人口は減っているが就業者は増えている

3月31日の朝日新聞に「働き手、増える高齢者・女性」が載っていました。
・・・15歳以上の働く意思のある人の数を示す「労働力人口」が増え続けています。2024年の平均は6957万人で、7千万人に迫る勢いです。その内容を分析すると、高齢者と女性の働き手が増えていることが浮かび上がってきます・・・

4月14日の日経新聞夕刊に、「人材危機、なぜ起きた」という記事が載っていました。労働者不足についての解説です。
そこには、生産年齢人口は減っているが、就業者数は増えている(労働力調査)とあります。へえ。他方で、働き方改革が進んだとあります(古くてすみません。途中まで調べて放置してあったのです)。

日本の生産年齢人口は減っているのに、就業者数は増えている。これは、高齢者と女性の労働参加によります。ところが、労働力は不足している。なぜか。識者に聞いてみました。
就業者数が増えているのに、労働者の総労働時間数は減っているのです。「就業者数×1人当たり労働時間」という概念は「労働投入量」です。
内閣府の「日本経済レポート(2023年度)」第1節 コロナ禍を経た労働供給の動向2-1-1図(2)によると、1990年を頂点に労働投入量は減ってきています。長時間労働が減った、非正規労働者(短時間労働)が増えたということでしょう。

NTT、世界一の時価総額が6割に

5月9日の日経新聞に「NTT「失われた30年」、元世界一の時価総額4割減」が載っていました。
・・・NTTは、NTTデータグループ(データG)を完全子会社化して海外市場を開拓する。背景にあるのは米IT(情報技術)大手や中国企業にイノベーションで大幅に出遅れた危機感だ。かつて世界トップだった時価総額は4割減り、30年で輝きを失った日本の歩みと重なる。再編で競争力を上げ、挽回を目指す・・・

電電公社が民営化されNTTになったのは1985年です。1989年5月末時点で時価総額は22.4兆円と世界第一位でした。1999年にNTTドコモが始めた携帯電話のインターネット接続サービス「iモード」は革新的でした。しかし海外展開には失敗。通信規格が日本独自だったのでいわゆる「ガラパゴス化」し、アップル社がiPoneを出し、スマートフォンの世界になりました。過去10年でアメリカのテック大手が台頭し、韓国、中国も技術力を高めました。

・・・この間、ドコモを含めたNTTグループは革新技術やサービスを打ち出せなかった。日本市場が一定の規模を持っていたほか、年功序列が根付く日本企業の仕組みがイノベーションを妨げたとの見方がある。時価総額は2025年4月末時点で13兆円と、199位にまで沈んだ・・・

積ん読の開き直り2

積ん読の開き直り」「踏みとどまる勇気」の続きです。
なぜ、読めないとわかっているのに、次々と本を買ってしまうのか。それは、好奇心が止まらないからです。他方で、学生時代はお金に余裕がなく、欲しくても買えませんでした。勤め人になって少々余裕ができ、その後、原稿料などが入るようになってさらに買えるようになりました。

もう一つは、本を捨てないからです。冷蔵庫に入れる生鮮食品なら、新しい品を買えば、古い品を捨てるしかありません。冷蔵庫を次々と買う方法もありますが、賞味期限切れの食品が溜まるばかりです。家を建てて書斎を造ったことも要因です。以前に住んでいた住宅は狭くて、本を置く場所がありませんでした。買った本は実家に送り、倉庫に保管してもらっていました。
なぜ捨てられないのか。本という物ではなく、読んだ本、買った本という思い出が捨てがたいのです。「本を捨てる、思い出を捨てる」「希少価値と過剰と、書物の変化2

別の見方も考えました。これらの本の山は、私の好奇心の軌跡です。その時々に興味を持ち、買ったものです。そう思ったら、そんなに悪いことではないですよね(開き直り)。
それはまた、私がそろえた「百科事典」とも言えます。百科事典では各項目は簡潔に書かれていますが、それらを詳しく書いた本をそろえたということです。調べたいと思ったら、本棚から出せばよいのです。もっとも、本の山では、どこにどの本があるかわからず、出てこないのですが。

そして何より、買ったときは、探していた本を買った、あるいは知らない本を見つけて買ったという「うれしさ」がありました。ほかの娯楽に比べると、安くて効果の高い満足感でした。本より、この満足感を買っていたのかもしれません。

でも、このままにしておくと、家族に苦労をかけることになります。いつかの時点で、腰を上げましょう。まだしばらく先の話かな。
もう一つの貯まった山である仕事関係の資料は、受けている聞き書き(オーラルヒストリー)のために、順次整理中です。こちらは、資料の棚卸しであり、私の人生の棚卸しでもあります。

