ける頻度、感情の状態などによっても時間の感じ方は変わってきます。

技術革新によって現代人の生活はより便利で、効率的になりました。やろうと思えばできることは増え、1日24時間、1年365日という枠組みは同じなのに、タイパを高めて予定を詰め込んでいる人もいるでしょう。
しかし、予定を詰め込み過ぎると、満足感はむしろ下がってしまいます。満足感は記憶されているエピソードの数と正比例するとされ、タスクをこなすだけでは、エピソードが記憶に残らず、特別なことをした感覚も残らないからです・・・

忙しすぎると、満足感が下がることは、納得します。豊かで便利になって、選択肢が増え、より忙しくなったと感じることも、同感です。
私が思うに、時間が早く経つのは、次の2つの要素が大きいと思います。
・多くの情報が入ってくるから、処理しきれない。
・そして、身の回りのことを、自分が制御できない。
この項続く

福祉サービスの地理学2

2026年1月9日   岡本全勝

福祉サービスの地理学」の続きです。久木元美琴執筆「福祉サービスの地理学の視点からみる行政領域」月刊「地方自治」2025年12月号には、次のような説明もあります。9ページ。一部省略してあります。そのほかにも、勉強になることが書かれています。詳しくは、原文をお読みください。

・・・福祉の地理学は、福祉国家の成立と変動に影響されながら発展した。19世紀末から第二次世界大戦後の経済成長期における先進資本主義国家で社会保障を中心とした福祉国家の広がりと、1970年代の石油危機以降の経済成長の鈍化と脱工業化・グローバル化の進展による既成福祉国家は転換のなかで、市場メカニズム・競争原理の導入、民間活用などが進められるようになった。こうした流れの典型的な事例として、1980年代のイギリスのサッチャー政権下における規制緩和や国営企業の民営化といった新保守主義的な経済政策の進展がある。しかし、こうした政策は、格差の拡大や教育・福祉の後退、失業率上昇などの社会的な摩擦・混乱を招き、1990年代後半には、ボランタリー部門を活用し、効率性と公平性の両立を目指す「第三の道」が登場した。

こうしたなか、福祉の地理学は、福祉国家の変容と再編の下で生じる地域における福祉供給へのインパクトや需給の地域間格差といった問題に注目する。福祉国家が前提とする「大きな政府」が相対的にその役割を小さくするならば、地方政府の財政的な基盤やそれぞれの地域で活用できる主体や資源が地域の福祉供給のあり方に影響を及ぼす。サッチャリズムに代表される新自由主義によって生じた「福祉切り捨て」(福祉支出の削減)と、それにともなう施設の地域的偏在や地域間格差の実態が、英語圏の地理学で指摘された・・・

続いて、次のような記述があります。
・・・日本は1970年代以降の脱工業化の時期に「福祉元年」を宣言したが、低成長への転換のなかで、大企業の福利厚生と家族賃金、地方の公共事業と保護・規制政策、家族主義が三位一体となった「疑似福祉システム」を福祉国家に代替させ、社会保障制度は「家族」「会社」「地域社会」によって制度化されてきた。こうした家族中心的福祉レジームに前提されたのは、女性の家庭内・地域内における無償労働であった。1980年代以降、脱工業化のさらなる進展とそれにともなう女性の就労増によって、福祉供給における家族領域は縮小した。また、国家領域においても、経済成長の鈍化による財政難と、公的福祉サービスのインフレキシビリティとパターナリズムは、福祉ニーズの多様化に対応できなくなっていた。こうした趨勢のもとで、日本でも1990年代から福祉サービスを対象とした地理学的研究が蓄積されるようになった・・・