人の弱みつけこむテック企業

8月11日の日経新聞、トロント大のジョセフ・ヒース教授の「情報中毒から理性守れ」「人の弱みつけこむテック企業 哲学者が憂える副作用」から。

・・・ソーシャルメディア、アルゴリズム、そして人工知能(AI)。情報技術は恩恵と同時に様々な問題を社会にもたらしている。テクノロジーと適切に向き合うにはどうすればいいのか・・・

「問題は、企業が人間の弱みにつけこむことがあるという点だ。私たちの脳は大量の情報を瞬時に処理できる。だからスマートフォンの画面からとめどなく流れてくる刺激にくぎづけにされてしまう。ここに商機を見いだしたのがビッグテックの企業群だ。
これらの企業のサービスにうつつを抜かしている間に、貴重な資源である集中力が奪われてしまった。刺激に身を委ねるばかりで熟考の習慣を失った人々は非合理的な判断に傾きやすい。思考停止、他者への攻撃的な態度、そして摩擦と分断。情報技術がもたらしたそうした状況を見るにつけ、今の社会は正気を失っていると思う」

「動画共有サイトやネットショッピングのサイトは消費者の検索・閲覧履歴を学習し『おすすめ』を繰り出してくる。次々に表示されるコンテンツには中毒性があり、気がつくと見入ってしまう。これを1日に何時間も眺めていたら、人生の長い時間をオンラインで過ごすことになる」
「人間の認知の特性を研究したテック企業は様々な手法を用い、時間や注意力という私たちの貴重な資源を収奪する。だからネットを見続けるのがよくないことは誰だってわかっているが、弱点につけこまれあらがえない。まずこの現実に目を向ける必要がある」