「仕組みの解説と機能の評価3」の続きにもなります。
連載「公共を創る」の主題は、日本社会が成熟し、行政の課題が大きく変化していること、それに日本の官僚制が追いついていないことです。ところが、実態は私の想定をはるかに超えて、変化しています。議論の前提としていた実態が変わり、政策や制度を変える議論では対応しきれない事態が出てきています。
例えば、地方自治制度です。地方自治法がその基本を定めています。社会の変化に沿って、制度改正を重ねてきました。大きなところでは、分権改革です。ところが、住民が減少して、自治体の存続が危ぶまれる地域が出てきました。高齢者が多く少人数では、行政サービスも提供できません。自治体がなくなれば、自治制度論どころではありません。
もう一つは、公務員制度です。これまでも、そして今でも、公務員制度改革や育成手法が主張されます。ところが、労働市場と職場の実態が大きく変わりつつあります。一つは職員が集まらないことで、もう一つは早期に退職する職員が増えたことです。国の役所や自治体は、あの手この手で職員を集めていますが、埋まらない職種もあるようです。まずは職員を集めなければ、仕事は進まず、育成どころではありません。
長期間続けてきた行政改革で、国も地方も職員を減らしてきました。その影響で、現場が疲弊しています。そのうえに、定数通りの職員数が集まらないと、さらに現場は人が足りなくなります。
制度改革議論の前提が変わり、これまでの制度論の延長では対応できません。コペルニクス的転回とも言えます。もっとも、少子高齢化はずっと以前から予想されていたので、現実的にならないと気がつかないとも言えます。