1月8日の日経新聞経済教室、水島治郎・千葉大学教授の「21世紀型の政党政治は「改革中道」がカギに」から。
・・・まず指摘すべきは近年、「与党の敗北」現象が各国で相次いでいることだ・・・この世界的な状況の背景にあるのが、ウクライナ戦争や異常気象などを原因としたエネルギー・食料価格上昇、さらには家賃などの上昇である。庶民の生活苦が広がるなか、インフレに無策な政権与党に批判の矛先が向かった。日本の選挙における連立与党の敗北もその延長線上にある。
しかし、それではウクライナ戦争が終結しインフレが解決すれば、各国で与党は安定的な支持を回復できるのか。そうではない。政党政治の変容の背後には、より構造的な変動がある。
20世紀の各国政治は端的に言えば「組織・団体に支えられた政治」だった。欧米では二大政党の屋台骨は教会と労働組合だった。中道右派政党は教会など宗教団体のほか、地縁団体・業界団体・農業団体を支持基盤とし、中道左派政党は主に労組に支持された。
これらの団体は政党を選挙で支援し、政治資金を投入し、組織内議員を送りこんだ。それに対し政党側は団体の要望を受け付け、政策実現に手を貸した。政党自体も党組織を強化し、社会に根を張った。政党を組織・団体が継続的に支えることで、20世紀の政党は安定的に議席を確保し、存在感を発揮できたのである。
しかし21世紀の今、こうした団体政治に昔日の面影はない。労組や農業団体、業界団体や宗教団体は軒並み弱体化し、政党の組織そのものも揺らいでいる。
日本でも組織・団体依存の強い共産党や公明党、そして自民党の不振が目立つ。全国に党組織を張り巡らせてきた共産党は党員の減少と高齢化が顕著で、衆院議席数でれいわ新選組の後塵を拝す結果となった。公明党も選挙区で落選者を複数出している。自民党も業界団体、農業団体など系列団体の動きが鈍くなり、党員数は100万人を割り込み、組織票を固めても選挙に勝つことができなくなっている。
従来の組織・団体頼みの政治が有効性を失う中、既成政治そのものを「既得権益」と同一視して批判し、「人民」の声を代弁するとして改革を主張する、ポピュリズム的手法が各国で活発化している。組織・団体離れが進み、所属団体や支持政党を持たない層が増加するなかで、ポピュリスト政治家の主張は既成政治に違和感をもつ人々の意識に訴えるものがある・・・
・・・ただ、各国政治の変化を単に左右への分極化とみるだけでは不十分だ。25年10月のオランダ総選挙で第2党の右派ポピュリスト政党に競り勝ち、初めて第1党の座を射止めた政党は、開明的な無党派市民層に支持される「改革中道」政党だった。既存の中道右派・中道左派のいずれも支持できず、急進派にも共鳴できない有権者は潜在的にはかなり多いのではないか。
この改革中道支持の動きは、近年の日本における国民民主党の人気の背景を考えるうえでも、重要な手がかりとなるだろう。
以上をまとめると、日本を含む各国の政党政治は、中道右派・中道左派の2大勢力が対峙する20世紀型の構造から、左右の急進派と改革中道が台頭し、5大勢力が対抗する21世紀型の乱戦模様へと転換しつつあるといえる・・・