3月23日の朝日新聞文化欄「無宗教でなぜ占い?見いだした価値 スピリチュアリティで「自分」肯定」から。
・・・日本人は無宗教と言われる。統計数理研究所の国民性調査で「信仰や信心」をもっていると答えた人は18年で26%だった。特定の宗教を信じていると職場や学校で公言する人も少ない。
しかし、それでも初詣には行き、葬式では手を合わせる。宗教と意識はされないが、科学的ではない占いやパワースポットを信じる人もいる・・・
・・・宗教学者の岡本亮輔さんは、宗教を信仰、所属、実践という三つの面から分析する。神道であれば、地域社会といった所属や、初詣などの実践も含んでいる。信仰の面からのみ宗教を捉えることは適当ではないという。
宗教学では占いや瞑想(めいそう)法などを「スピリチュアリティ」という分野として、考察の対象とする。「かつての宗教は、教団という共同体への所属で信者に安心感を与える面もあったが、スピリチュアリティは所属の要素を限りなく減らし実践に特化した宗教と言える」
宗教学者の伊藤雅之さんによると「サラダバー型宗教」とも表現されるという。伝統的な宗教は、教義の体系をパッケージとしてそのまま受け入れることを信者に求めた。しかし、身体の実践に特化するヨガなど、宗教のうち好きなところだけを選び取ることが好まれるようになった・・・
・・・占いやヨガ、瞑想、パワースポット巡りなどさまざまな実践を含むスピリチュアリティに通底するのは、「大自然や守護霊、内なる自分など、不可視の存在と神秘的なつながりを得て自己を高められるような体験」だと伊藤さんは説明する・・・
・・・なぜそうまでして人は宗教的な何かを信じるのだろう。岡本さんは「宗教」がなくならない理由として、自分がコントロールできないことへの不安を解消したいからだと説明する。その最たるものは死だ。「合理的なものでは軽減できない不安に応える非合理的な機能を宗教は担ってきた。人間に根源的な不安がなくならない限り宗教はなくならない」・・・