月別アーカイブ:2025年9月

豊かさと自由の先にある退屈さ

2025年9月13日   岡本全勝

1980年代に日本は豊かさを達成し、安全で自由な社会を手に入れました。では、国民は満足したか。どうも、そうではなさそうです。

人類は長年、豊かで自由で安全な暮らしを求めて努力してきました。自由主義先進国は、ほぼそれらを達成したと思われます。日本は、自由と安全において、世界でも上位でしょう。その点で、過去の人たちや権威主義的な途上国に比べて、幸せになったと言えます。もちろん現在の日本は、格差や子どもの貧困など、まだまだ解決しなければならない問題があります。
ところが、豊かさと自由と安全を手に入れても、人は満足できないようです。それらを苦労して手に入れた高齢者は、過去と比べ満足することができます。他方で、若者はその状態が当然のことであり、特に幸せとは感じないのでしょう。

何不自由ない生活が実現したら、それは退屈な生活でしょう。
天国や極楽浄土は、何の悩みもない快適な世界だそうです。それについては、「苦しみがなければ、喜びもないのではないか」という指摘もあります。黒がなければ、白はないのです。
すると、完全に幸せな暮らしは、成り立たないのでしょう。苦しみがないと、幸せは理解できないのです。過去との比較や、未来への希望がないと、人は満足できないのでしょう。未来に向かって努力する、そして良くなっていると実感できることが満足を生むようです。

古代ローマ帝国が繁栄の後、衰退しました。原因はいろいろ挙げられていますが、強い軍隊と健全な政治を支えた市民層が、パンとサーカスに堕し、内部から衰退したことが大きな理由と考えられます。努力、成功、満足の次には、慢心と退屈が待っているようです。

悪口「タコ」の語源

2025年9月13日   岡本全勝

日経新聞夕刊連載「令和なコトバ」、9月1日は「「TACOる」 大統領のディールは弱腰?」でした。
そこに、タコという、人をけなす言葉の語源が書かれていました。
・・・江戸時代、将軍に謁見できない御家人の子どもを、旗本の子どもたちが「御目見(おめみえ)以下」とからかったのが始まりとの説がある。「以下(イカ)」と侮辱されて、「タコ」と言い返したことから定着したとか・・・

へえと思って、インターネットで調べたら、諸説ある中にこの説が載っています。

バミューダパンツ

2025年9月12日   岡本全勝

バミューダパンツって、ご存じですよね。
インターネットで調べると、バミューダショーツとあり、「膝丈前後(4-6分丈前後)でやや細めのズボン。バミューダ諸島で広く着用されることから、この名前が付いた」と解説があります。

高校生の時に知って、格好良いと思いました。それまで、半ズボンはありましたが、バミューダパンツは世間にはなかったです。家ではサッカーの短パンをはいていました。
格好良いとともに、涼しげ、楽なのです。それ以来、夏の間の普段着として愛用しています。
Tシャツも、高校生からです。今の若者には理解できないでしょうが、50年前にはそして明日香村にはなかったのです。それまではランニングシャツで、いかにも下着でした。それだけでは外出できませんでした。

問題は、孫と公園に行くときに、この格好では蚊の餌食になるので、長袖長ズボンに着替える必要があります。

iPS細胞が問う生命倫理

2025年9月12日   岡本全勝

8月31日の日経新聞、山中伸弥・京都大学教授の「iPS細胞の発見、恐れを抱いた」から。
・・・体のあらゆる組織や臓器に育つiPS細胞の医療応用が近づいてきた。不治の病を治す光明となるだけでなく、将来は老化の抑制や同性カップルの子どもを作ることさえ可能になるかもしれない。「生」を操る研究はどこまで許されるのか。iPS細胞を約20年前に発見し、研究を主導してきた京都大学の山中伸弥教授に聞いた・・・

