歯医者さんが減る

12月30日の日経新聞に「多過ぎ?歯科医、初の減少 偏在で高齢者の受診困難に」が載っていました。経済成長で虫歯が増え、それに対処するために歯医者さんを増やしたのですね。他方で、地域偏在が課題になっています。

・・・国内の歯科医師の数が初めて減少に転じた。半世紀前に大量に育成したベテラン層が引退し始めたためだ。歯科医院は「コンビニよりも多い」と過剰が指摘されてきた。歯学部の定員抑制で若手の数は細り、今後も歯科医の減少が続く。偏在が深刻で、山陰や北陸などの地方で不足しつつある。今後、住民が歯科診療を受けられない地域が広がる恐れがある。

神奈川歯科大学の桜井孝学長は「1970年代に歯科医になったボリュームゾーンの世代が引退する時期を迎えた」と語る。
70年代は国を挙げて歯科医を増やした時期だ。60年代後半に虫歯の患者が急に増えた。高度経済成長によって戦後の貧しい時代を乗り越え、食生活が豊かになった。その結果、子どもは砂糖を含む甘い菓子などを食べる機会が増えた。一方で歯磨きの習慣付けなど虫歯の予防は遅れていた。
これを受けて全国で大学の歯学部や歯科大学の新設が相次いだ。日本歯科医師会の資料によると、政府は69年に人口10万人当たり30人台だった歯科医を同50人に増やす目標を掲げた。歯科大学などの入学定員を短期間で約1100人から3000人超に増やした。その効果で84年に10万人当たり52.5人に増えた。だが、今度は過剰が指摘された。87年に旧文部省が定員を約20%削減する目標を打ち出した。98年には旧厚生省がさらに約10%減らす方針を出した。

現在、歯科医の国家試験の合格者数は年約2000人と横ばいが続く。一方で1970年代に働き始めた世代の多くが70歳代以上になり、年約3000人が引退している。新たに歯科医になる人の数と引退する人の数を差し引きすると年1000人程度減り続ける。
24年9月末時点の歯科医院の数は約6万6000施設で、依然としてコンビニより多い。足元の課題は総数よりも偏在だ。22年末に人口10万人当たりの歯科医が最も多いのは東京都の120.3人で、徳島県と福岡県が続く。最少は滋賀県の58.8人で、山陰や北陸も少ない。東京都と滋賀県の差は2倍強に達する。神奈川歯科大の桜井学長は「歯科医を目指す若者が地方から都市部へ流れる」と背景を分析する・・・