5月7日の読売新聞「子どものSNS規制 世界の潮流」、川島隆太・東北大加齢医学研究所教授の「高い中毒性 脳発達妨げ」から。
・・・子どものSNS利用については、法的なものを含めて、何らかの規制が必要だ。理由は、SNSとスマートフォンには依存性と中毒性があるという一点に尽きる。また、使いすぎは脳の発達を抑制し、子どもの発達に害があるというデータもあるのだから、何らかの規制をしなければならない。
メールとは違い、SNSは、メッセージが届いたらすぐに返信しなければいけないというプレッシャーがある。例えばLINEだと、メッセージを読んですぐに返信しないと、相手が「既読無視した」と思って不快感を抱くのではないか、と不安になる人が多い。離れた空間にいるのに、同じ場所にいて会話をしていると錯覚するような仕組みになっているところが、中毒性を生む原因の一つだろう。
私たちの実験では、スマホの画面を見ていなくても、SNSのメッセージの着信音が鳴った途端、集中力が途切れて作業効率が落ちることがわかった。一方、見えないように背中側に置いた時計のアラームを鳴らしても集中力は落ちない。SNSが集中力に与える影響の大きさがうかがえる・・・
・・・2010年以降、仙台市の小中学生延べ約7万人を対象に、生活習慣と学力について調査している。勉強中に使用しているアプリと学力の関係を調べると、ゲームや動画、音楽のアプリより、SNS系のアプリを使っていたほうが学力が下がるという結果が出た。SNSの中毒性が高く、利用時間が長くなって勉強時間が減るためだろう。
さらに、5~18歳の子ども約200人の脳の発達をMRI(磁気共鳴画像)による検査で3年間調査したところ、インターネットの使用時間が短い子どもと比べると、長い子どもは大脳のうち3分の1の発達が止まり、大脳の神経細胞をつなぐ「大脳白質」という部分はほぼ全域の発達が止まっていた。長時間の利用が脳の発達を阻害している可能性がある・・・
・・・SNSのように依存性、中毒性があるものは、自分の意志ではなかなかやめられない。特に子どもは、論理的な思考をつかさどる大脳の前頭前野が発達途上のため、やめることが非常に難しい。そのために、子どものSNS利用については何らかの規制が必要だ。子どもたちが自分の人生に責任を持てる年齢までは、「中学生はスマホを持たない」「高校生はSNSをしない」などと規制するべきだ。SNSやスマホは、アルコールや薬物と同じくらい害があるということを知ってもらう、国や自治体による活動も必要だろう・・・