アジアでの人材争奪戦

9月12日の日経新聞「サムスン、「ベトナムのMIT」から年400人 厚待遇で」から。

・・・東南アジア諸国連合(ASEAN)で人材争奪戦が激しさを増す。高い成長率に加え、米中対立を背景に供給網の再構築先として東南アジアにグローバル企業が注目。事業拡大を目指して厚待遇で攻勢をかけている。リクルーティングやリテンション(つなぎ留め)の最前線を追った。

ベトナムの首都ハノイ市北西部に、大規模なマンション開発が進むエリアがある。韓国資本が流れ込み、建設現場を囲うフェンスには同国企業の名前が目立つ。
サムスン電子は2022年、この一角に研究開発(R&D)センターを開いた。世界12カ国の拠点と連携し、人工知能(AI)やロボティクスの研究者ら約2500人が働く。目立つのは、デニムやTシャツ姿の若者たち。全国から集った俊英たちの会話には、ベトナム各地の方言が飛び交っていた。
「服装は自由で、いつ働いて、いつ休んでもいい。だから入社したんだ」。トゥンさん(仮名)は同国最高峰のハノイ国家大学で情報工学を学び、R&Dセンターに入った。月収1400万ドン(約8万円)は高給ではないが、手厚いもてなしで研究に集中させてくれる職場が気に入っている。
「グローバル企業だけに、世界の先端技術に触れる機会が多い。専門分野の実務経験を積めて、キャリアパスも明確だ」。理系大学の最難関で「ベトナムのMIT(マサチューセッツ工科大学)」と言えるハノイ工科大学機械工学部のブー・トアン・タン教授はサムスンをこう評価する。
サムスンは同大から年300〜400人の卒業生を採用するという。青田買いにも熱心だ。ある大学では修士課程を対象に半導体の専門知識や韓国語を教え、卒業後はサムスンの即戦力に組み込む優遇策も始めた・・・

・・・東南アジアでは管理職に就くと給料が跳ね上がる傾向がある。人事コンサルティング大手のマーサージャパン(東京・港)によれば、部長職の年収(23年10月時点)は日本の場合が約1920万円。各国で定義は異なるが、ベトナム(約2450万円)などに比べても見劣りする。
「海外では管理職を任せられる優秀な人材の流動性が大きい」と同社の伊藤実和子プリンシパルは語る。優れた社員が集まらなければ日系企業の競争力や現地での存在感が低下しかねない・・・

各国の部長職の年収が、図で示されています。アメリカが30万ドル超、シンガポールが29万ドル程度、中国が22万ドル程度、タイ・ベトナムが17万ドル程度。日本は14万ドル程度です。