年別アーカイブ:2024年

雇用格差対策や職場改革に取り組む労働組合

2024年10月4日   岡本全勝

9月19日の日経新聞に「UAゼンセン、労組で一人勝ち 「非正規」代弁し存在感」が載っていました。

・・・流通・サービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンの拡大が続いている。18日に公表した組合員数は約190万人と約10年で3割増えた。非正規の働き手の組織化が進んだほか働き方改善などにも取り組んだことが奏功した。正社員の賃上げに活動の軸を据え続ける主要な産業別労働組合(産別)の退潮が続くなか、存在感は高まる一方だ・・・

・・・UAゼンセンは12年、繊維産業などの労組でつくるUIゼンセン同盟と、小売業などの労組でつくるサービス・流通連合が統合して発足した。2位の自動車総連の約80万人を引き離し、国内最大の産別だ。
日本の労組の組合員数は1994年の1269万人をピークに減少に転じ、2023年には993万人にまで減った。過去10年間、約40の主要産別の7割で組合員が減り、電機連合や情報労連など、1割以上減らした組織も少なくない。そのなかで、UAゼンセンは発足以来、組合員数を約50万人増やし一人勝ちしている状態だ。

躍進の理由の一つが、パートやアルバイトなど非正規の働き手の取り込みに成功してきたことにある。日本の労組は伝統的に終身雇用の正社員が中心だ。国内全組合員に占める非正規の比率は14%(23年)にとどまり、「正社員クラブ」とやゆされることもある。UAゼンセンは非正規組合員の比率は6割超、過去1年に加入した組合員では9割を占める。
ここ20年余り、生産年齢人口の減少が加速するなか、多くの企業が女性やシニアなど短時間労働の働き手を増やした。とりわけ「非正規の基幹化」が進んだのがUAゼンセンの中核を占める小売業や飲食業だ。「職場の正社員比率が低下するなか、『数の力』を強化するため、短時間労働者の組合員化が不可欠になった」(松浦会長)
このため発足当初から「雇用形態間格差の是正」を掲げ、加盟労組に非正規を組合員化する労働協約の改定を促した。UAゼンセンの都道府県支部ごとに目標を設け、地方企業での労組結成も後押しした。昨秋以降もヨークベニマルなどで数千人規模の非正規が組合員となり、串カツ田中などでは新たな労組が誕生した。
23年秋以降、約1万7千人の非正規を組合員に加えたスギ薬局ユニオンでは、原則、正社員に限定していた積み立て有給休暇制度などの対象を非正規に拡大。小沢政道中央執行委員長は「短時間従業員の不満を把握し解消することで離職防止にもつながる」と強調する。

UAゼンセンのもう一つの特徴は賃金交渉以外の活動の広さだ。伝統的に日本の労組の最大の役割は春の賃上げ交渉にあったが、2000年代にはデフレの長期化などで主要企業の労組はベア要求を凍結。13年に政府が企業に賃上げを要請した「官製春闘」でベアは復活したが、要求水準は依然として低く、「労組不要論」すらささやかれた。
UAゼンセンはこの間、職場のジェンダー平等や育児・介護の両立支援など総合的な労働条件の改善に交渉の範囲を広げ、19年には他産別に先立ち、デジタル化などに対応したリスキリング(学び直し)も労使交渉のテーマに掲げた。
今年は小売業などの現場で深刻化する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策にも力を入れ、顧客の迷惑行為に直面した従業員向けの相談窓口の整備や専門研修の実施を経営側に求める。賃金だけでなく働き手の多様な悩みに対応することが、労組の存在価値を高め、さらなる組合員の獲得につながる好循環が生まれている・・・

連載「公共を創る」第200回

2024年10月3日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第200回「政府の役割の再定義ー官僚機構と「政府・与党」」が、発行されました。
前回から、行政の役割を考えるに当たって重要な、政治との関係の議論に入っています。まず、国民の政治意識の問題を取り上げています。

1991年のバブル経済崩壊後、政治家と官僚は、そして報道機関も国民も、いずれ経済は持ち直し、以前と同じ状態に戻ると考えていました。この考えに沿って、90年代は大型の経済対策を続けたのです。しかしその効果は少なく不況は長期化し、当面している経済停滞は単なる景気循環ではないと分かりました。就職氷河期もあり、98年には自殺者が3万人を超え、社会の不安が多くの国民の目にも明らかになりました。
ようやく政府も社会も、日本が発展期を終え成熟期に入ったことを認識し、政治の在り方を変えなければならないと考えました。行政改革が、「小さな政府を目指した時代」から、「仕組みの改革の時代」へと進んだのです。それが、橋本龍太郎内閣の省庁改革です。そこで指摘されたのは、官僚主導から政治主導への転換です。

ついに、連載が200回になりました。2019年4月25日に始めて、5年です。「第1回

旧優生保護法、遅かった救済

2024年10月3日   岡本全勝

9月19日の日経新聞「強制不妊、逃した「救済」機会 司法判断で政治解決再び」から。

・・・強制的な不妊手術という国による重大な人権侵害に対する補償制度法案が18日、超党派の議連で固まった。旧優生保護法の成立から76年。国際社会からの批判や当事者の訴えという「救済」の機会があったにもかかわらず政府は動かず、司法に迫られる形で政治決着に至った。約2万5千人とされる被害者へ補償が行き渡るかが問われる。

