月別アーカイブ:2026年1月

退職後、組織外に居場所の準備を

2026年1月19日   岡本全勝

2025年11月18日の朝日新聞オピニオン欄「それぞれの卒業」から。

「組織外に居場所の準備を」 太田肇さん(同志社大学名誉教授)
・・・会社などを定年退職することを「卒業」と言うことがあります。学校の場合、卒業要件を満たして出ていくといった意味だと思いますが、職場についても、その組織から与えられた役目を終えて、送り出してもらうといったイメージが重なるのかもしれません。
職場は、一種の共同体のようなものです。組織にどっぷりつかり、会社と一体化しているような人は、共同体の外部と接する機会が少なくなりがちです。すると、地域コミュニティーとの接点も少なくなり、卒業後に居場所がなくなってしまいがちです。

組織の中にいれば、仕事や役割は基本的に与えられるし、地位の高い人ほど周りがコミュニケーションの「場」を作ってくれます。ですが、一歩外に出たら、その肩書や地位は通用しなくなります。卒業後は、受け身の姿勢では何も始まりません。家庭や地域コミュニティーで「私は部長だった」などと言っても、嫌がられてしまうでしょう。
ソフトランディングが必要です。定年は来るものだし、それが何年後かも、だいたい分かっています。卒業後を見据え、在職中から職場以外の居場所を作っておくことが大事です・・・

・・・組織に属していると、「会社に迷惑をかけられない」と考えるなど、色々と制約が多いのも事実です。卒業後は、そこから解き放たれ、自分の意思や能力で自由に何でもしやすくなる面もあります。私自身も今年春に大学教授を卒業しましたが、考えたり書いたりするためのまとまった時間が取りやすくなり、よりスケールの大きい、大胆なことも言いやすくなったような気がします。
組織を卒業した後は、それまでの経験を生かし、自分個人の力を存分に発揮できる「第二の人生」が待っている。そして、その準備は卒業前からできる。そう考えてみてはいかがでしょうか・・・

外国人との秩序ある共生社会の実現

2026年1月18日   岡本全勝

1月14日に外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議が、意見書を提出しました。詳しくは本文を読んでいただくとして、冒頭の「在り方」を引用します。

・・・我が国に在留する外国人数は、令和7年6月末時点で 395 万 6,619 人と過去最高を更新し、約 20 年前の平成 16 年と比較すると約2倍となり、出身国・地域も 196 か国・地域となっている。我が国に在留する外国人の増加に伴い、多数の外国人が在留することを前提としていなかった諸制度の在り方について国民の関心が高まり、また、一部の外国人によるものであるものの、我が国の社会規範を逸脱する行為について、国民が不安を感じる状況も生じているとの指摘がなされている。

しかしながら、我が国に在留する多くの外国人は、勤勉で社会規範を理解し、地域・産業を支え、日本社会に貢献してくれている存在である。また、日本社会は 20 世紀の長い期間をかけて、内外人平等を原則としてきた歴史を持つ。このような歴史にも鑑み、今後の我が国の安定と繁栄のため、社会規範を守りながら我が国で生活する外国人が正当に評価され、社会の一員として尊厳をもって生きられる社会を構築するとともに、国民・外国人双方が互いに尊重し、安全・安心に生活し、共に繁栄する社会の実現を目指すべきである。秩序は社会の土台、多様性は社会の力であり、この両者を両立させることが、真の秩序ある共生社会への道であると考えられる・・・

規則を守らない、犯罪を犯す外国人がいることに対し、排外意識が高まっているとの報道もあります。次の文章が、答えになるでしょう。
・・・目指すべき共生社会の実現に当たっては、我が国の社会規範を逸脱する行為に対しては、国籍に関わらず、公正かつ厳正に対処するとともに、在留する外国人の増加に対応できていない諸制度については適正化に向けて改善していくことが必要である・・・

結びには次のようにあります。
・・・我が国に在留する多くの外国人は勤勉で社会規範を理解し、地域・産業を支えてくれている。そうした外国人が正当に評価され、日本社会の一員として尊厳をもって生きられる社会、そして、国民・外国人双方が互いに尊重し、安全・安心に生活し、共に繁栄する社会を実現することが我々の使命である。他方で、我が国の社会規範を逸脱する行為に対しては、国籍に関わらず公正かつ厳正に対処し、また、在留する外国人の増加に対応できていない諸制度については、適正化していくことが必要である・・・

構成員に、田村 太郎・一般財団法人ダイバーシティ研究所代表理事も入っています。
ところで、外国人との共生社会の実現のための有識者会議は、法務省にホームページがあるのですが、外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議は、内閣官房副長官補本室のサイトに載っていて、どこに問い合わせたらよいのかなどがよくわかりません。

