年別アーカイブ:2024年

市町村アカデミー研修動画2

2024年7月7日   岡本全勝

市町村アカデミーでは、今年度から研修動画を配信しています。4月の第1期では、私も登壇しました。7月1日から第2期を配信しています。

今期は、次のお三方にお願いしました。
「未婚化から見る統計データに基づく有意性の高い少子化対策とは」天野 馨南子さん(株式会社ニッセイ基礎研究所生活研究部人口動態シニアリサーチャー)
「ナッジを活用した政策イノベーション」特定非営利活動法人PolicyGarage
「文化芸術の意義と活用」平田 オリザさん(劇作家・演出家)

天野さんは、少子化問題で鋭い指摘をしておられ、その分野の第一人者です。平田先生は、演劇部門での有名人です。ナッジは、市町村職員の間では大きな関心を持ってもらっています。この方々の講義を、無料で受けることができるのです。引き受けていただいた先生方には、感謝します。
今回も配信早々、たくさんの方に見てもらっているようです。第1期分も、好調です。
各人が好きな時間に、また少しずつ見ることもできます。便利です。
パスワードは、各自治体の人事課など職員研修担当課に送付してあります。市町村職員の方は、担当課に問い合わせてください。

事故をきっかけに世界に追いつく

2024年7月7日   岡本全勝

正月に起きた、羽田空港での飛行機衝突炎上事故。国土交通省が、再発防止策を決定しました。それに関する、6月23日の読売新聞「羽田事故 対策5分野 国交省 正式決定へ」から。

・・・ 国交省関係者によると、1月以降、検討委で議論してきた新たな対策案は、〈1〉管制交信でのヒューマンエラー防止〈2〉滑走路誤進入の注意喚起システムの強化〈3〉管制業務の実施体制の強化〈4〉滑走路の安全の推進体制の強化〈5〉技術革新の推進――で構成する。

事故からまもなく半年。国土交通省は再発防止策の取りまとめにあたり、滑走路の安全に関わるハードとソフト、すなわち「人、運用、技術」のバランスを念頭に、一体的なリスク低減を図った。新たな取り組みが、別のリスクを生まないことにも配慮したという。
対策の大半は、欧米やアジアの航空当局や国際機関の状況を丹念に調査し、日本の先を行く取り組みを導入した形だ。ただ、裏を返せば「悲惨な事故を機に、諸外国への遅れをやっと取り戻そうとしている」との厳しい見方と反省の声は、国交省内にもある・・・

むやみに謝るのはやめよう

2024年7月6日   岡本全勝

カスタマーハラスメント(これも和製英語のようです)が問題になっています。客がお店に対して理不尽な言動や不当な要求をすることです。暴言を浴びせられたり、無理難題を言われたりします。時には暴行も加えられます。同様な問題として、役所にあっては、行政対象暴力があります。住民だけでなく、議員から暴言や無理な要求を受けることもあります。
役所や企業に非がある場合に、苦情を言ったり代わりの商品を求めることは正当な要求でしょうが、度を超えた苦情や要求は問題です。そして、その場を穏便に済まそうと妥協すると、さらに無理な要求を重ねてきます。

「お客様は神様です」という台詞を誤って理解し、それを転用していることが指摘されています。これは三波春夫さんの言葉ですが、「自分の完璧な歌をお客様に届ける、お客様を神様とみて神前で祈る時のような気持ちで歌を歌う心構えを表したもの」だそうです。それが、「お客様は神なんだから、何をされようが我慢してつくしなさい」というような間違った解釈で使う人が出てきました。朝日新聞「カスハラ問題で引用される「お客様は神様です」の誤解 三波春夫さんの真意は別次元」。

私はこの背景に、日本社会の「すぐに謝る」文化があるのではないかと考えています。例えば、電車の車内放送です。遅延すると「遅れて申し訳ありません」と放送があります。しかし、遅延の原因には鉄道会社の責任によるもの(例えば車両の故障)とともに、鉄道会社ではどうにもならないもの(例えば踏切事故、地震による停車)があります。ところが後者であっても、「申し訳ありません」とわびるのです。乗客から「困るじゃないか」と文句を言われたとき、前者ならお詫びしなければならないでしょう。しかし後者なら「私たちではどうにもできません」としてお詫びする必要はありません。何でもかんでも謝ることが、客を勘違いさせます。
「ひとまずお詫びしておけばよい」という安易な考えが、客を増長させていないでしょうか。

人工知能、「記憶力の良い研修生」

2024年7月6日   岡本全勝

7月4日のiJAMP(時事通信社)に、塩光献・アブポイント日本法人代表取締役社長が「生成AI、現状では「記憶力の良い研修生」」を書いておられました。いくつも納得できる指摘がありますが、次の文章を紹介します。

・・・生成AI(人工知能)の登場は大きなことではあったが、職場では現状は「非常に記憶力の良い研修生」に例えられている。覚えは良いのだが、社内業務においてやって良いことといけないことがまだしっかり判断できない状態だ・・・

後段の「やって良いことといけないことが判断できない」は、重要な指摘だと思います。教えないと、善悪の判断を機械はできません。

自信過剰の時代から自信喪失の時代へ

2024年7月6日   岡本全勝

6月21日の朝日新聞オピニオン欄、暉峻淑子さんへのインタビューから。
・・・ バブルの最盛期に出版した著書「豊かさとは何か」で、「日本は豊かさへの道を踏み違えた」と警鐘を鳴らした暉峻淑子さん。「画一的モノサシで優劣をきめ、敗者を排除していく社会の流れ」に抗したいと訴えた。あれから30年余。96歳の経済学者の目に、日本社会はどのように映っているのだろう・・・

――いまの若者は、バブルの時代を知りません。いまや、日本の名目GDP(国内総生産)はドイツに抜かれて4位。IMF(国際通貨基金)の調査では2023年の1人当たりのGDPは34位です。
「当時はモノとカネがあふれた絶頂期。日本の1人当たりのGNP(国民総生産)がアメリカを追い越した時代でした。自信過剰で、あふれたカネは株と土地の投機に流れ、地価が暴騰。その後、バブルは崩壊し、不良債権の後始末に苦しむことになります。この国の政治は、お金を教育や社会保障といった社会の共通の土台を築くために使ういいチャンスをみすみす逃してしまった」
「バブルが自信過剰の絶頂期だったとすれば、いまは逆に、自信喪失の時代です。『失われた30年』という言葉に象徴されていますね。でも、変わっていないものがあります。それは『生き生きとした人間の活力が戻ってくるような社会』になっていないということ。19世紀のドイツの経済学者エルンスト・エンゲルが、本当の富は国民の生活水準で表される、と言っています。『豊かな生活』はますます遠のいています」

――具体的には?
「例えば、労働時間は相変わらず長く、社会保障も削減される一方です。新自由主義によって非正規労働が広がり、フリーランスや、ギグワークなど生活の計画を立てられない働き方が多くなりました。偏差値重視の教育もそう。私たちの意識の画一化、つまり権力を持つものになびきやすいという特徴も変わっていません」
「多数の人々が、競争社会の中で認められたい、いい地位についてお金持ちになりたいっていう、一つの価値になびいている。経済価値優先に目を奪われ、人権や個人の尊重という大切な価値を置き去りにしたままなのです」