年別アーカイブ:2024年

忙しい職場の生産性低下

2024年5月27日   岡本全勝

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあります。二つのものを同時に取ろうとして、両方とも得られないことです。「虻蜂(あぶはち)取らず」も同義です。

霞ヶ関の官庁や地方自治体の人と話していて、改めて気がついたことがあります。仕事量が限界を超えていて、十分に処理できないこと以上に、困ったことになっているのではないかということです。

この30年間、行政改革の旗印の下、職員数の削減を続けました。バブル経済崩壊後の日本の風潮にも乗って、政治家だけでなく私たち官僚も正しい道だと考えていました。しかし、それにも限界があります。他方で、行政改革では仕事は減らず(予算は減っても、法律と政策はほとんど減っていません)、それどころか新しい仕事が増えています。職員数が減って、仕事が増える。その結果は、職員一人あたりの仕事量が増えているのです。これまでも、多くの職員は余裕のある仕事ぶりではありませんでした。

一人が処理できる仕事量を100だとします。従来の仕事Aが100として、新しい仕事Bが30追加されるとすると、合計で130。処理可能量を30超過します。すると、例えばAを70にし、Bを30して、合計100をこなすことになるでしょう。
ところが、そうはならないのです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」が当てはまり、仕事Aも仕事Bも中途半端になって、例えばAが65、Bが15で、合計80になるのです。
二つとも完成せず、さらに総処理量も減るのです。人間の処理能力を超える仕事をやろうとすると、かえって処理量が減ってしまうのです。それだけでなく、職員の精神衛生に悪い影響を与えます。
皆さんも、学生時代の勉強や、忙しい時期にこんな経験をしたことがありませんか。
集中力、その2。本人側の邪魔する要素」「同時に2つのことはできない

新聞の1面記事を非購読者にも

2024年5月27日   岡本全勝

5月17日の朝日新聞オピニオン欄に、藤村厚夫さんが「価値ある1面記事、非購読者にも」を書いておられました。意見に賛成です。

・・・メディアから得る情報は、私たちを取り囲む社会や世界を深く理解する出発点として重要な役割を果たしている。だが、その一方で、ニュースの流通量は増えるばかりだ。膨大な情報の山に囲まれていては、その対処に疲労を覚えることもしばしばだろう。
「これは本当に起きたことか?」「この解説は正しいか?」などと、つねに情報の吟味を繰り返さなければならないのは、時に苦痛でもある。となれば、信頼のおける第三者にこの対処を委ねたくなるのも当然だ。多すぎる情報をその重要性や信頼度から絞り込めるなら、読者の負担は軽減する。信頼に足るメディアが求められるゆえんだ。

筆者が携わるスマートニュース メディア研究所が2023年に実施した「メディア価値観全国調査」(第1回、QRコード参照)では、そんな情報の価値判断をめぐって、人々の期待値が明らかとなった。
調査では、メディアをめぐって多数の問いを設けたが、端的に「新聞の1面に掲載されるニュース」を重要なニュースと見るか否かも尋ねた。「重要だ(かなり重要である+やや重要である)」と回答したのは全体で76%と高い評価を見せた・・・

・・・両調査を通じて見えてくるのは、新聞に求められる役割は、正確で信頼性の高い情報発信だけではなく、情報を重要性で絞り込む(新聞社の)“価値判断そのもの”でもあるということだ。新聞1面への高評価はその最たる例だろうし、「安心できる」の高スコアにも対応する。
どの記事を1面に掲載するかは流動的で、新聞社内ではつねに侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が戦わされていると、筆者の取材に応じた朝日新聞の春日芳晃・編集局長兼ゼネラルエディターは答えてくれた。掲載の基準には定式があるわけではなく、鮮度や重要性の高さ、あるいは時間をかけて取材してきた企画などの記事が、日々、1面の座を占めるべく競いあっている。

