ロドニー・スターク著『キリスト教とローマ帝国』(2014年、新教出版社)を読みました。新聞の書評欄で見かけたので。その通りに、勉強になる内容でした。
古代ローマ帝国のはずれで起こったよくわからない小さな宗教運動が、どのようにしてそれまで支配的だった多神教を駆逐し、西洋の支配的信仰になったのか。この本は、「キリストの偉大さ」ではなく、数学的、社会科学的に分析します。
キリストが磔にあった数ヶ月後、キリスト教徒の数は120人ほどでした。著者は紀元40年に1,000人と見積もり、そこから推計します。そして、1年で3.42%、10年間で40%という増加率を導きます。すると、紀元100年には7,530人、200年には217,795人、300年には6,299,832人になります。
キリスト教は、初期にはユダヤ人に広まります。既存のユダヤ教に反発する人、エルサレムを追放されたり流れたりして異邦で暮らす人に受け入れられます。
集団改宗が起きたこと、奴隷たちから広がったことも否定されます。改宗は、宗教者による説得より、家族や知り合いからの勧誘の方が効果が高いのです。
子どもの間引きが横行した時代に、キリスト教はそれを禁止します。そして、病気が流行した際も、助け合うことを勧めます。これもまた、キリスト教人口の増加を進めます。
ローマ帝国支配者層とキリスト教徒が対立し、残虐な死刑が行われたという通説も、否定されます。確かにキリスト教指導者は死刑にあったのですが、多くの信徒はそんな目に遭っていません。
これ以外にも、興味深い事実が明らかにされます。お勧めです。