11月14日の日経新聞夕刊に「ごみ屋敷、精神的支援に軸足」が載っていました。
・・・悪臭や害虫の発生などで周囲に大きな影響を与えるごみ屋敷。居住者の自己責任と思われてきたが、疾患や認知症などの問題が影響するケースも多いことが分かってきた。自治体は当事者に寄り添った精神的な支援に軸足を移している・・・
・・・環境省の調査によると、全国1741自治体の38%が「22年度までの直近5年度で『ごみ屋敷』事案を認知している」と回答した。
ごみ屋敷が形成される要因の一つに、生活への意欲を失い無頓着になる「セルフネグレクト」がある。ほかにも身体的、精神的な障害や特性があってごみが出せない例もある。認知症などにより判断能力が低下し、周りの環境を正しく認識できずに物をため込む場合もあり、事情は様々だ。
ごみ屋敷はその居住者だけの問題と捉えられやすいが、実情は異なる。東京都立中部総合精神保健福祉センターの菅原誠副所長は「高齢単身世帯の増加などによる孤立や孤独などの問題も絡んでおり、ごみ屋敷は社会の縮図ともいえる」と話す。
8月公表の総務省の報告書によると、181事例のごみ屋敷のうち約3割は居住者に精神疾患やその疑いがあるという。菅原さんは「住環境の改善に加えて支援に精神医学的な知見を入れる必要がある」と説く。
当事者への精神的な支援を重視し、手厚く対応する自治体も出てきた。東京都足立区は23年、ごみ屋敷対策のために精神科医を配置した。職員は月1回、悩みや課題を相談できて実際の対応に生かせる。
これまでの事例を分析したところ、問題が長期化している居住者の約6割に精神上の課題があることが分かった。ごみ屋敷対策係の小野田嗣也係長は「医療的な助言があると自信になり、現場としてとても助かる」と安堵感をにじませる。
20年から3年間対応した70代男性の事例では、医師の指摘で解決に近づいた。当初は男性が区への不満を一方的に話すだけだった。職員が医師に相談すると「①自尊心を大切に向き合う②ごみ屋敷解決のための『支援』ならできると伝える」と本人の特性を踏まえた助言を得た。男性は支援という言葉に興味を示し、片付けを申し出たという・・・