連載「公共を創る」第205回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第205回「政府の役割の再定義ー「官邸主導」の問題点」が、発行されました。

第2次安倍晋三内閣は、首相の政治主導が際立ちました。それは「官邸主導」と呼ばれましたが、これまで目指された政治主導とは違っていました。
首相が記者会見や施政方針演説で「唐突に」大きな政策を打ち出すことで、国民への訴求力は高まったと思われます。しかし事前に関係者による討議を経ていないので、その問題点や実現過程について十分な検討がなされていない恐れもあります。そしてその唐突さは、予測が立たないことで、官僚たちを右往左往させたようです。
また、官邸の判断と違う政策を大臣以下の判断では実施できなくなってしまうことから、各省の官僚たちが政策を考えなくなり、「指示待ち」になってしまったともいわれます。

例えば、新型コロナ感染初期の一斉休校も混乱を引き起こしました。
2020年2月に、安倍首相が感染拡大防止のために学校の休校を打ち出しました。この判断は正しかったと思われますが、その唐突さが問題を生じさせました。首相がその方針を表明したのは木曜日の夕方で、休校は翌月曜日からでした。
保育園や学校、学童保育が休みになると、働いているお父さんとお母さんのどちらかが、仕事を休んで面倒を見ることになります。それぞれ、月曜日の仕事の予定が入っていたでしょう。せめて週の前半から、休校の可能性とその理由、実施の際の問題点などを公表しておいてもらえれば、対応策を講じることもできたでしょう。