地方公共団体での嫌がらせ、いじめ

4月に総務省が「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査結果」を公表しました。
「団体規模や地域性等を考慮し、無作為に抽出した388の都道府県及び市区町村から一般行政部門(首長部局)に属する一般職の職員20,000人(うち常勤職員14,191人、非常勤職員5,809人)を対象として実施し、11,507人から回答を得ました」とのことです。また、地方公共団体における各種ハラスメント対策に関する取組事例集もついています。いくつか抜粋します。

パワーハラスメントについて
過去3年間に、パワハラを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で15.7%(1,808人)。これを年代別で見ると、40代が19.3%と最も高く、20代以下(11.7%)と比較すると2倍弱となっている。

セクシュアルハラスメントについて
過去3年間に、セクハラを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で3.9%(447人)。これを年代別で見ると、30代(6.6%)、20代以下(6.3%)が高い傾向にあり、また、性別で見ると、女性が6.3%、男性が1.7%となっている。

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて
過去5年間に、育児休業等ハラスメントまたは不利益取扱いを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で7.8%(136人)。これを年代別で見ると、30代(10.7%)、20代以下(8.9%)が高い傾向にあり、また、性別で見ると、女性が11.1%、男性が6.0%であった。

カスタマーハラスメントについて
過去3年間に、カスタマーハラスメントを受けた経験(受けたと感じた経験)については、全体で35.0%。これを、団体区分別で見ると都道府県に比べ市区町村が、年代別で見ると30代が、任用形態別で見ると任期の定めのない常勤職員(非管理職・その他)が受けた割合がそれぞれ高い。ちなみに、厚生労働省調査(民間)では、「経験した」が全体で10.8%です。
過去3年間に、カスタマーハラスメントを受けたこと(受けたと感じた経験)がある者の割合について、部門別に見えると、広報広聴(66.3%)、各種年金保険関係61.5%)、福祉事務所(61.5%)、戸籍等窓口(59.9%)、税務(55.5%)の順に高い。

目に見えない宗教、静かに浸透

5月14日の朝日新聞夕刊「いま「宗教」は」「「目に見えない宗教」、静かに浸透 東大教授・堀江宗正さんに聞く」から。
・・・多くの人が「無宗教」を自認し、宗教を社会の周縁に置いてきた――。それが日本社会の姿だと東京大学教授の堀江宗正さん(宗教学)は指摘する。一方で、オウム真理教による一連の事件以後、既存の宗教は存在感を低下させ、代わって「目に見えない宗教」が静かに社会に浸透しているという。話を聞いた・・・

・・・そもそも「宗教」は、西洋のreligionを訳す形で明治期に使われるようになった新しい概念です。普通の日本人には馴染(なじ)みがありません。そのため、生活に密着している「神道行事/葬式仏教/民間信仰」は、教団をもった「宗教」から区別されるのが普通です。宗教学的には、神・仏・霊などを前提とするので「宗教」とされます。しかし、多くの人は、初詣や冠婚葬祭に関わっていても、自分たちは「無宗教」だと考えます。
一方、明治憲法は「安寧秩序を妨げ」ない限りで信教の自由を認めました。現行の宗教法人法は、教義・儀式・信者が明確な団体を宗教法人とします。今日では、多くの人が「宗教」と言えば教団宗教であり、安寧や秩序を妨げる危険なものだとイメージします・・・それに対して、先にあげた「非宗教」(宗教とされないけれど宗教学的には「無宗教」ではないもの)は、大事なものとして実践されています。

オウム以降は、教団宗教と無関係に、心霊、癒やし、パワースポット、占い、瞑想、魔術への関心を持つ人が増えてゆきます。宗教学者は、これらの動向をスピリチュアリティ(霊性)と総称しました。教団に着目するだけでは見落としてしまう「見えない宗教」でした。その多くは、民間信仰だけでなく神道や仏教の一部の実践とつながっています。
2000年代には、スピリチュアル・カウンセラーと称する江原啓之氏のテレビ番組が人気を博します。オーラや前世や守護霊などを信じる「スピリチュアル・ブーム」も起きました。
その背景には、孤立や個人化が進展し、「イエ」への帰属意識が希薄になるという変化があります。それは教団を嫌い、家族と距離を取ることとつながります。この時期には先祖供養を重視する教団の信者が減少します。それに対して、自分の苦しみの原因はイエの「先祖」より個人の「前世」にあるという輪廻(りんね)観がスピリチュアリティでは目立ちます・・・

