夫の海外赴任同行休職

10月2日の朝日新聞「記者から「駐夫」、見えた日本社会 「海外赴任同行休職制度」、元共同通信・小西一禎さんが経験を本に」から。

東京・永田町で、政治の最前線を追いかけていた政治記者が、妻の米国赴任に同行するため仕事を休み、2児を育てる主夫に――。元共同通信記者の小西一禎(かずよし)さん(52)は今年、そんな経験をベースに「妻に稼がれる夫のジレンマ」(ちくま新書)を出しました。「駐夫(ちゅうおっと)」になって見えた、日本男性や日本社会、企業の姿とは?

――永田町の政治記者から米国で主夫。なかなかの転身です。
妻の赴任先に同行し、2017年12月から3年3カ月、米国で暮らしました。当初から、妻は1人でも当時5歳と3歳の子どもを帯同する考えでした。自分はどうするのか。決断を迫られました。
「マッチョ・オブ・マッチョ」な永田町に身を置いて生きていました。ジェンダー平等意識も低く、「ジェンダー? 女性がやっていることね」というレベル。
悩んだのは自分のことです。「俺のキャリアどうなるんだ」と。自分勝手この上ないですよね。一方で、妻が1人で子ども2人を育てながら異国で働くことは非現実的に思えました。最終的に背中を押したのは社内の「配偶者海外赴任同行休職制度」です。キャリアは中断するけど、職場に戻ることはできる。そう考え、男性として初めて取得しました。

――周囲の反応は?
肯定的な意見を言ってくれたのは女性記者や大学の友達、後輩の男性ですね。一方、私が「粘土層」と呼ぶ、長時間労働を当たり前とする昭和な価値観を引きずる男性群からは「あいつ、終わったな」といった声を間接的に聞きました。

――米国で不安がなかったとは思えません。
妻に依存する生き方に不安がありました。根源は、私の中の「男は仕事」という価値観。キャリアを中断し、収入が断たれることは「男から降りた」という認識でした。
ふさぎ込みましたよ。渡米翌年の3月、首都ワシントンで働く他社の記者の姿を見て、10日ほど起き上がれなくなりました。一方で、長時間労働と引き換えに、家事育児を免除されることを当然視していた自分に気づきました。
気持ちの波は次第になだらかになりましたが、焦りや不満を妻にぶちまけたことはあります。帰国後の自分のキャリアも気になり、難しかったですね。

――18年、SNS上で「世界に広がる駐夫・主夫友の会」を立ち上げました。会員は180人近くになったそうですね。
現地で日本人の「パパ友」と飲み会をしても、途中からは仕事の話になる。当然、入れないんです。同じ思いをしている男性がいると思い、会を作りました。今、各地で駐夫たちがリアルで交流しています。まさに私が求めていたものです。

岸田首相と経済財政諮問会議民間議員の座談会

9月20日に、日経新聞主催で、岸田首相と経済財政諮問会議民間議員との座談会が開かれました。23日付けの日経新聞に、要旨が載っています。マクロ経済、財政、成長力強化と人口、金融政策、エネルギー、労働市場改革にわけて、議論が交わされています。なかなか、内容のある座談会です。菅野・論説委員の司会で、突っ込みも鋭いです。例えば、ガソリンや電気などへの補助金が続くこと、消費税増税についてです。

この記事を読んだときに、良い企画だと思いつつ、次のようなことを考えました。経済財政諮問会議の議員との意見交換なのですが、経済財政諮問会議では、このような議論がなされていないのです。
まず、所要時間です。首相動静を見ると、8時34分に会場のホテルに到着し、9時48分にホテルを出発しておられます。1時間強です。他方で、最近の経済財政諮問会議は、30分から1時間未満です。6月21日の経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議の合同会議は、首相を合わせて出席者は21人、所要時間は37分でした。

そして、諮問会議ではこのような「自由な」議論、突っ込んだ意見交換がされていません。内閣府は、省庁改革の際に首相を支える「知恵の場」としてつくられ、諮問会議はその最たるものです。
役所の会議の傾向として、次第に儀式になってしまいます。決められた時間の中で、あらかじめ予定された結論を出す(その総理発言を報道機関に公開する)ために、事務局の官僚は全精力を注ぎます。さらに、権限が強い会議では、自由な議論をすると市場や行政に思わぬ影響を与えてしまう可能性があります。

このような場をどのように活用するか、議長である首相の考え方によります。首相にとって、民間議員との自由な意見交換は意義あるものだと思います。諮問会議ではふさわしくないとすると、首相と民間議員との意見交換を「懇談会」として設営することも可能でしょう。

