このホームページでもしばしば取り上げている、最低賃金の決定方式についてです。「コメントライナー寄稿第6回」「最低賃金千円に思う」
今年の夏に、徳島県知事が徳島地方最低賃金審議会に出席し、「千円を超える形で決まるように強く望んでいる」と発言し、8月8日に徳島労働局を訪れ「1050円」を要請しました。結果は980円と、知事の要請には届きませんでしたが、中央審議会が決めた目安の50円を大幅に上回る84円の引き上げでした。
知事は取材に対し「学者が中心の公益(委員)と労使(の代表委員)だけで決めるのはおかしい。選挙で選ばれた自治体トップが参加し、地方の将来に責任を持つ。それが民主主義だ」と話しています(10月25日付け朝日新聞「最低賃金に政治が介入「労使で決める」建前、崩した徳島ショック」)。
首相が関与したこともあります。2016年の中央最低賃金審議会の小委員会は、前年とその前の年は徹夜協議だったのに対し、この年は早々としかも24円の引き上げを決めたのです。次のように解説されています(2016年7月29日付け日経新聞「真相深層」「「官製」最低賃金 首相の念願。異例のスピード決着、過去最大24円上げ」)。
・・・ある委員は「安倍晋三首相の発言が後押ししたのは間違いない」と振り返る。13日の経済財政諮問会議で首相は「今年度は3%の引き上げに向けて最大限努力するように」と時期と上げ幅を具体的に挙げて、関係閣僚に指示していたからだ・・・労使で決める賃金に政府は原則として介入できない。しかし、法律で義務づける最低賃金であれば政府にも介入の余地がある。内閣府中堅幹部は「労使が協議する厚生労働省の審議会で政府が3%引き上げたいとは言えない。代わりに諮問会議で首相が発言する場を作った」と明かす・・・
・・・首相の「鶴の一声」による今回の最低賃金の決め方は学者、経団連、連合の代表ら公労使による中央最低賃金審議会の不要論につながる可能性をはらむ・・・
この項続く。