福島の放射線量、生活圏で大幅減

2026年1月18日   岡本全勝

2025年11月18日の朝日新聞に「福島の放射線量、生活圏で大幅減 原子力機構観測、9割が除染目安以下に」が載っていました。

・・・東京電力福島第一原発の事故から来年3月で15年を迎えるのを前に、原子力規制庁が福島県内の空間放射線量の観測結果を公表した。事故で拡散した放射性物質によって高まった線量は大幅に下がり、生活圏と山間部で下がり方に違いがあることも分かってきた。こうした結果を受け、日本原子力研究開発機構が帰還困難区域にある山林を詳しく観測しようと動き出している。

2011年3月の原発事故で大量の放射性物質が放出され、広い範囲に沈着して空間の放射線量が高くなった。事故から時間がたち、放射性物質の量が半分になる「半減期」が約2年と短いセシウム134などは検出されなくなってきたが、約30年のセシウム137は今も環境中に残る。
原子力機構は事故後、規制庁の委託を受けて線量を観測してきた。約5千カ所での定点観測のほか、歩きや車、広域はヘリコプターから測定。これらのデータを統合して線量のマップを作った。
それによると、空間の放射線量は年々低下。11年7月に毎時0・2マイクロシーベルト以下の地域は福島県全域の約44%だったが、24年12月には約91%に広がった。多くの自治体が除染の目安としている毎時0・23マイクロシーベルトを下回る地域が、県内の大部分を占めるようになった。

原子力機構によると、線量が下がった主な理由は三つ。(1)放射性物質の物理的な減衰(2)雨や風で流されることによる減衰(3)住宅地や学校などでの除染だ。優先的に除染されてきた都市部や道路沿いでは線量が下がりやすい。
一方、山間部の森林では落ち葉や土壌などに放射性物質がとどまりやすく、線量は高めだ・・・

内包と外延、企業評価

2026年1月17日   岡本全勝

内包と外延」の延長です。
新聞記事を読んでいて、「分析が足りないなあ」と思う記事があります。例えば、ある企業の業績分析です。その企業の過去と現在、そして取り組んでいる未来への予想が詳しく書かれています。これは、時系列の比較ができて、わかりやすいです。現在の売上高や利益率を示されても、それが良いのか悪いのかわかりませんから。

ところが、同業他社との比較がない場合があります。これがないと、よく頑張っているのか、頑張っているけどダメなのかがわかりません。私の言う「内包と外延」の一つの適用事例です。

もちろん、会社の発表通りを伝えるのではなく、記者による分析が重要です。

学歴が気になる

2026年1月17日   岡本全勝

2025年11月12日の朝日新聞オピニオン欄「学歴って気になる?」から。

「過去の競争結果、今が大事」 安井元康さん(経営者)
・・・学歴を比べたり、自慢したり――。社会人になっても、学歴を鼻に掛ける人はいるものです。そんな「学歴マウント」をとってくる人に、どう対処すればいいのでしょう。
なぜ学歴を持ち出すのか。私の考えでは、そういう人は仕事や私生活など、現状の自分に何かしら不満を抱えている傾向があると感じます。その裏返しで、目の前の相手よりも「自分が上」と優劣をつけることで、安心感を得ようとするのでしょう。

学歴は誰しもが持ち、偏差値などで可視化される全国共通の「レベル」。過去にさかのぼって変えることもできない。「自分には優れたところがある」と示すためのわかりやすい指標なのです。そして一部の人々にとっては、自分の尊厳を保つための最後のとりでになっている。
でも冷静に考えれば、学歴は10代の頃に特定のルールに基づいて競争した結果でしかありません。それが現在の仕事の能力や生活能力などと100%リンクするわけではない。いまの自分を構成する一つの要素にすぎません・・・

「学内の学び、後回しの社会」 濱中淳子さん(教育社会学者)
・・・戦後の日本では、「努力すれば報われる」と信じられてきました。この考え方の象徴が「学歴」だといえるでしょう。制度的には誰にでも教育機会は開かれていたため、学歴獲得は多くの人を巻き込む競争の場でなされたし、今もその状況は続いています。
教育年数が長い方が、そして威信の高い学校を出た方が、いわゆる「条件の良い職」に就ける確率が高まるため、学歴にはどうしても注目が集まります。ただ、なぜ学歴にそれほどの力があるのか不明瞭なところもあるため、こうした状況に対する批判の声も少なからずあがってきました。

とはいえ、威信が高い大学に入学することで、豊かな経験が得やすくなる側面があることもたしかです。つまり、規模が大きいという事情も加わって、サークルや課外活動が盛んであり、学外とのネットワークも築きやすく、学んで成長したいと思ったときに、行動を起こしやすい。最近では、こうした大学を中心に、起業する学生なども増えてきました。
注意が必要なのは、こうした成長物語に「大学の授業」があまり登場しないことです。もちろん、理系や医療系などは授業中心に力をつけていきます。注目したいのは人文社会系です。これらの領域に属する学生たちの学習時間の少なさは、政策課題にもなっています・・・