市債権の徴収一元化

時事通信社の行政情報サイト「iJAMP」10月10日に、橋本一磨・愛知県豊田市東京事務所長の「市債権の徴収一元化を実現」が載っていました。

・・・2013年当時、税を専門的に扱う納税課主査として、ある高齢男性の窓口対応に当たったときの出来事がきっかけだった。男性は、税や後期高齢者医療保険料、市営住宅使用料といった納付書を持って窓口に訪れ、「全部は払えないから相談したい」と話した。しかし、税の部署なので税以外のものは相談を受けることができないと伝えると、怒って帰ってしまった。
男性にとって市役所は一つなのに、税以外の相談は受けられない。役所自ら市民の信頼を失う組織体制をつくり出していることに気付いた。異なる部署でばらばらに行われている債権回収業務を、一つの窓口で行えるよう組織体制の見直しが必要だと感じたが、主査という一担当職員の力ではどうにもならないことも分かっていた。

そこで、14年に各部対抗のプレゼン大会の場を使って太田稔彦市長に直接提案したところ、市長から具体的に検討するよう指示を受けた。15年度に一元化に向けたプロジェクトチームを発足。翌年度から組織体制の見直しやシステム整備を進め、19年度までに26部署がそれぞれで取り扱っていた60種類もの未収債権を一つの窓口に集約した。併せて、17年度に納税課から債権管理課へ名称変更。19年度には、弁護士チームと連携し、官民連携による債権回収を始めた。

債権回収は、多くの課で本来業務ではないとの意識が高く、後回しにされがちだった。税と税以外を重複して滞納する「滞納のプロ」のような人もいて、対応する職員側も専門性の高さが求められる。このため、税務職員の滞納整理に関する知識と経験を、市の全体的な歳入確保のために最大限活用して効率的・効果的な債権回収に取り組んだ。併せて、システム整備に着手。関連情報を紙やエクセルで管理している課が多く、これらを整理して情報を一元的に管理するシステムを構築し、効率的な業務につなげている。
一元化した初年度から成果が数字として表れ、介護保険料や後期高齢者医療保険料の収納率は中核市の中で1位に。一元化後の6年間で、約28億円の未収債権を回収した。

一方で、滞納者の中に一定数、「無い袖は振れない」生活困窮者がおり、支援の必要性を感じていた。債権回収業務は、「取る」「押さえる」「落とす」のいずれかを判断して進めると学んできたが、「立て直す」の視点を追加。これは、債権回収の現場で発見した生活困窮者を福祉部門へつなぎ、自立に向けた支援を行うことだ。弁護士、社会福祉協議会などと合同で納付相談会を開き、弁護士相談で発見した生活困窮者をシームレスに社会福祉協議会へつないでいる。
地方自治体の基本は「住民の福祉の増進を図ること」で、歳入確保による財政健全化の視点と福祉的な側面への配慮の間に、常にジレンマを抱えている。故に、単に債権回収すればいいというものでなく、福祉的側面への配慮など債務者の個別事情を踏まえた対応が必要となる・・・

学があることと頭がよいこととは別2

学があることと頭がよいこととは別」の続きです。
もう一つ、頭がよいことについて、世間で教えてもらったことがあります。
「気が利く」です。これも、相手がある話です。相手の行動の先を読んで、その準備をすることです。

その例の一つが、木下藤吉郎が織田信長の草履取りをしたとき、懐に入れて温めていたという話です。また、かつて多くの人がタバコを吸っていた時代、相手がタバコを取り出すと、マッチかライター、そして灰皿を出すとか。
そのような「ゴマすり」ではなく、対話や議論の際に、相手の言いたいことを先読みすることは重要です。受け答えを準備でき、想像していない質問にあたふたすることなくすみます。

状況は異なりますが、相手のあるスポーツやゲーム(将棋、碁など)は相手の行動を読む・先を読む競技です。もっとも、相手にあわせるのではなく、その裏をかくのですが。

コンテンツ産業輸出額4.7兆円

10月7日の読売新聞に「アニメはいま<上>ネット配信 海外市場が急成長」が載っていました。

・・・映画、アニメ、漫画など日本のコンテンツ産業の輸出規模は、鉄鋼産業や半導体産業に匹敵する――政府の会議で近頃、そんな言葉が飛び交う。貴重な成長分野として、コンテンツ産業に注がれる視線は熱い。中でもアニメは、海外での売り上げ急増で、市場規模が10年で倍以上に膨らんだ・・・

「日本の産業別輸出額」が図になって載っています。半導体産業が5.7兆円、鉄鋼産業が5.1兆円、コンテンツ産業が4.7兆円、石油化学産業が1.7兆円。へえ。コンテンツ産業のうち、アニメ産業の輸出額は約1.5兆円です。
コンテンツ産業にどのようなものが含まれるかわからないのですが。
自動車産業や、農水産物、日本酒がどの程度、輸出されているのか。別途調べましょう。