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キリスト教はどのようにして広まったか

2024年8月27日   岡本全勝

ロドニー・スターク著『キリスト教とローマ帝国』(2014年、新教出版社)を読みました。新聞の書評欄で見かけたので。その通りに、勉強になる内容でした。

古代ローマ帝国のはずれで起こったよくわからない小さな宗教運動が、どのようにしてそれまで支配的だった多神教を駆逐し、西洋の支配的信仰になったのか。この本は、「キリストの偉大さ」ではなく、数学的、社会科学的に分析します。

キリストが磔にあった数ヶ月後、キリスト教徒の数は120人ほどでした。著者は紀元40年に1,000人と見積もり、そこから推計します。そして、1年で3.42%、10年間で40%という増加率を導きます。すると、紀元100年には7,530人、200年には217,795人、300年には6,299,832人になります。

キリスト教は、初期にはユダヤ人に広まります。既存のユダヤ教に反発する人、エルサレムを追放されたり流れたりして異邦で暮らす人に受け入れられます。
集団改宗が起きたこと、奴隷たちから広がったことも否定されます。改宗は、宗教者による説得より、家族や知り合いからの勧誘の方が効果が高いのです。
子どもの間引きが横行した時代に、キリスト教はそれを禁止します。そして、病気が流行した際も、助け合うことを勧めます。これもまた、キリスト教人口の増加を進めます。
ローマ帝国支配者層とキリスト教徒が対立し、残虐な死刑が行われたという通説も、否定されます。確かにキリスト教指導者は死刑にあったのですが、多くの信徒はそんな目に遭っていません。
これ以外にも、興味深い事実が明らかにされます。お勧めです。

二重基準

2024年8月27日   岡本全勝

8月24日の朝日新聞1面は「処理水放出後、漁続ける中国 日本産禁輸、でも近海で操業」でした。
・・・中国政府は処理水を「核汚染水」と呼び危険性を訴え、禁輸に踏み切った。だが、日本に近く日本漁船も操業する海域で、大量の中国漁船が今も変わらず操業する状況が続いている・・・

・・・台湾海峡を望む中国・福建省福州の漁港。16日正午、839隻の漁船が爆竹を鳴らし、一斉に北東に進み出た。目指すはこの日、一部で漁が解禁された東シナ海だ・・・
・・・東京電力福島第一原発の処理水放出が始まって24日で1年になる。日本産水産物を全面禁輸した中国では当初、「放出から8カ月で汚染水が沿海に到達する」という清華大の研究チームのシミュレーションがネット上で広く拡散した。
だが男性は、「もし汚染があれば、国は我々に漁をさせない」と意に介さない。処理水に関連して海域や魚種を制限する通知はないという。地元メディアによると、福建省全体ではこの日、1年前より651隻多い9795隻が漁に出た。遠洋漁業が盛んな同省からは日本沖の太平洋にも多くの漁船が出港する。

船舶の信号から位置を特定できる「グローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW)」を使って中国漁船の活動をみると、中国沿岸だけでなく日本近海で漁を続けている実態が浮かぶ。北緯40~50度、東経150~170度の海域に位置する北海道根室市から東方沖合の公海はサンマのほかサバやイワシなどがとれる漁場で、中国漁船が活発に活動していた。
GFWのデータによると、この海域で今年5~7月に操業した中国漁船は前年同期比で34%多く、延べ8876隻にのぼった・・・

記者会見でこの点を質問されたら、中国政府報道官は、どのように回答するのでしょうか。国内では報道統制を敷くことが可能ですが、海外と後世の口を封じることはできません。世界での評判、後世の国民からの評価は、気にならないのでしょうか。

高円寺阿波踊り

2024年8月26日   岡本全勝

今年も、8月23日(前夜祭)、24日、25日と、高円寺では恒例の阿波踊りが行われました。
我が家の1本裏の商店街も演舞場になっていて、大きな太鼓とドラムの音、ざわめきが家の中まで伝わってきます。
今年は何度か豪雨に遭っているのですが、踊りの間は大丈夫でした。終わった後に土砂降りになる日がありましたが。

