2月19日の朝日新聞オピニオン欄「心潤す、ささやかな喜び」、竹村和久教授の「あなどれぬ、小さな豊かさ」から。
・・・苦しい生活の中で味わうささやかな潤い、喜び。プチぜいたくをしたくなる気分はよく分かります。
人の購買行動や満足感を説明するのに「心理的財布」という概念があります。心の中には複数の財布があり、状況によって別々の財布から支払っている、という考え方です。
スーパーのタイムセールで「50円引き」にこだわるのに、がんばった自分へのごほうびなら数千円~1万円単位の服や靴を平気で買う。同じ値段の化粧品を買うとしても、普段使いのスキンケアのためなのか、衝動買いなのかで心持ちが異なることがあります。
この考えを発展させて、私は「心的モノサシ」というモデルを考えました。消費者は、物を買うときに心の中にあたかも価値のモノサシを持っているかのように意思決定する、という考え方です。そしてその特徴の一つが「モノサシの感度の目盛りは目標値に近いほど狭い」ということです。
1万円の予算で買い物をする場合、5千円と5500円の違いより、1万円と9500円の差に敏感になりませんか。つまり、目標値ぎりぎり付近の喜びは大きくなる。予算ぎりぎりで買おうとしていたものに少し足すくらいの「プチぜいたく」は、この心的モノサシで説明できそうです・・・