「最低賃金、政治の役割」の続きです。
これらの解説記事では、審議会への知事の関与への疑問や、各界代表型の審議会が不要になるのではないかとの心配が書かれています。しかし、最低賃金の決定を審議会に委ねていることに問題があるのです。
石破茂首相は今年10月の臨時国会で「2020年代に全国平均1500円という目標に向かって努力を続ける」という考えを打ち出しました。衆議院選挙では、与野党ともに賃上げを公約に掲げました。自民党の公約では、金額や達成時期は明記されませんでしたが、「最低賃金の引き上げの加速を図る」としています。
公明党は5年以内に全国平均1500円の達成を目指す、立憲民主党や共産党などが最低賃金1500円以上を掲げたほか、国民民主党は「全国どこでも時給1150円以上」を早期に実現するとしました(10月13日付け読売新聞「9党公約比較 最低賃金上げ 与野党一致」)。
各党がこのような主張をして、政策の競争が行われるのは望ましいことです。もう一歩進んで、現在のように決定を審議会に委ね、政治の意思を間接的に伝える方法がいいのかも、議論して欲しいと思います。
そのことで、賃金の引き上げを困難と感じている中小企業への対策も、政治が責任を持って行うことになります。今のままでは、中小企業には経営努力を押し付けているだけであり、場合によっては時給が上がるだけで、雇用時間や人数が減り、働く人たちの手取りは増えない可能性さえあります。そうなったとしても、それは最低賃金審議会の問題ではないからです。