首相官邸の日程管理

日経新聞ウエッブ版に、清水真人・編集委員の「首相官邸は1日にして成らず 政策の前に人事と日程管理」(2024年8月8日)に、私の発言が載っていることを教えてもらいました。これは、7月30日にPHP総研フォーラム「官邸の作り方ー総裁選を前に政治主導の未来を考えるー」に出演した際の発言です。1年近く前の話です。

・・・首相官邸は1日にして成らず。新首相が官邸を円滑に立ち上げるには3カ月の準備期間が欲しい――。政策シンクタンクPHP総研のこんな提言が永田町で関心を集めている。新首相にとって新しい目玉政策の展開も大事だが、その前に政権運営を安定させる官邸中枢の人事配置、重要日程の掌握や危機管理の備えが先決だと訴える・・・

・・・元復興次官の岡本全勝「08〜09年の麻生太郎内閣では、私を含め2人で首席首相秘書官の役割を分担した。首相の一番重要なリソースは時間だ。日程管理では首相に誰を会わせるか会わせないか、いつ何分、首相の時間を取るかが最も大事な仕事だった」

7月30日、PHP総研がこの報告書をテーマに開いたウェビナー。牧原や岡本らパネリストは日程管理の重要性で一致した。意外にも聞こえるが、報告書は新首相が早く展開したいはずの新しい政策について「政策プログラムの着手は急ぐな」と戒める・・・

ヘボンとヘップバーン

日経新聞日曜連載、今野真二さんの「日本語日記」、5月4日は「2人のHepburn」でした。二人が同じ名字だとは、知りませんでした。

・・・パスポートは旅券事務所に申請して交付されます。その時に「ヘボン式ローマ字表記」を使うことになっています。この「ヘボン」は幕末に日本に来て、横浜で医療活動も行っていた、アメリカ長老派教会の医療伝道宣教師、James Curtis Hepburn(ジェームス・カーティス・ヘボン)のことです・・・
・・・Hepburnを「ヘボン」と発音した人がいたのでしょうか。ヘボン自身はこの「ヘボン」を認めていたようで、『和英語林集成』第3版の扉には「米国 平文先生著」と印刷されています。

さて、きょう、5月4日は、「ローマの休日」や「昼下がりの情事」「ティファニーで朝食を」で知られているオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)の誕生日です。
ローマ字の綴りで知られるヘボン、「ローマの休日」で知られるオードリー・ヘップバーン、「ローマ」つながりと言っていいのかいけないのか、ちょっと悩みます・・・

連載「公共を創る」第222回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第222回「政府の役割の再定義ー政治家に求められる将来像の提示」が、発行されました。

この国の将来像を考える際の基盤を説明しています。その三つ目は、成熟社会になって見えてきた課題への対処と、意識の転換が遅れていることです。欧米先進諸国でも、このような移行期の不安はあったと思われますが、長い年月をかけて対応したのでしょう。それに対し日本は、短期間で大きく変化したことから、そのずれに悩んでいます。たぶん、日本を追いかけてきたアジア各国も、これから同じような悩みを経験するのではないでしょうか。

以上で、この国の将来像を考える際に基盤となるであろう、三つのことを説明しました。
一つ目は、我が国が経済発展と自由で安全な社会を達成したことで、これからは「国民が自由に振る舞う、国家はその条件を整える」ことが将来の国家像の基礎になることです。
二つ目は、経済発展を達成した1990年代と現在では、内外の条件が大きく変わったことです。
その後は産業が衰退し、経済的先進国ではなくなりました。国内外には、新たな不安が増大しました。これらに、対処しなければなりません。
三つ目は、成熟国家になって見えてきた課題への対処です。「成熟社会の中の不安」と「意識転換の遅れ」です。

世界では、権威主義国家は、国民を動員して奮い立たせ、かつ指導者へ服属させるために、いろんな政治的あるいは文化的「物語」をつくり、宣伝します。そのような物語に巻き込まれたり屈服したりしないように、民主主義国家も人びとに、その体制の魅力を語らねばなりません。民主主義国家が語るそれは、権威主義者のような「物語」そのものではなく、人びとが夢のある「物語」を自らつくり出すための場を提供することであるはずです。我々は、国民に夢と安心をもたらすためにも、国際競争に生き残るためにも、魅力ある日本の「場」をつくり、国民と諸外国に語りかける必要があります。

次に、少し角度を変えて、「政治家の間の役割分担」と「内閣と与野党と国会の役割分担」について考えてみましょう。政治家と官僚の役割分担がうまくいっていないのと同様に、政府内での政治家の間の役割分担も必ずしもうまくいっていないようです。

祭り、年齢性別不問に

4月24日の日経新聞夕刊に「参加に年齢・性別問わぬ「祭り」」が載っていました。
・・・伝統行事や祭りで、性別や年齢など参加条件の見直しが広がる。男性中心から女性を加えて担い手不足の解決につなげる狙いのほか、参加できなかった人が声を上げる例も。多様性尊重などの考え方が広がる中、「祭りは誰のものか」を改めて考える契機でもある・・・

記事によると。福島県の相馬野馬追が、未婚の20歳未満という条件が今年撤廃されました。19歳で引退した26歳になる女性が、出場できるようになりました。宮崎県高千穂町の夜神楽では、2013年に女性演者だけの神楽が初めて披露され、犬山市の犬山祭では2022年に車山の担ぎ手に女性が参加しました。などなど、女性が参加できるようになった祭りが挙げられています。

5月2日の朝日新聞夕刊には、「21歳女性、タブーに風穴 筏下り、600年間「船頭は男性のみ」 あす和歌山で船出」が載っていました。
・・・筏(いかだ)で急流を下りながら、泡立つ瀬を越え、降り注ぐ水しぶきを体感できる和歌山県北山村の北山川観光筏下りに、今季、初の女性筏師が本格デビューする。山の神は女性だから、女性が山での仕事に就くことは忌み嫌われた――。そんな伝承も今は昔だ・・・

「伝統」という理由で限定してきたようですが、担い手不足で、そうも言っておられなくなりました。伝統は、新しくつくればよいのです。今は新しくても、10年後、50年後には伝統になっています。

新聞の取扱説明書

新聞を読まない人が増えています。
先日の立命館大学での講義の際にも、新聞を読むことの意味を説明しました。100人のうち3人ほどが紙で読んでいました。私は彼ら彼女らに向かって「私が採用担当だったら、あんたたちを採用するよ」と褒めました。スマホで読んでいる学生は、かなりいました。

新聞を読まなくても、ニュースはスマートフォンなどで簡単に手に入ります。というか、向こうから伝えてくれます。かつては、ニュースを伝えることの競争相手は、テレビとラジオだけでしたが、多くの人がスマホを持つようになって、どこでもいつでも見ることができるようになりました。その点では、新聞は勝てません。しかし、新聞の主な機能は、早くニュースを伝えることではありません。
新聞紙面の機能は、世の中にある膨大なニュースから重要なものを選択して、並べてくれることにあります。もう一つの効果は、関心のない記事も目に入るということです。何度も同じことを言っています。継続は力なり、という見方もあります(苦笑)。「新聞の役割

立命館大学では、私は口頭で学生に説明しました。何かよい資料があれば使いたいのですが、適当なものがありません。新聞社の努力が足らないと思います。新聞の機能を自明のこととして、宣伝が足らないのです。ほとんどの商品に、「効能書き」や「取扱説明書」があるのに。