ところで、私以上に本に埋もれている肝冷斎は、完全に開き直っています(文末に記述あり)。ここまで来れば、ある意味、すごいです。

SNS高い中毒性、脳発達妨げ

5月7日の読売新聞「子どものSNS規制 世界の潮流」、川島隆太・東北大加齢医学研究所教授の「高い中毒性 脳発達妨げ」から。

・・・子どものSNS利用については、法的なものを含めて、何らかの規制が必要だ。理由は、SNSとスマートフォンには依存性と中毒性があるという一点に尽きる。また、使いすぎは脳の発達を抑制し、子どもの発達に害があるというデータもあるのだから、何らかの規制をしなければならない。
メールとは違い、SNSは、メッセージが届いたらすぐに返信しなければいけないというプレッシャーがある。例えばLINEだと、メッセージを読んですぐに返信しないと、相手が「既読無視した」と思って不快感を抱くのではないか、と不安になる人が多い。離れた空間にいるのに、同じ場所にいて会話をしていると錯覚するような仕組みになっているところが、中毒性を生む原因の一つだろう。
私たちの実験では、スマホの画面を見ていなくても、SNSのメッセージの着信音が鳴った途端、集中力が途切れて作業効率が落ちることがわかった。一方、見えないように背中側に置いた時計のアラームを鳴らしても集中力は落ちない。SNSが集中力に与える影響の大きさがうかがえる・・・

・・・2010年以降、仙台市の小中学生延べ約7万人を対象に、生活習慣と学力について調査している。勉強中に使用しているアプリと学力の関係を調べると、ゲームや動画、音楽のアプリより、SNS系のアプリを使っていたほうが学力が下がるという結果が出た。SNSの中毒性が高く、利用時間が長くなって勉強時間が減るためだろう。
さらに、5~18歳の子ども約200人の脳の発達をMRI(磁気共鳴画像)による検査で3年間調査したところ、インターネットの使用時間が短い子どもと比べると、長い子どもは大脳のうち3分の1の発達が止まり、大脳の神経細胞をつなぐ「大脳白質」という部分はほぼ全域の発達が止まっていた。長時間の利用が脳の発達を阻害している可能性がある・・・

・・・SNSのように依存性、中毒性があるものは、自分の意志ではなかなかやめられない。特に子どもは、論理的な思考をつかさどる大脳の前頭前野が発達途上のため、やめることが非常に難しい。そのために、子どものSNS利用については何らかの規制が必要だ。子どもたちが自分の人生に責任を持てる年齢までは、「中学生はスマホを持たない」「高校生はSNSをしない」などと規制するべきだ。SNSやスマホは、アルコールや薬物と同じくらい害があるということを知ってもらう、国や自治体による活動も必要だろう・・・

『仏教は、いかにして多様化したか』

佐々木閑著『仏教は、いかにして多様化したか 部派仏教の成立』(2025年、NHK出版)が、勉強になりました。

仏教には大乗仏教と小乗仏教があると習いました。現在では、大乗仏教と上座説仏教と言うようです。ところが日本にはたくさんの宗派があり、中国から輸入した経典も膨大な種類があります。釈迦がつくった仏教、釈迦が死んで200年後には、20もの部派に分かれたそうです。それが中国に輸入され、日本はそれをまた輸入します。

多くの部派に分かれたのは、釈迦の教えを、弟子たちが自らの考えや、自分たちに都合の良いように解釈し、改変したからです。釈迦は自ら苦行して悟りの境地に達するとしましたが、それを守った集団と、一般人はそんなことはできないので祈るだけで釈迦の近くに行けると変えた集団がでます。前者と後者では、全く違いますよね。でも、信者を獲得するには、後者の方が都合が良いのです。
後者はその程度によって、さらに分裂します。経典がたくさんあるのは、彼らが自分の説を「仏教だ」と主張したからです。これは、聖書やクルアーンでは考えられないことでしょう。

たくさんの仏さんがいることは、多神教に近いのかもしれません。もっとも、キリスト教でもいろんな天使がいますが。
日本では、鎌倉以降の仏教がさらに独自の解釈を立てて、分裂します。そして、妻帯も認めます。お釈迦さんが見たら、びっくりするでしょう。各宗教集団は、信者を獲得し、勢力を広げ、それぞれ経営集団になります。江戸時代には、役所に組み込まれ、地位が安泰します。

私は、なぜこんなに経典が多いのか、宗派が多いのか、疑問に思っていました。この本を読んで、明確になりました。お勧めです。
もう一つ、宗教学者あるいは経営学者に期待したいのですが。世界の宗教を、経営組織として分析してもらえませんかね。人の採用、収入の確保、支出の内容、資産の内容などです。集団として持続するためには、避けて通れない問題です。教義も重要ですが、カネと人がどのように集められ、使われているのか知りたいです。