・・・iPS細胞から作った精子と卵子を受精させ、生命のもとになる受精卵を作製できる。老化を抑制する研究も世界で進んでいる。生命倫理上の課題が浮上してきた。
――iPS細胞から受精卵を作れば、人工的に生命を誕生させられる。マウスではすでに実現し、いずれヒトでもできるようになる。命を操作するような行為は倫理的に許されるのか。
「本当に難しい問題だ。そもそもiPS細胞を作ろうと思ったのは、それまで研究に使っていた万能細胞の倫理的な課題を解決するためだった。万能細胞の胚性幹細胞(ES細胞)は、受精卵から作られていた。皮膚の細胞などから作れるiPS細胞ができた瞬間は、倫理的な課題を克服できたと思った。しかし、数日もたたないうちにちょっと待てよと思った」
「よく考えたら皮膚とか血液の細胞から理論的には精子も作れるし、卵子も作れる。1つの倫理的課題を解決するために一生懸命研究してきて、解決できたと思ったら、より大きな倫理的課題を作ってしまったと思って愕然とした」

――国はヒトのiPS細胞から受精卵を作ることを特定の研究に限り容認するという方針を7月に決定した。研究は進めるべきなのか。
「研究者だけで決めていい問題ではない。マウスの肝臓の細胞からiPS細胞を作り、新しいマウスを誕生させたことがある。そのマウスを見たときに、ものすごく恐れに似た感覚を持った。半年前まで肝臓の細胞だったネズミが今、目の前で走り回っている。こんなことをしていいのかと思った。研究者がそうした感覚を持ち続けるというのはとても重要なことだと思う」
「新しい科学技術に対して私は常にどこまで許されるのかを自問している。しかし、それは新しい技術を拒絶するということではない。技術によって救われる人々が多くいるからだ。たとえば、将来、iPS細胞によって本人由来の精子を作れるようになれば、その選択を望むカップルも少なくないだろう。ただし、ヒトへの応用に先立ち、動物で長期にわたり安全性を検証する必要がある。対象をどこまで広げるべきかという倫理的議論も不可欠だ。科学は常に諸刃の剣であり、人類に福音をもたらし得る一方で、惨禍を招く可能性もある」・・・

連載「公共を創る」第234回

2025年9月11日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第234回「政府の役割の再定義ー「内閣官僚」の育成を」が、発行されました。前回から、内閣官房職員育成の問題を議論しています。

国家公務員は政府に一括して採用された後に各府省に配属されるのではなく、試験の合格者名簿等から各府省で採用され、そこで昇進し、やがて退職します。それに対し内閣官房は、独自に職員を採用して育成する仕組みを採ってません。各府省から派遣されている「出向職員」で構成されています。仕事が終わると、あるいは一定期間(多くは2年程度)が過ぎると、親元(本籍の府省)に戻ります(なので、一部の職を除いて職員採用のホームページや職場紹介のパンフレットもないようです)。

企業に例えれば、各省という事業会社(子会社)の上に、内閣という持ち株会社(ホールディングカンパニー)があるような姿です。そして、各子会社で社員(職員)を採用し、持ち株会社には子会社社員(職員)がその都度出向しているようなものです。
ところが、内閣官房の仕事は、各府省で行っている仕事とは、進め方などが異なっています。各府省での仕事の多くは、法令の運用や予算の執行など決められたことを実施する事務です。ところが、内閣官房での仕事は首相などから下りてきた新しい課題であり、前例通りや単なる運営改善では済まないことが多いのです。

私は旧自治省に採用されたのですが、官僚生活の後半は、省庁改革本部、首相秘書官、復興庁と、内閣の下やその近くで仕事をすることが多かったのです。それぞれに大変な仕事でしたが、政策の新しさと大きさと、そして首相の肝煎りという難しさは、やりがいでもありました。
私は、「内閣官僚」といった集団をつくるべきだと考えてきました。といっても、内閣官房で職員採用をするのではありません。官僚には専門性が必要です。内政、外交・安全保障、社会保障、経済・産業といった各分野での専門家が要請され、「何でもできます」という人材はあり得ません。内閣官房で採用して育成する方法では、機能しないのです。他方で各府省からの2年程度の期間の出向では、親元の方ばかりを見てしまいます。
職員は各府省で採用して育成しますが、若いときから内閣官房などに出向経験をさせ、その中から適性のある者を内閣官僚として転籍させるのです。