7月17日の朝日新聞夕刊、教育評論家・尾木直樹さんの「なかなか宿題に手をつけられません」の続きです。
――年齢を重ねると、宿題を出す立場になることもあります。
宿題がうまく進んでいない人に「大丈夫?」と尋ねるのは禁句ですね。条件反射で「大丈夫」と返ってきて、本質的な解決にはならない。はかどらない背景には必ず何かある。事情や言い分を聞いてあげることが大事です。
母は、ぼくが困っているときなどには、「どうしたの?」と聞いてくれました。ぼくも教員になってから、校内でたばこを吸っている生徒にも、「コラ!」ではなく「どうしたの?」と尋ねるようになり、「どうしたの先生」と呼ばれるようになりました。
でも、相手の顔が見えない電話やメールで「どうしたの?」と投げかけると、それはそれで威圧的に受けとられたりして難しいところですが。
――余裕をもって周囲と接したいのですが、なかなかそうできないことも多いです。
先日、東京都が採用3年目までの教員を対象に実施したアンケートの結果が報じられていました。先輩や上司の言動に「つらい思いをした経験がある」人は50・1%で、具体的には、管理職が高圧的な態度だったとか、「いつでも相談して」と言っていたのに「今忙しい」とはねつけられた、とか。
若い教員の離職率が過去10年で最も高くなり、行われたアンケートですが、その背景として、先輩たちも追い詰められている実態がわかります。本来は「大変だったね」と言ってもらうだけでも、7割ぐらい心が軽くなったりするものですが、「いつでも相談して」を実践するには、話を聞く側の余裕も必要。長時間労働の問題など、教師の働き方改革は喫緊の課題ですね。