だが、新聞が持つこの重要な価値を、新聞に日常的に触れていない人々が体験できているかといえば、心もとない。インターネットメディアの時代では、朝日新聞ならば、「朝日新聞デジタル(アプリ)」や「朝日新聞紙面ビューアー」に新聞1面に相当する機能を求めることになる。だが、有料購読者限定という壁がある。多くの非購読者は、「厳しい取捨選択を経て絞り込まれた日々の重要な情報の提供」という価値の醍醐味を体験しないままだ。その接し方は、朝日新聞の記事であったとしても、ネットに広がる「多すぎる情報」の一部として体験するにすぎない。
その意味で、紙面ビューアーや、重要なニュースを3本に絞って解説する「ニュースの要点」を(一部機能を制限するなどして)広く無償で提供できないものか。「朝日が考える今日の重要なニュース」という指針を広く示すのだ。あわせて他のメディアの価値ある情報も選別して紹介すれば、朝日新聞の持つ取捨選択力を独立の価値として示せる・・・

岡義達著作集

2024年5月26日   岡本全勝

吉田書店から「岡義達著作集」が出版されました。絶版になっていた岩波新書『政治』が読めるようになったことは、喜ばしいです。

『政治』は、政治を見る際の、見方の枠組みを示しています。「政治」は人によって意味するところが異なります。その違いはどこから来るのか、では共通するのは何か。最大公約数を探ります。
岡先生の政治学は、象徴論と分類されるものです。人と人との関係を、力や金銭ではなく、意味の共有として考えます。そして、時代を超えた共通項を剔出します。政治とは何か、政治学とは何かを考えたい人には、ぜひ手に取って、挑戦してほしいです。

前にも紹介したように、苅部直東大教授の政治学の入門書『ヒューマニティーズ 政治学』(2012年、岩波書店)の読書案内の最後に、次のように書かれています。
・・そして最後に、ある意味で大人向け、もしくはプロ向けの、「政治」に関する本を二冊。岡義達『政治』(岩波新書、1971年)と佐々木毅『政治の精神』(岩波新書、2009年)。どちらも、新書版とは思えないほどに読み口の重い本であるが、それは決して抽象的で難解という意味ではない。じっくり読み解いていけば、「政治」という営みがまとう、意味の分厚い塊がしだいに溶け出してくるように感じられるはずである・・
吉田書店は、よい本を出してくださいますね。ありがとうございます。「『解(ほど)けていく国家―現代フランスにおける自由化の歴史』
岡義達著作集2」に続く

公務員では雇えないので別法人にする

2024年5月26日   岡本全勝

5月11日の日経新聞東京版に「東京都の財団、行政DXけん引 企業OB「官民の壁」崩す」が載っていました。

・・・東京都が民間から人材を集め、都内自治体のデジタル化を加速している。全額出資の財団法人を設立し、日本マイクロソフトや富士通の出身者らを採用した。優秀な人材には都庁幹部を上回る給料を支払う。業務開始から8カ月が過ぎ、民間出身者が行政の現場で成果を出し始めている・・・

一般財団法人「ガブテック」です。職員14人のうち3割が民間経験者です。都庁でなく別法人にしたのは、公務員の枠組みでは優秀な人材を採用できないからです。給料が公務員水準では低くて、「よほどの物好きでなければ来てくれない」のです。この法人では、職員の年収が最高で1500万円に設定しています。都庁では部長(50歳)が1300万円、課長(45歳)で1000万円程度です。

経験年数と職位で給料が決まる、警察や消防、保育などの一部職種を除き給料表が同じという仕組みは、無理になってきています。民間企業と競合する技術職にも、別の給料表が必要になるのでしょう。これも、メンバーシップ型からジョブ型への移行の一つとも考えられます。

立命館大学法学部「公務行政セミナー」講師

2024年5月25日   岡本全勝

昨日5月24日は、立命館大学法学部「公務行政セミナー」の講師に行ってきました。去年に引き続き3回目です。約80人の学生が、熱心に聞いてくれました。
立命館大学法学部では公務員育成に力を入れていて、卒業生の22%が公務員になり、国家公務員と地方公務員が半分ずつです。

この授業では、国家公務員や地方公務員の先輩たちが話をします。私のような高齢者が話すと、自慢話と説教になりがちです。そこで、実例として東日本大震災での対応経験を、写真を見せながら話します。これは、当時小学生だった受講生に、災害を知ってもらうことと、国・官僚は何をしたかを知ってもらうためです。

後半は、そのほかの私の体験を話し(新聞記事や書いたものを配布し)、公務員になる際の心構えを話しました。日経新聞から提供してもらった、新聞の読み方も配りました。新聞各社も新聞離れを嘆くなら、もっと学生に新聞を読むこと、その効用を宣伝するべきですね。
そして質問を受けました。
タマネギの皮を増やす