来月2歳になる孫を連れて、夕方、商店街を通りかかると、連が踊りながら進んでくるのに出くわしました。孫は踊り子さんを見て、楽しそうに体を揺すっていましたが、鳴り物さんたちが来ると、大きな音に驚いて泣き出してしまいました。今年の思い出です。

幹部官僚の安い給与

2024年8月26日   岡本全勝

官僚の給与の低さ」の続きになります。日経新聞は、8月14、15、17日と「脱「ブラック霞が関」へ 人事院勧告2024」を連載していました。14日は「キャリア給与、民に見劣り」でした。

・・・総合職大卒の初任給について過去最大の増加幅となる2万9300円の増額を促した。大企業の背中が見える23万円に上がる。基本給にあたる「俸給」も30代後半までの若手に重点を置いた引き上げを勧告した。平均の年間給与は691万6000円となる・・・

・・・人事院が総合職の新規採用者を対象に23年に実施したアンケートは給与水準を見直す重要性を如実に示す。仕事の魅力を高め、優秀な人材を獲得するのに必要な取り組みとして8割が「給与水準の引き上げ」を挙げ、最も多かった。
民間との格差は残る。労務行政研究所の調査ではキャリア官僚が併願する会社が多い東証プライム上場企業の24年度の平均初任給は23万9078円。平均年収も東証プライム上場企業は735万7000円(帝国データバンク23年度まとめ)で見劣りする。

格差はキャリアのゴールとも言える幹部年収に顕著に表れる。24年度のモデル給与では、省庁の事務方トップである事務次官の年収はおよそ2385万円となった。労務行政研究所の23年の調査では、大・中小企業の社長の平均年収は5586万円だ・・・

15日は「公務員ジョブ型、年功序列が壁」、17日は「平均終業0時48分  元凶は国会対応」でした。

岡義達著作集4

2024年8月25日   岡本全勝

岡義達著作集」や「岡義達著作集3」の続きになります。8月24日の朝日新聞読書欄に、御厨貴先生の「岡義達著作集」書評「戦後政治の「楽観的」さ醸し出す」が載っていました。
御厨先生でも、学生時代に歯が立たなかったのですね。

・・・『政治』をテーマとする本は珍しい。難解をもって1970年代から80年代において知られた岡義達の『政治』が、ほかの著作とともに1冊の「著作集」として編まれた。学生時代に歯のたたなかった岡さんの『政治』との半世紀ぶりの再会である。
岡さんの抽象化レベルを正攻法をもって理解しようと考えると、魔のラビリンスに入り込み、到底抜け出せない。まずは岡さんが繰り返し見せる「言葉のかけ合い」の世界を注視したい・・・
・・・私は制度化、伝統化、状況化の三つの類型を自在に論じた第4章をまず読み、そのさらなる展開を好む場合に後半部を、いやその前提となるあり方を探る場合に前半部を読むと、得るものがあるように思う・・・

・・・岡さんの『政治』は、民主政に一番の重きを置きながら、戦後政治と政治学がもつ楽観的な雰囲気を醸し出している。今の現実政治ではあり得ない、予定調和的発展を進みゆく戦後の時代性がそこに描き出されている・・・
なるほど、このようにも読めるのですね。

朝日新聞の8月17日書評欄では、五百旗頭薫教授が、「政党政治の歴史を知る 限られていく選択肢、その先には」で、十河和貴著『帝国日本の政党政治構造 二大政党の統合構想と〈護憲三派体制〉』(2024年、吉田書店)と、奥健太郎、清水唯一朗、濱本真輔編著『政務調査会と日本の政党政治 130年の軌跡』(2024年、吉田書店)を取り上げていました。この2冊も、吉田書店の出版です。小さいながら(大量には売れない)よい本を出しておられます。