・・・いつの時代にも、人は信じる拠(よ)り所を欲しがります。日本近代史は「信じたのに裏切られた」ことの連続かもしれません。信じる心と疑う心が同居するような心のあり方を、私たちは学ばなければならないのかもしれません・・・

電子決裁の限界、顔が見えない

私の勤務先である市町村職員中央研修所でも、電子決裁が進みつつあります。起案者は便利になります。ところが、決裁者には、少々困ったことが起きます。

その一つは、ちょっと聞きたいことがあっても、前に起案者がいないのです。画面を使って質問をするか、出かけていって聞くことになります。本質的な疑問なら、それをいとわないのですが、ちょっとしたことの場合は困ってしまうのです。私は、出かけていきますが、面倒な人はそのまま了解するのでしょうね。

もう一つは、職員と顔を合わす回数が減りました。大部屋なら、決裁や相談がなくても顔を合わせます。しかし個室では、案件がないと部下は来てくれません。
「いやな上司と顔を合わさなくてもすむからうれしい」という職員もいるでしょうが。上司としては、部下がどのように仕事をしているか、その状況を知りたいのです。職場は通信教育ではなく、決裁は送られてきた答案の採点ではありません。
この状況に、どのように対応するのか。考えなければなりません。

と書いたら、肝冷斎が「でも部下に決裁を投げつけようにも電子決済だ」(なので投げられない)と反応しています。そういえば、私の若い頃に、気に入らない決裁案だと決裁板を投げつける上司がいましたね。

増える男性の配偶者間暴力被害

5月15日の日経新聞夕刊に「増える男性のDV被害、相談10年で7.5倍」が載っていました。

・・・配偶者間暴力(DV)に悩む男性が増えている。パートナーからの暴言や暴力に苦しみながら、長年耐え続ける被害者も少なくない。行政や民間団体が支援しているが、女性の場合と同様に被害者サポートは必ずしも十分とは言えない。
「妻に何度もひっかかれた」。東京都内のあるビル内に設置された相談室ではDVに悩む男性からの電話が鳴る。妻は普段から物を投げつけるなどの行為が目立ち、抵抗すると逆に「DVだ」と騒がれる。男性は途方に暮れていた。
配偶者の暴力について警察が受け付けた相談件数を見ると、男性からは2023年に2万4000件超と10年で約7.5倍に増えた・・・

DV被害者の約7割は、女性です。一方、DVを原因とする自殺は、男性が8割です。相談できる相手がいないことも原因のようです。

福井ひとし氏の公文書徘徊3

『アジア時報』6月号に、福井ひとし氏の「連載 一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」の第3回「官僚たちの「メルヘン」」が載りました。ウェッブで読むことができます。
今回は、城山三郎著『官僚たちの夏』(1975年、新潮社)の主人公、風越信吾のモデルとされる、佐橋滋・通産事務次官を、残された公文書からたどってみるという企画です。私もこの小説を読んで、官僚に憧れました。

へえと思うことが、いくつも書かれています。経済産業省が、旧会計検査院の建物に間借りしていた、経産省の場所には防衛庁があった。閣議に、課長が出席したことがあるらしい。通産省の決裁文書は、はんこや署名が下から上へ職位が上がっていくのではなく、上から下へ下がっていったこと。

佐橋さんの名前を高めた、小説にも取り上げられた(と記憶しています)、特定産業振興臨時措置法(特振法)の決裁文書も残っています。ところが、閣議決定文書の法案に紙が貼られて、修正されているのです。その経緯を、この記事では推測しています。ちなみに、この法案は成立せず、風越(佐橋)さんは「破れた」のです。小説は通産官僚の活躍ぶりを書いているのですが、結論は負けでした。
興味ある方は、お読みください。「福井ひとし氏の公文書徘徊2