旧優生保護法は1948年に議員立法で成立した。戦後の深刻な食糧不足から人口抑制を図りつつ、復興に携わる人材を確保する狙いがあったとされる。「不良な子孫の出生を防止する」ため、正当な理由なく不妊手術を認める規定が盛り込まれた。
同法が示す「優生思想」を批判する声は80年代ごろから国内で高まり、旧厚生省内でも「人道的に問題はあるのでは」と指摘が上がったという。しかし法改正の動きは鈍く、90年代に入っても不妊手術は続けられた。

見直しを迫ったのは国際社会だ。94年、カイロで開かれた国連の国際人口開発会議で本人の同意なく子宮を摘出された日本人の事例が紹介された。「日本にはなお優生保護法が存在し、障害をもつ女性の人権が侵害されている」との訴えは大きな反響を呼び、障害者の国際団体などから法改正の要望が殺到した。
国会は96年に旧法を母体保護法に改正し、手術の規定を削除した。しかし手術を受けた人への補償は見送った。同様に不妊手術を強制し、見直し後に正式な謝罪や補償をしたスウェーデンやドイツとは対照的な対応だった。
国際人権規約委員会が98年、必要な法的措置をとるよう勧告した際には「過去に遡って補償することは考えていない」との政府見解を示した。

国による補償がないまま法改正から20年超が経過した2018年1月、当事者が声を上げた。手術を受けた本人が初めて訴訟を提起。これを受けて同年3月に超党派の議員連盟などが発足し、補償に関して初めて具体的な検討が始まった。
19年に全会一致で成立した一時金支給法は手術を受けた本人にのみ一律320万円を支給することを柱とする。320万円は「見舞金」という位置づけで、賠償の趣旨は含まれていない。国の法的責任は明示せず、全面的な補償はまたも置き去りとされた。

背景には旧法により障害者への社会的差別や偏見が助長されるなかで、当事者が訴え出る心理的負担が重かった点がある。約2万5千人が手術を受けたとされる一方、一時金の支給を受けたのは24年7月末時点で1129人にとどまる。今なお家族や周囲にさえ明かせていない人も多いとされる。
「国会は適切に立法裁量権を行使して速やかに補償の措置を講ずることが強く期待される状況にあった」。最高裁は24年7月の判決で、立法府としての役割を果たさない国会や政府への批判を強くにじませた。
最高裁判決を受け、岸田文雄首相は7月、原告らに直接謝罪した。面会で「政府の主張自体が原告の気持ちを傷つけるもので、政府の姿勢が問題の解決を遅らせた」と言及した。旧法成立から76年が経過し、全面補償への道筋がようやく開けた・・・

最近の読者の反応

2024年10月2日   岡本全勝

このホームページ、何人か熱心な読者がおられます。記事への感想とともに、まちがいを指摘してくださいます。

・最近の記事は、薄っぺらいのが多いですね。
→ご指摘の通りです。お許しください。ほぼ毎日、思うことと新聞記事の紹介を、それぞれ1件ずつ載せています。それを褒めてください。
新聞記事の紹介は、私が関心を持った世の中の問題や動きを書き留めておくことであり、皆さんにも知ってほしいと思い、書いています。
思うことは、仕事や私生活を通じて考えたことや、単なる日記です。
事前に書きためているのですが、それなりに時間と労力がかかるのですよ。このページは本業ではなく、「副業」ですから。「内容が薄っぺらい」ことは、自覚しています。画面では、長い文章や難しい話は読めませんよね。

・誤字脱字が多くありませんか。
→そうです。いろんな方から、まちがいを指摘されます。本人は確認しているつもりなのですが、あきませんねえ。
このホームページを加筆するのは、もっと集中しなければならない仕事の後などの、隙間時間にやっていますから。そんなものだと思って、読んでください。
まちがいを見つけたら、指摘してください。表紙の右上「問い合わせ」を使ってください。

街頭犯罪は20年で8割減

2024年10月2日   岡本全勝

9月13日の日経新聞「交番「24時間体制」転換 街守り150年、人員配置見直し」から。

・・・警察庁は原則24時間体制だった交番・駐在所の運用を見直す方針を決めた。交番は3交代制、駐在所は住み込みが中心だったが夜間は無人となる日勤制を認める。犯罪の舞台が街頭からインターネットへと移行するなか、効率的な人材配置が必要と判断した。治安を守る要として長年機能してきた地域警察活動の転換点になる。
警察庁は交番や駐在所について定める「地域警察運営規則」を13日に改正する。各交番・駐在所の具体的な見直し策は都道府県警が検討する。
改正規則は交番・駐在所について、必要がある場合にはいずれも日勤制の地域警察官により運用できるとした。地域の状況や人出に応じて、ワゴン車による移動式交番や警察官が一定期間常駐する臨時交番を開設できるとする規定も盛り込んだ。
交番は1874年に警察官が交代で立つ「交番所」が東京にできたのが始まりで、1880年代に24時間体制になったとされる。パトロールや落とし物の受理といった業務に加え、事件が起きれば現場に急行し初動捜査も担う。2024年4月時点で全国に交番は6215カ所、駐在所は5923カ所ある・・・

・・・見直しの背景には犯罪情勢の変化がある。23年の刑法犯認知件数は約70万件で、戦後最多だった02年(約285万件)と比べ7割超減った。なかでも地域警察官が警戒するひったくりや車上狙いといった街頭犯罪は02年から8割減の約24万件に抑え込んだ。
一方、近年は特殊詐欺やSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺、サイバー犯罪といったインターネットや電話を通じた犯罪が増えている。各警察では摘発に向けこうした犯罪に対応する部門の陣容を強化している・・・